神話創生 アトラス歴1981年【19年前】3-2
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少しだけ修正しました。
ゲルガ王国との国境沿い、魔族が駐留している場所を見渡せる位置に俺は来ていた。
「うはっ! 凄い数だな……この数で駐留してるのに攻めこむのは来年なんだろ?」
魔族側の人数は約七万。
そして、その数を食わせる為の兵糧も用意出来ている魔王の手腕に脱帽する。
「まぁ、魔族も今は前線基地を建造中ってところか? ……何にせよ、この地を抜けるのは確実にバレる。それなら迂回してゲルガ王国の国境を超えるしかなさそうだな」
この道はダメだと早々に見切りをつけると、俺は再び周りを見回す。
「そうなるとあの山を越えるのが無難ってところだな」
魔族側も軍を率いてあの山を越えるなんて発想は無いな……って言うか無理だな。
「だからこそ、俺には好都合って奴だ」
ニヤリとほくそ笑むと俺は山越えを始めた。
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「成る程、これは普通に魔族も人族も山越えは無理だな」
山越えの行程をほぼ踏破し、恐らくゲルガ王国側に入った俺は素直な感想を漏らした。
「そこそこ強い魔物がウジャウジャ居やがったな。俺や魔王が此処を越えるの問題無いが、他の奴らにはリスクが高すぎるな……」
うんうんと俺は頷く。
「さて、コレからどうするか? ゲルガ王国もスパイ対策で身元がハッキリしない奴をすんなり街に招き入れるとは思えんしな……」
「キャァァァーーー!!!」
俺の耳に劈く様な悲鳴が届いた。
「まぁ、お約束だよな。……さて、どうするか」
此処はもうゲルガ王国内だ、迂闊に人と接触して良い訳が無い。
だったら見捨てるか?
「このまま見捨てるのも後味が悪いよな……」
人族に会うのにこの仮面は逆に目立つ。
外す事で神に見つかるリスクもあるが、まぁ確率は低いだろう。
「──疾っ!」
仮面を外すと悲鳴が聞こえた場所へ跳躍した。
「あれは……修道女?」
眼下には魔物に襲われかけてる修道女が居た。
「何で修道女がこんな場所に居る。とにかく助けよう」
魔力を全身に巡らせ、魔法を発動する。
「鳳凰飛翔!!」
焔の鳥となって魔物へと羽ばたく。
ドォォォォォン!
魔物は轟音と共にこの世からその存在が消し去られる。
◆シェーナside◇
「シェーナ君、キミをアガスト王国内で今後活動してもらう事になった」
「な、何故ですか!?」
納得がいかない。
「私は神永教会の為にやってきました! 近い内に魔王軍の侵攻が予想されるゲルガ王国と共に私も一緒に──」
死にたい! そう言おうとしたが、神父によって最後迄言わせて貰えなかった。
「──君は若い。そして、信心深い……。そんな君だからこそ神永教会の教えを後世に残して欲しい」
「しかし!」
「君にはアガスト国内にあるクルハ村で孤児院の手伝いをしてもらいたい。未来のある子供を護るのも我々の仕事だと思わないかい?」
「その言い方は卑怯ではありませんか?」
「すまないとは思ってるよ」
下唇を噛み、悔しさで身体も震えたが、抵抗する事は無理なのだと仕方無く諦める。
「……謹んでお受けします」
「有難う! ──魔王軍の侵攻は恐らく来年になると予想されています。なので、半年以内に準備を済ませてクルハ村に向かってください」
「承知致しました」
「宜しく頼みますよ」
「……はい、それでは失礼します」
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私は教会から出ると、今後の事を考える。
「はぁ、どうしましょ……」
やる事が一気に増えて忙しくなった。
只でさえ気乗りはしないのに、慣れ親しんだ街も離れるとなると殊更に気分は憂鬱になる。
「まずは街の人に挨拶と、移動の手配、それに引越しの準備とでやる事が一杯です」
だけど次に行く場所は教会では無く孤児院との事だ。
「子供って苦手なんですけどね」
子供が好きか嫌いかで言えば好きだ。しかし、得意か苦手かで言えば苦手である。
そんな私が孤児院で勤務等出来るか分からない。
それもまた私の気分を沈ませる一因だ。
「他の修道女や子供達にお土産とか持って行けば少しは馴染みやすくなるかしら?」
