新たなる時代
更新です。
「んぅ〜〜……此処は?」
眠り過ぎた為か痛む頭を手で押さえ軽く頭を振った後、俺は伸びをした。
「そうか、無事に身体は回復したか」
魔王の心臓が埋め込まれた胸を見ると、呪いの象徴である気持ちが悪い血管も浮かび上がっていた──何て事は無かった。
絆絶が形状変化を起こし、俺の心臓と融合して呪いを相殺してくれてるみたいだ。
「白虎、イズル……お前達のお陰で俺は俺を取り戻せたみたいだ、有り難う。お前達に報いる為にも俺は必ず目的を達成してみせる」
──さて干渉に浸るのは此処までだ。
俺がどれくらい寝てたのか調べないとな。
「情報を集める為にも近場の街に行くかって言いたい所だが……流石にこの格好は不味いな」
まぁ、今の俺はアレだ……全裸って奴だ。
しかも仮面も健在で絶賛装着中。
やばい……完全にアカン格好だ。
「しょうがない。街に向かう前にその辺の獣を狩って、その毛を刈るか……」
取り敢えず方針を決めると、獣を探す為に神経を研ぎ澄ます。
「おっ、近場に獣の群れと……成る程テンプレ展開か」
俺の索敵レーダーに獣の大群とそれに追われる商人……らしき男がいた。
「まぁ、男商人なら全裸仮面で行っても問題ないか。相手は商人だし助けたら適当な服も貰えるだろ」
勿論、今一番欲しい情報なんかも持ってるだろうし一石二鳥だ、手遅れになる前に早速動こう!
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男は逃げる。
この辺りは魔族領の中でも、比較的魔物が大人しいエリアの筈だった。
「な、なんで! この辺の魔物は魔王様の威光で魔族を襲わない筈なのに!!」
「がるるるるっ!!!」
魔物は直ぐ其処まで迫っている。
荷物を捨て、馬車を軽くすれば逃げ切れるかもしれない。
だけど、そうしても逃げ切れないかもしれない。
それに何より、この積荷は必ずアノお方に届けないといけない。──そんな風に悩んでいる間も魔物は商人に近づいてくる。
「ぐがるぁぁぁ!!!」
「ひぃぃぃ!!!!」
魔物の群れが馬車に飛びつきそうになった時、商人は確かに見た。
全裸で仮面の男を!
「どっせぇーーーい!!」
そんな気の抜けそうな声と共に、魔物の群れが、魔物達が次々と爆ぜていく。
◆ユウナギカケルside◇
俺は演出を大事にする男。
そう、ギリギリ迄追い詰められてから助ければ、超絶にドラマティックであるからだ。
危機的状況なら、より報酬が期待出来るとか決して思ってない。
ゴメン嘘、少しだけ期待してます。
とは言え不測の事態が起こる可能性もあるから、さっさと魔物達も狩るとする。
「──疾っ!」
完全に復活した身体は以前より遥かに強靭になっているのが実感できた。
これも白虎のお陰だろう。
「本当に白虎には頭が上がらないな……それはそうと……」
俺は一息で敵陣に突っ込むと、今まさに馬車に取りつこうとする魔物の頭に拳を叩き込んだ。
「どっせぇーーーい!!」
再起一発目の敵は俺の拳によって頭どころか全身が弾ける。
「まだまだ行くぜっ!」
俺は魔物の群れを瞬殺しまくった。
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そう時間が掛かる間も無く魔物の群れを壊滅させた。
「た、たすかりました! ぜ、是非御礼をさせて下さい! 何でもさせて頂きます」
「ん? 今何でもって言った?」
「はい……私が出来る範囲で、ですが……」
商人は急に弱気になりやがった。
まぁ、服と情報だけ貰えればそれで良いけどね。
「それじゃ、取り敢えず何か着れる物を下さい」
「そんな事でしたら直ぐに用意します!!」
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ふぅ、コレで変質者として職質されなくはなった筈だ。
「中々カッコいい服ですね」
厨二心を擽る黒を基調としたデザインが俺に刺さる。
「そう言って頂けて何よりです。それよりナギさんはお強いですね! やっぱり魔王軍の方ですか?」
商人の男はダンと名乗った為、俺も同じくナギを名乗った。
ナギを名乗るリスクが無くは無いが、魔王も俺を殺したと思ってるだろうし、目立たない限りは問題ないだろう。
「いや、旅の武芸者って所だ」
「そうですか……貴方程の方なら八将貴にも並べそうですね」
これは早速情報収集のチャンスだな。
「あぁ〜俺は世俗に疎くてね、今の八将貴ってどんな奴がいるんです?」
「そうでしたか! まぁ、今は魔王様が人族に情報を渡さない為、味方にも詳細を明かさないらしいので私も分からないですけどね」
流石サラサ、全てにおいて念入りだな。
「それでも公開されてる情報もありますよ? 私はその公開されてる将軍の一人に積荷を届ける為に馬車を走らせていたのですよ」
「そうなんですか。その将軍はどんな方なんです?」
「はい! 八将貴最強の武人である破滅のグラ様です!」
……えっ? 破 滅 の グ ラ ?
「えっと……もう一度言って貰えますか?」
「その驚き様、流石にナギさんでも知ってますよね! そうです、あのグラ様です!」
────はははマジか……。
「眠り過ぎたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺は絶叫するしかなかった。
何時も見て頂き有難うございます。




