神話創生 アトラス歴1981年【19年前】3-4
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俺は後悔している。
「ヒック……飲め呑め! 私の奢りじゃぁ〜〜〜」
何故ならば、俺の眼の前には酒に呑まれてるシスターがいるからだ。
どうしてこうなったかと言えば、門を抜けた後、俺はシェーナに手を引かれそのまま酒場に連れて行かれた。
そしてその後、御礼と称した飲み会が開かれたのはいいのだが……。
「えっと……シェーナ? 飲み過ぎなんじゃないか?」
嘘である。実際はこの女、お酒は一口しか飲んでいない。これを飲み過ぎって言ったら本当に飲み過ぎた酔っ払いに失礼かもしれない。──ってかシスターは禁欲や禁酒とかするもんじゃないの? この修道女メチャクチャ欲に呑まれてるのでは!?
「こんなのまだまだよっ!」
性格すら変わってますやん!
「ギャハハ! にいちゃん、シェーナちゃんに気に入られてるね!」
近くに座って居たオッちゃんが云うには、シェーナは俺の事を相当気に入ってるとの事だ。
「シェーナちゃんって普段は酒場に来たりしないんだが……何か良い事が有ればこうやって酒場に来るんだ。まぁ、直ぐにあの状態になっちまうけどな」
「良い事?」
「彼女は基本的に一人飲みが当たり前。そんなシェーナちゃんが人を連れてきた。しかも男! そんなアンタはシェーナちゃんに気に入られてるってのは普段から此処でシェーナちゃんを見てる奴なら皆分かるさ」
「そ、そうか」
「まぁ、酒に弱い挙句酒癖も悪いのは愛嬌だ! ガハハッ」
どうやら飲んじゃいけない奴が飲んでるって事だけは分かった。
「ちょっと! 皆して好き勝手言ってくれちゃって……! ほら、ナギさんももっと飲みなさい!」
「まぁ、そうだな……頂くとするよ」
俺の為に開いてくれた飲み会だ。変に遠慮するのも失礼だって物だ。そうして一気にジョッキを呷ると『ダンッ!』と空のジョッキをテーブルに置いた。
「おぉ! ナギさんも良い飲みっぷり! それじゃお代わり行こうか!」
あんたの飲みっぷりは残念だがな……ってか誰だコイツ? 完全に別人じゃないですか。
とは言えシェーナの楽しそうに飲む姿に俺は微笑ましさを感じた。──だがそれはそれとして次は彼女と飲まんと心に誓う。
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かなりの時間が経ち、酒場の営業時間が終わると俺とシェーナは店から追い出された。
「うばぁぁぁぁぁ! 飲み足りないよぉ〜〜」
そんなにヘベレケなのに足りないと申しますか? ……いゃ、飲んだ量だけ見れば確かに足りてはないのか。
そんなどうでもいい事を考えつつ、この後の事も考えないといけなかった。
「俺が泊まれそうな宿って無いか? シェーナを送った後はそこで泊まりたいんじゃが……」
お金はシェーナから借りるとして、ダメなら野宿だな。
「そんなの私の部屋に泊まればいいでしょ!」
よくはないだろ……。
あ、それともシェーナの家ってそこそこ大きいのか? だったら良いのか。
「そうか、それじゃお言葉に甘えるよ」
「うぃ〜〜」
そんな返事とも取れない言葉が返ってくると、シェーナは先程同様俺の手を引っ張っていった。
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「さぁ、ゆっくりしてねぇ〜〜」
「……おおぅ」
部屋に案内されて真っ先に思った事、それは……予想に反して狭かった事。
これ、ベットも一つしかないし部屋も狭い。これは非常にまずいのでは? 男と女的な意味で!
まぁ、俺は自制が効く紳士だから大丈夫だが……酒が抜けて正気に戻ったシェーナが変に勘違いしないだろうか?