名案だと考えると、次に何を持って行けば良いかを考える。
「食べ物は……移動距離が長いですし却下ですね。そうなると……薬が良いかもですね」
実用的なお土産だと自分でも思った。
「そうすると、クレミート山脈にある百年草の花を摘みにいかないとですね」
百年草の花は調合すれば傷薬として有用だ。
活発で元気な子供が多いなら傷薬は重宝されるだろう。
「少し多めに摘んで押し花にして渡してあげても良いかもですね」
早速取りに行きたいが、流石にこの時間からだと帰れなくなってしまう為、明日の朝早くから出掛ける事にした。
「さて、明日は体力勝負になりますし早く寝ましょう」
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翌朝、朝と呼ぶにはまだあまりにも早い時間、昨日の内に手配しておいた馬車に揺られクレミート山脈に向かった。
「毎度ぉ〜! それじゃまた夕方頃に此処を通るから、その時に拾っていくよシェーナちゃん!」
「おじ様、送って頂き有難う御座います。また夕方宜しくお願いします!」
私は馬車の姿が見えなくなる迄、手を振って見送った。
そして、完全に居なくなったのを確認した後、私は「よしっ!」と気合いを入れると早速山に登った。
此処は少し登った位の所なら安全に活動出来るが、奥の方までいくと魔物が一杯いるのは街の者なら誰もが知っている常識だった。
「この辺りかな? 百年草の花はこの辺に群生地が有った筈よね」
これ以上進むと魔物が出現しやすくなると、以前、街の冒険者から話しを聞いた事があった。
「つまり、此処がボーダーラインだよね? 何で百年草の花もこんな場所にあるのよ……」
私はぶつぶつと愚痴を漏らしながらも花を探す。
──三十分程探していると、魔物の咆哮と共に私に向かってくる魔物が現れた。
「キャァァァーーー!!!」
魔物との距離はまだ有る。
今直ぐに逃げれば逃げ切れるだろう。
しかし、私の足や腰は力が入らなくなり、地面にヘタリと尻餅を突いた。
「だ、だれか……」
こんな辺鄙な場所に都合良く人が居る筈が無い。それなのに私はか細い声で助けを求めた。
魔物までの距離が五メートル位の所迄来た時、それは起こる。
ドォォォォォン!
砂煙が巻き上がる程の轟音が響いた。
「えっと……一体何が?」
モクモクと上がる砂煙が少し晴れた時、煙の中で人の影がシルエットとして浮かび上がる。
「大丈夫か?」
煙の中から声と共に男が出てくると、私に手を差し伸べながら声をかけてきた。
「は、は、い」
私は魔物ではなく、人であった事に安堵し、その手を取った。
「あの! 助けて頂き有難う御座います!」
私がお礼述べると男は歯に噛む様に笑い、こう言った。
「あぁ、気にしないで良い。そんな事より無事に助け出せて良かった」
きっと私はこの人を好きになったのだと思う。
そう自覚出来る位に頬が赤くなるのを実感した。
◆ユウナギ・カケルside◇
修道女を無事に助け出せてよかった。
それより、こんな魔物が出る場所にどうして修道女が?
まぁ、こっちの土地勘が無い以上、俺は迂闊な事を言えない。
本来ここが魔物の出難いエリアだとしたら、きっとまた俺が原因で彼女が襲われたのだと思う。
「こんな所で何してるんだ?」
「あの、えっとぉ〜」
修道女はモジモジしながら何かを言い淀んでいる。
「百年草の花を摘みに来たのですが……魔物がこんな場所迄出て来てしまいまして、その有難う御座います!」
言い方的にやはりこの場所は本来魔物が出難いのだろう。なら、これは俺の責任だな? だったら彼女が云う花を摘むのを手伝うべきだな。
「そうか、此処は危険だし花を摘みにいこう。俺も手伝うよ」
「そ、そんな! 助けて頂いた上にそんな事までしてもらうのは──」
「──気にするな、俺がしたいからそうするだけだ」
本当にすいませんね! お詫びに必ず貴方は家迄送り届けますよ!
「俺の名前はナギだ。よかったら名前を教えてくれないか? 嫌ならシスターって呼ばせて貰うが……」
「そ、そんな事無いです! 私はシェーナと申します! どうぞ宜しくお願いします!」
何処となくファリス感があるシスターだなこの人……。
「それじゃシェーナ、早速花を摘みにいこう」
「えっと……それではお言葉に甘えて! よ、宜しくお願いします!」
俺とシェーナは花を摘みに周辺を歩いた。
何時も見て頂き有難うございます。




