十七デバフ
夜、アガストでは密やかに事態が動き出していた。
そして、全ての報告が届く時、事態が大きく動く。
◆夕凪翔side◇
「何処だ! 何処に居るジェリス! 状況を説明せよ!」
アガスト王はイケメンを探している様だ、側近的な奴が王様の側に居ないとか大丈夫かこの国。
「アガストさん、何してるんですか?」
俺は何があったかイケオジに聞いてみた。
「あぁ、翔か。…….それが、定時報告の時間になってもジェリスの姿が見えなくてな。だから探していたのだ」
探すにしても王様自ら探すの? 部下に任せれば良いだろうに……無駄に行動力が有る王様だな。
「そうなんですか、ジェリスさんはこう言う事を良くするんですか?」
「いや、今迄無かったからこそ余も心配になって自ら探しておる」
フーン……。まぁ、いきなり居なくなったら心配もするわな。
ドタドタドタッ!
ん? 何か外が騒がしいな。
バァン! と扉が開かれると一人の兵士が駆け込んできた。
「何だ貴様! 余の居る場所で無礼ぞ!」
「申し訳御座いません! 火急の報告で急ぎ参りました!」
俺達は此処に居て話しを聞いて良いのだろうか? まぁ何も言われないし大丈夫か。
「申してみよ」
「ハッ! 魔王軍に動きが有りました。かなりの数の敵が最前線のハルケ平原を突破しようとしております!」
「かなりの数とはどれ位いるのだ?」
「そ、それが敵の数は五万は下らないかと……」
「な、何だと……。何故いきなりそんな数を投入してきたんだ」
五万ってヤバくないか? しかも最低でもその数字って事だろ……?
俺が数にビビってると、更に兵士が駆け込んで来た。
「ご、ご報告が御座います!」
「……今度は何だ」
俺がオッさんに視線を向けると、オッさんは眉間を掌で抑えながら報告を待っていた。
「城下町に火が放たれました」
「何なんだ次から次へと……。しかもジェリスが居ない時に限って……」
あのさ、何でブージンに着いたその日の夜にこんな事が起こっとるのよ。
そして、何で城下町は燃えてるのさ? 燃えより女の子との萌えを俺にクレ。
まぁ、こんな話しを聞いちゃった以上は勇者としては動かない訳にはイカンよな……。駄目ですよね? ハイッ……。
「ハァ〜……ファリス。魔法で城下町に雨を降らせる事は可能か?」
しょうが無いから俺も動く事にした。俺は勇者だしな!
「天候を操る魔法は私には出来ないですけど、空中でウォーターボールを大爆発させて良いなら似たような事を出来ますよ!」
逆にそっちのが凄くないか? マジでお前何もんだよ。さっきはスルーしたけど神子ってそもそも何なんだよ!
これは後でリリーナに聞かねば……。
「そ、そんな事が可能なのか?」
ホラッ、お前の非常識っぷりに王様もビビってますやん。
「出来ますよ!」
「な、ならばファリス殿は城下町に行って消化活動をお願いしたい!」
王様なのに低姿勢になっちゃったよ。
「分かりました! それでは皆さん行ってきますね」
ファリスはそう言うと兵士と一緒に走って行った。
「それじゃ、俺達は最前線に行くか。アガストさん、最前線の近くで敵全体を一望出来る場所は有りますか?」
纏めてデバフ掛ける為には必要な事だからな。
「うむ、戦場を一望出来る丘が近くに有る筈だ。兵に案内させよう」
何で俺には低姿勢にならんの? ファリスみたいに手の平ドリルしてくれても良いんだぜ。
「良し、それじゃロリとリリーナ! 俺達も行くぞ」
「「了解!!」」
俺達は兵士に案内されて戦場に向かった。
◆ファリスside◇
私は皆さんと別れ城下町に来ていた。
町では怒号や泣き声、助けを求める声が聞こえてくる。
人々は炎に飲まれない様に、火のない所へ避難しようとしている。
今日、首都ブージンに到着した時とは違った騒ぎに私は胸を痛める……。
「酷い……」
私は町の惨状に、無意識にそう呟いてしまっていた。
「ファリス様! 早速お願いしても良いですか!?」
兵士さんが私にお願いしてくる。
私はコクリと頷くと上空に手を翳し、連続魔法を起動してから呪文を唱える。
「──透明な世界は始まりにして終わりの世界、その世界に生きる生命は大気に生かされているだろう。ならば我が涙を生命に与えよう……ウォーターボール!!」
◆アガスト王国兵士side◇
城下町が燃えている。
俺はアガスト王に見たままを報告をすると、若い女の子を連れて城下町に案内しろと命令された。
こんな女の子を連れて行った所で何が出来ると言うんだ……。王の間で話してた事が、この女の子には本当に出来ると言うのか?
