神話創生 アトラス歴1490年【510年前】2-5
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兵士達は命からがら逃げきった者、大地に呑まれた者、そんな状況の中で戦いは一時中断される。
「何で、絆絶を使わなかったの? 使えばこんなに苦戦しなかったでしょ……」
「……」
「アレを使えばやり過ぎてしまうから? それの所為でアベル君を殺す可能性があったから?」
「……そうだ。アイツが死んだらお前が悲しむ」
その言葉に白虎は喜び半分、悲しみ半分といった表情をしていた。
「それで貴方が死んだら意味がないよ」
「そうか……それよりも、それ大丈夫なのか?」
腹に刺さる剣、それに指を指して問いかけるナギはやはりズレている。
「大丈夫な訳ないじゃん。……でも、正直に言えば思った程痛くない、かな?」
「……すまない」
「謝る位なら最初から私を置いて行かないでよ」
「そう、だな」
段々と白虎の顔から血の気が失っていく。
「お前がこんな状態なのに、俺は泣けない……悲しいって感情は有る筈なのに」
「悲しいって思ってくれるなら、それで良いよ。……貴方はコレから先、色々起こるけど、その色々な事に私は一緒出来ない。だからね、約束して? 絶対に死なないって」
「分かった」
「だったら……」
そう言って白虎は小指をナギに絡めると、
「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲〜ます、指切った……今の貴方には訳が分からないだろうけど、約束は守ってね?」
そうしてナギに絡める指から力が抜けた。
「……」
白虎は物言わぬ身体へと成り果てる。
「……本当にすまない」
そんな彼女の仮面に数粒の水が垂れた。
雨なんかは決して降っていない。
だとしたら、それは?
「そうか、俺は泣けるのか……」
白虎と過ごし、白虎から貰った人間の感情、最後に命すらも頂いてしまった。
「出ろ、絆絶」
白虎に別れの挨拶を済ませると絆絶を顕現させる。
「──シロを喰らえ」
その命令に絆絶は白虎を優しく取り込んだ。
「コレでこれからもずっと一緒だ」
白虎を取り込み終える頃、人族の混乱も大分収まっていた。
「俺にはもう、守りたい者も居なくなった。だから……死にたい奴から前に出ろ。お前達の終焉は俺だ」
絆絶はナギの意思を汲み取り、その姿を、かつて風間と戦った時同様、漆黒の鎧に形を変えた。
そして、以前と同じく妖しい紋様が血管の様に脈動していた。
いや、その紋様は以前の様な禍々しさが薄れていたのだった。
「魔将がこんな装備を持っているなんて……」
情報に無かった魔将の姿に本能的な恐怖で震えてしまったアベル。
「お前はカケルなのか?」
対して、勇者ヨヤミは友に逢えたかもしれない喜びに震える。
「……誰だソイツは……俺の名は魔将ナギ・ケルウェルだ。それ以外の何者でもない」
「だったら、その仮面を剥いで確かめてやる!」
「やれる物ならやってみろ、雑魚がっ!」
「上等ぉぉぉ!!!」
ヨヤミは拳を構えるとナギへと向かっていった。
「──重力増加!」」
再び重力という名の重しをナギに嵌める。
「温いな。── 氷焔螺旋・魔王戯曲」
ナギの背中から蔦が剥き出しとなり、勇者ヨヤミやその周囲に居た兵士達に襲い掛かる。
「っ! 舐めるな!」
重力を纏わせた鉄拳でヨヤミは蔦を払う。
「ほぉ? 少しはやる様だな……」
「伊達に勇者じゃないんでね」
「そうか、ならば次はこれだ。── 氷焔螺旋・大華炎」
数多の流星が戦場を絨毯爆撃していく。
「── 重力反転!」
ヨヤミはそう告げると、流星とナギは遥か上空へと弾き飛ばされる。
「からの! ── 超重力増加!」
一気に上昇した身体は一転、激しく大地へと叩きつけられる。土煙がモクモクと拡がり、ナギの姿は見えなくなっていた。
「やったか!?」
もし、ここに夕凪翔が居たならば『おまっ! それフラグゥ!』と言ったであろうとヨヤミは妄想して笑う。
しかし、ヨヤミは能力をフルに活用して叩きつけた。普通ならばマトモに戦える状態では無い。そんな自信の所為か、ヨヤミは気を抜いてしまった。
「その程度で終われると思うなよ勇者」
「っ!?」
「氷焔螺旋・魔焔砲」
土煙が晴れぬ中、熱線が辺りを薙ぎ払った。
「最終局面だ、死にたくなければ活路を開いてみろ勇者!」
ナギからは異常な程の魔力の集積をヨヤミ達は感じた。
「氷焔螺旋・地風滅界」
戦場に終焉を齎す暗黒の光が煌めいた。
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