「なぁ、やっぱり宿に泊まろうと思うんだが……お金借りれないか?」
「何言ってるんですか! 寝れる場所が有るのに宿代を出すとか勿体無い!」
アカン。言ってる事がマトモなだけにぐぅの音も出ない。
「あぁ〜何て言うか、シェーナが良いなら良いんだが……本当に良いのか?」
「ダメなら最初から連れてきません!」
「左様ですか……まぁ、それじゃ部屋の隅を借りるわ」
「何言ってるんですか! お客さんを床に寝かせる訳にはいきません!」
だからと言ってシェーナに床を使わせるのも気が引けるんだが……。
「一緒に寝ましょう!」
????
ちょっと何を言ってるんだこの女は……。
「それじゃおやすみ」
シェーナの言葉を無視して俺は床に寝転がった。
「 」
何かゴチャゴチャ言ってるが、どうせ下らない事だろうから、そのまま寝る事にした。
おやすみ……。
◆シェーナside◇
「えぇ〜〜もっとお話ししましょうよぉ!」
ナギさんが床にタオルを敷くと、その上で横になって寝てしまう。
私の作戦は失敗に終わった!
オペレーション『この世の春』はナギさんが床で就寝した事によって大敗を喫する。
簡単に言えば良い男を捕まえるって言う単純な作戦だ。しかし、この作戦を遂行するにはシラフだと流石に恥ずかしい為、お酒の力に頼ってしまった……。いつもなら直ぐに記憶も飛んでしまうのだが、今日は最後迄意識はあった。
まぁ、緊張状態で酔い切れなかったのだと思う。
「いけず──でも……」
ナギさんは魔族領から来た。
だからこっちでの身分は無い。
なればこそナギさんを私の家族としてクルハ村に連れて行きたい。
役割としては弟か兄、願望を言えば旦那が良い。
せっかく魔族領から逃げてきたのに、此処に残ってしまったら彼は戦争に巻き込まれてしまう。
山での戦いを見るに、彼は相当な実力者なのだろう。それでもコチラに逃げてきたのだ……きっとそれには深い訳がある筈。
そして、私からはその理由は聞かない。
彼が自分から話してくれるのを待つつもりだ。
「ハァ〜大人しく私も寝よ」
明日からも忙しくなりそうだ。
◆ユウナギ・カケルside◇
翌日、俺は眼を覚ますと勝手ながらキッチンを借りて朝食の準備をした。
「前の時にも思ったが、何でコーヒー豆があるんだ?」
「二百年程前に召喚された勇者様が持ち込んだらしいですよ?」
「うぉぉっ!? 起きてたのか……」
俺の背後を取るとはやるなシェーナ。
「はい、良い匂いがしましたので!」
「まぁ、悪いと思ったがある物で作らせて貰った。食べてくれ」
「朝ごはんを作ってくれる人が居る喜び! 感謝して頂きますね」
「大袈裟だな」
俺は鼻で笑ってやった。
「いや、本当に助かるんですよ!」
シェーナって初対面の印象と少しだけ違うな。まぁ、やっぱりファリス味はあるが、こっちがシェーナの巣の姿なのだろう。
「まぁ、喜んで貰えて何よりだゆっくりと食べてく──」
「ご馳走様でした!」
「はやっ! もっと良く噛んで食えよ」
「ちゃんと噛んで食べましたよ?」
「みんなそう言うよな」
早食いの奴にこのセリフを言うと、ほぼこの返事が返ってくるのは何故なんだ?
「シェーナは今日はどうするんだ?」
「えっと、実は私は近い内にこの街を離れないといけなくなりまして……それの挨拶周りと必要な物を買出しに行こうと思ってます」
「手伝いは必要か? 必要なら着いていくぞ」
「えっと、それではお願いしたいです」
「任せてくれ」
よし、シェーナと一緒ならこの街でも不審者扱いをされないだろ。
願わくば面白いイベントが起こればいいのだが……。
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