そんな事を考えつつも、俺はファリスと言われた女の子を現場に連れてきた。
「酷い……」
嗚呼、女の子の言う通りこの光景はとても酷い。
もしも……もしも、この女の子に現状をどうにか出来る力が本当に有るならば早く町の人を助けて欲しい。
俺の家族も何処かで助けを求めて居るかもしれないんだ……。
だから、
「ファリス様! 早速お願いしても良いですか!?」
女の子は頷くと、手を上空に翳して魔法の詠唱を始めた。
「──透明な世界は始まりにして終わりの世界、その世界に生きる生命は大気に生かされているだろう。ならば我が涙を生命に与えよう」
そして、詠唱が完了し魔法を唱える。
「ウォーターボール!!」
俺はその言葉と同時に空を見上げると、其処には数えるのが馬鹿らしくなる程の巨大な水球が空を浮遊している。
何だ、この魔法は……? これがウォーターボール? こんな下級魔法は今迄見た事ない。しかも一つの詠唱でコレだけの数の巨大水球を作り出すなんて、一体どうやって……。
俺が驚愕してると女の子がまたも詠唱を始めた。次は何をすると言うんだ?
詠唱が再び完了すると、そのまま魔法を唱えた。
「──透明な世界は始まりにして終わりの世界、その世界に生きる生命は大気に生かされているだろう。ならば我が敵には罰を与えよう……ウォーターボム!!」
その魔法と共に水球は爆発する。
ドォォォォォン! と音がした一瞬の後、空から水滴が落ちて来た。
その水滴は直ぐに雨となって城下町全体を包み込む様に降り注いでいく。
「"救済の魔法使い"……」
サーと雨が降り注ぐ中、町にいる誰かがそう呟いた。
そして、その言葉は聞いた全ての者に不思議と心に落ちた二つ名だった。
◆夕凪翔side◇
うん、此処なら一望出来るね……出来ちゃったね……。
俺の眼前には表現出来ない程の魔物の数が居る。
「なぁ、帰っていいか?」
これ、どうにかなる数ちゃうやろ!
「ハァ〜、あれだけカッコいい感じで言ってたのに怖気付いたの?」
ロリがそんな事言ってるが、逆に聞きたいんだが、お前はコレを見て怖気付かないのは何なの?
「翔さん。此処迄来たら流石に引き返す訳には行きませんよ」
……言ってみただけだ。流石に俺も引き返せないのは分かってるよ。
「そうだな、まぁコレだけ周りに兵士が居る状況で逃げようとは思わんよ」
兵士さん達は勇者である俺達に、期待の表情で見つめてるんだ。その期待に応えるしか無いだろ……。
「それじゃ、何時も通りデバフを掛けたら一気に行くぞ。ロリも獣魔を現地調達してきて良いからな」
「勿論そのつもりよ」
今後の為に、ロリには獣魔を一杯捕まえて欲しい。
「リリーナも頼むぞ!」
「お任せ下さい」
リリーナも戦意が高そうだな。
「それじゃ始める」
俺は戦場を視界に捉え、頭を空っぽにして全ての敵を"認識"していく。
そして、
センスコラプス!×100
俺達の敵は極限に迄その動きを崩壊させた。
「行け、ロリ! リリーナ!」
「「了解!!」」




