神話創生 アトラス歴1490年【510年前】2-6
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魔将が放つ暗黒の光を、少し離れた位置で覗きみている魔王が居た。
「成る程……奈落に沈む希望と似ているな──良い技だ」
自身が開発した技に全く似てはいないが、それでも何処となく似ていると感じた魔王は微かに微笑んだ。
「貴様の活躍、確かに見届けた。それに、お前の守りたかった者も理解した。だから、約束は守る──しかし、」
そう云うと魔王の身体から立ち昇る魔力は黒い霧状となって辺りを侵蝕し始める。
「──深淵より来たるは終焉の唄、我の業は破滅の刻、この身に受け入れよう……。
──嗚呼、神は何故、生きとし生けるものに試練を課すのか。
──嗚呼、何故、世界はこんなにも残酷なのか……。
──その試練には一体何の意味があろうか……。
──我が進むは叛逆の道。否、これは正義への道。
──世界がこれを悪と云うならば……我は喜んで悪を成そう。
──此れは神の希望を塗り潰す我が絶望の一撃」
魔法を完成させた魔王は最後の言葉を発する。
「魔将よ、これから消えゆく貴様に我からの餞だ……。そして、これは神に対しての宣戦布告でもある! ──全てを無に帰せ、奈落に沈む希望!!」
内政活動を中心としていた魔王。人類侵攻を八将貴に任せ、魔王を欠いた魔王軍の侵攻は砦攻略に数年を要する予定だった、しかし、魔王の新魔法によって、そこに居た生きとし生ける者、形ある物が例外無く呑み込まれ、その全てが無へと消えていった。
アトラス歴1490年──。
魔王軍によってベスティア砦は攻略された。
そして、何も無くなった砦跡には魔族と人族を隔てる壁が早々に建造される。
壁が作られると魔王は直ぐに人類へと布告した。
その内容とは……「コレより人類に対して魔王軍は百年の不可侵を宣言する。ただし、貴様達が攻めて来るのならばその限りでは無い!」と一方的に告げた。
ベスティア砦陥落の報や勇者の生死不明と云った報告が運良く生き残れたアベルと少数の生存者によって齎される。
この知らせを受け、上層部は敵である魔王の言葉に悔しさを滲ませつつもこの話しに乗らざるを得なかった。
人族は百年の猶予を得る事になった。
しかし、百年の安寧を得た人類は愚かにも同族同士で争う事を辞める事が出来なかった……。
その理由の影の一面として、百年後、更にその先を見据えた未来に対し、各国の首脳が意図的に行なった内戦である。
後世に残る歴史教科書を見れば愚かな人族と描かれているが、真相を知る極一部の人間にはこの選択肢しか無かったと胸を張って言うだろう。
神星石──。
数多の人の魂を糧として精製される石、勇者を召喚する触媒に用いられる。
そう、人族は安寧の百年の間、神星石を貯蓄すると云う選択肢を選んだのだ。
過去に四神を呼び出し、滅ぼされる。
現在に滅壊の勇者を呼び出し、滅ぼされる。
ならば、未来に、より数多の有能な勇者を大量に呼び出す事にした。
人類上層部はコレを五百年計画と呼んだ。
勿論、百年が過ぎ壁が壊されれば、魔王軍の侵攻を阻む為に勇者を召喚させられるかもしれない……。
だが、この五百年計画完遂の為、最低限の勇者召喚を行うのは一回、多くても二回と予想された。
計画中の人族は専守防衛戦術に切り替えた。
アトラス歴1500年──。
壁が建造されて10年。
人族は計画的に内戦を起こしつつ、魔王軍の侵攻が再開された時の為、道中に数々の罠を仕掛け、砦を建造……をゲルガ王国に繋がる迄繰り返す事になった。
そして、彼は眠っていた。
アトラス歴1503年──。
英雄アベルとイニャが結婚し、第一子が誕生した。
勇者の血が潰えなかった事にファーラスト王国は大いに盛り上がる。
そして、彼は眠っていた。
アトラス歴1510年──。
壁が建造されて20年。
魔王軍の侵攻を阻む為の砦や罠の作成は順調だった。
死星石には順調にも魂が捧げられている。
そして、彼は夢を見ていた。
アトラス歴1540年──。
壁が建造されて50年。
神子であり、人族の中心人物であるレイシア・アーザルの死亡が発表された。
彼女が最後に観た光景が何なのかは判らないが……彼女の表情はとても安らかだといわれていた。
そして、夢を見ていた彼も、また……安らかだった。
アトラス歴1580年──。
壁が建造されて90年。
かつての戦いを知る物は殆ど居ない。
人族はこの壁が後10年で壊される事を実感出来る者が居なかった。
そして、彼は未だ夢を見ていた。
アトラス歴1590年──。
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・・
・・・
世界に響く様な轟音と共に壁が消滅した。
「さぁ、刻は来た……我が同胞達よ、全てを蹂躙せよっ!!」
魔族の長と思われる女が先陣を切って突撃している。
その側に八人の将軍と、超巨大な魔獣を三匹伴って……。
何時もお世話になってます。
仕事で昇進し、より時間が取れなくなってしまいましたが何とか生きております。
今後も不定期更新ですが、どうぞ宜しくお願いします。




