神話創生 アトラス歴????年
更新です。
俺はどうなった?
辺りを見渡せば、其処は自身の身体すら視認出来ない真っ暗闇な世界だった。
これは……一体何が起こった?
何も思い出せない……。
いや、俺は本当に覚えていないのか?
此処に来る前に……確か──漆黒の光が、人族諸共『俺』と云う存在を呑み込んだ。
しかし、意識が無くなる直前、俺の事を誰かが庇ってくれた気もする。
もしかして白虎が? ……そんな筈も無い。
息耐えた彼女を絆絶に取り込んだのは確かに俺だ。生きてる筈がないのは俺が良く理解している。
それならば一体誰が俺を庇った?
真っ暗闇の空間で頭を捻るが一向に答えは出なかった。
「ったく、命の恩人を忘れるとか酷いな……」
嗚呼、そう言えばそうだった。
「貴様か……」
俺は勇者に助けられた。
「何故、貴様は俺を助けた?」
「友達を助けるのに理由なんか要らないだろ」
俺が友達、何を言っているんだコイツは……?
「貴様なんか知らん」
「おい……そういうボケは要らないから」
「お前と友になった覚えも無い」
「……翔こそ何言ってんだよ。お前はもう記憶が戻ってるんだぞ? 何時迄もボケ倒してるんじゃない」
「だから、何を言って──痛っ……」
突然、激しい頭痛が俺を襲う。
その痛みは、頭蓋を麻酔無しで切開され、ゆっくりと脳を取り出される様な感覚だった。
「翔の奥さんに礼を言えよ? あの人のお陰でお前はお前になれるのだからな」
どういう意味だ? そう思った俺は直ぐに理解する事になった。
「絆絶が俺の身体と融合している……のか?」
魔剣が俺の肉体を喰っていない? それどころか俺の肉体の再生を補助していた? 一寸先が見えなくても、今、自分の身体がどうなっているのか、ある程度理解出来る。
「彼女がお前を守ったんだ……。そして、それは俺も同じだ。いい加減思い出したか?」
・
・
・
「なっ!? 間に合えっ! 反転空間」
そう咆哮をあげる勇者によって、俺のラグナロクは奴を掠める様に回避され、ダメージを与える事が出来なかった。
「危なかった……って殺す気か……!」
「無論そのつもりだ」
俺はこの男を殺す為に此処に来た。……大切な人を助ける為に、だが蓋を開けてみれば、大切な人も助ける事が俺には出来なかった。
そんな考えが頭によぎった時、悪寒が身体中に疾る程に魔力の流れを感じた。
「これは……!?」
魔力が周囲を覆うと、空間が歪み狂っていく。
魔王の仕業と直ぐに気付いたが、この状況だ、余計な事を考えられる余裕など無かった。
「──翔! 避けろ!?」
勇者の言葉が聞こえた時、既に俺の腹から下は闇に呑まれていた。
ドグシャァッ!
闇があらゆる方向から俺を呑み込まんと猛る。
「……そうか、俺も死ぬ、のか」
もう、既に逃げ出す事は不可能と、生きる意味を失ってた俺は自身の生を簡単に諦めた。
──が、しかし。
「死なせねぇよ! 総べてを否定する!」
極限迄に操作された重力が俺を守る。
「何故、俺を助ける」
「親友かもしれない奴を俺が見捨てられる訳ないだろ」
「……そうか」
「……なぁ、お前は本当に翔じゃないのか?」
「──俺はナギだ。……だが、かつては夕凪翔と呼ばれていたらしい」
「らしい? らしいとはどういう事だ?」
「俺は記憶喪失って奴だ」
何でこんな話しをコイツにしたのかは不思議だった。きっと命を助けられたから、それの恩を返したのだとも思う。
「そうか、でもお前が翔って事が確定したんだ……だがら必ず助けてやるよ」
「出来るならしてみろ」
こんな会話をしてる最中でも確実に勇者の結界は食い破られつつあった。
「なら黙って俺に守られてろっ! ハァァァァァァ!!」
再び結界が強まった。
「誰の仕業か知らんが、こんな巫山戯た技はそう長く保たないだろ? 其れ迄耐え切ってやる!」
「…………」
勇者は勇んだ。だが、この威力の魔法を何時迄も耐え切れるとは俺には到底思えない。
もしも、勇者が自分の身を守るだけならば可能性は有ったのだろうが、今は動けない足手纏いの俺を守る為、余計に力を消費している状況だ。
そんな状態ではとても最後迄保たない。
それでも、ボロボロな身体の勇者が発した言葉はとても心強く感じた。
「コレが勇者か……」
血も流し過ぎ、体力の限界も近づいていた俺は意識が途切れつつあった。
「大丈夫だ。……翔……お前だけは絶対に助けるぜ」
最後にそんな言葉を聞いた俺は其処で意識が途絶える。
・
・
・
「──俺はお前に助けられたんだな?」
「あぁ、最後に俺の総てを注ぎ込んだ結界をお前に張って俺は力尽きたけどな」
「命を賭けてまで俺を助けたお前の望みは何なんだ?」
「簡単だよ、お前には幸せになって欲しいんだよ」
「気持ち悪い事言うな、鳥肌が立つ」
「おっ、翔らしくなったな」
「お前のお陰で少しずつだが、記憶って奴が戻ってきたさ……まぁ、魔将ナギとしての記憶も統合されてるから翔であって翔じゃないかもしれないがな」
「まぁ、その身体が完全再生する頃には記憶も完全に蘇ってるさ……記憶や身体の再生速度については奥さんに礼を言えよ?」
ヨヤミの言ってる意味はそのまんまの意味なのだろう。
元々魔王の心臓によって再生能力はあるが、絆絶が更にそれを強化している。そしてそれは記憶にも作用し、補強及び強化をしている様だ。
「白虎様々だな彼女には足を向けて寝られない」
「そうだな。まぁ、一足先にお前の奥さんに挨拶しておくから、お前は直ぐに来るんじゃないぞ? 俺や奥さんの為にもな」
「……スマンな、それとあっちでは白虎にも宜しく頼む」
「任せろ」
そう言うと満足気に親友の姿がスゥーっと消えていった。
「嗚呼……俺は本当に色んな奴に支えられていたんだな」
最初から分かっていた。ただ、今更ながらに深く実感した。
「──さて、俺も暫く眠るとするか」
記憶と身体が元に戻る迄……な。
何時も見ていただきありがとうございます。




