神話創生 アトラス歴1981年【19年前】3-3
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百年草の花とやらも採取は済み、気が付けば日も大分傾いていたので俺とシェーナは山を降りる事にした。
「ありがとうございます! ナギさんのお陰で無事に採取も終わりました」
「別に気にしないでいい。ところでシェーナはこの後どうするんだ?」
「はい、この後商人の方が馬車で私を拾ってくださる予定です」
「そうか」
「あ、あの! 良かったら御礼をしたいのですが……街迄一緒に来てくれませんか?」
「ん〜気持ちは嬉しいんだが、俺って身分証みたいなのは無いぜ?」
「大丈夫です! 私の関係者なら多分入れます」
良いのか? そんなに緩くて……。だけどまぁ、街に入れると云うならシェーナの提案に乗るべきだな、情報も集めたいし。
「そうか、それならシェーナの言葉に甘えさせてもらうよ」
「はい!」
って言うか、このまま向こうの大陸迄いけるんじゃね?
そんな思考はこの後シェーナの言葉によって一蹴される。
「まぁ、今のご時世ですとゲルガ王国内でも教会関係者の口添えが無ければ簡単には入れませんけどね。他の国ですと身分証がないだけで捕まる可能性もあります……」
「そ、そうか」
やっぱ当初の予定通り、ロリ達がアガストに来てから行くべきだな……うん。
「ナギさんは何処の国出身なんですか?」
答え難い質問だな……。
しかし、黙ってるいるのも怪しまれるだろうな……。
「ファーラスト王国だ」
だからこそ俺は無難な回答をした。
「そうなんですか? 今ですと、アガスト王国内の港町カニムとファーラスト王国内に有るエビザ間の海に、魔王軍の魔物が現れ出して大変らしいですね。こっちに来るのかなり大変だったのでは?」
「あ……。うん、まぁ大……変だったわ」
俺は墓穴を掘ったらしい!
「……そうですか」
これは怪しまれたか?
でも、街に連れて行く事を撤回しないし大丈夫か? いや、街に連れて行ってから憲兵とかに突き出される可能性もあるかもな……。
さて、どうしよう。
「あ、おじ様の馬車が来ました!」
まぁ、突き出されたら突き出されたで全力で逃げればいいか。
「おや? シェーナちゃん、彼は誰だい?」
商人のオッちゃんが当然の疑問をシェーナにぶつけていた。
「はい! 山で魔物に襲われた際、この方、ナギさんが助けて下さいました」
「おぉ〜! ナギさんとやら、シェーナちゃんを助けてくれてありがとう!」
「当然の事をした迄です」
「……それでおじ様、ナギさんに御礼をしたいので街に連れて行きたいのですが、一緒に乗せてもらっても良いですか?」
「もちろんだよ! シェーナちゃんの命の恩人を無下に扱う訳が無いじゃないか!」
この感じからして街でのシェーナの評判はかなり良い様だな。
そんな人物ならば突き出される可能性は低いのかもしれん。
「それじゃ、シェーナちゃんもナギさんも乗って乗って! 此処に長居すると、街に着くのが遅くなっちゃう!」
「そうですね!」
「ありがとうございます。それではお邪魔します」
俺とシェーナはおっちゃんの馬車に乗せて貰うとユラユラと揺られて街へと向かった。
◆シェーナside◇
馬車に揺られ暫く経つと、辺りはすっかり暗くなっていた。
一通りの会話を済ませ話題も無くなると、馬車の中は車輪が大地を噛んで回る音だけカラカラと響いている。
「「…………」」
百年草の花を摘んでる時、私は彼の荷物から魔族が持つ様な仮面が覗いているのを見てしまった。
もしかしたらナギさんは魔族領から来た人かもしれない。
それだけじゃない。
私の勘違いじゃなければ彼は山頂方面から降りて来た気もする。普通に考えるなら魔物が跋扈する山頂から降りてくる……これだけでも怪しい。私が出身地を確認した時も、しどろもどろになって答えていた。
彼は……悪逆非道な魔王の統治から必死に逃げてきたのかもしれない。
そう考えれば、人族の身分を証明出来ない理由や魔族が付ける様な仮面を持っている事、山から降りて来た理由にも一定の納得がいく。
仮に彼が魔族だったとしても、私にはもうある感情が芽生えていた。
可能ならば彼に居場所を与えてあげたい。
可能ならば彼の居場所になってあげたい。
それに彼はきっと悪い人じゃない。
自分で言うのも何だが、私は人を見る目はあるつもりだ。
そんな彼にはこちらで幸せになって欲しい……。
そんな考え事をしつつ彼に視線を向けると、彼は優しく私に微笑みを返してくれる。
その微笑みに少しだけドキリとしつつも、照れ隠しをする様に私は話題を振る。
「ナギさんはファーラスト王国に戻らないんですか?」
「……いや、特にそんな事は考えてはいない。ただ……」
「ただ?」
私が次の言葉を待っていると、
「シェーナさん、ナギさん、そろそろ街に到着しますよ。細かい手続き等は私がしますが、門兵の方への説明はシェーナさんにお任せして良いですか?」
どうやら言葉の続きはまたの機会になりそうだった。
「勿論です! ありがとうおじ様」
「ありがとうございます」
話しを打ち切ると私とナギさんはおじ様にお礼をした。
◆ユウナギ・カケルside◇
シェーナが門兵と話している光景を後ろでボンヤリと俺は眺めていた。
「俺は何を言おうとしたんだ……」
あの時……。
『……いや、特にそんな事は考えてはいない。ただ──』
──仲間達の元に帰りたい……。
そんな事を彼女に言った所でどうにもならない事だ。
それに、もう暫く我慢すれば逢いの絆の面々に会える筈だ。
「ナギさん、お待たせしました。さぁ、入りましょう」
どうやら門兵への説明は終わり、無事に俺は街に入れる様だ。
「了解した」
そうして俺とシェーナ、商人のオッちゃんは門をくぐる。
分厚い外壁に囲まれ、分厚い門を抜けた俺は、
「これは……」
門を抜けた先には夜が遅いにも関わらず人の往来が激しい事にビビった。
「ようこそナギさん! 女王セイラル・アナライズ・リューリア様が治める地、ゲルガ王国首都エンディミオンへ!」
俺がまるで田舎から上京し、初めて歌舞伎町に来たかっぺ野郎の様な反応を示しているとシェーナは満面な笑顔で俺の手を引き街へと招き入れる。
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