神話創生 アトラス歴1489年【511年前】1-4
新年明けましておめでとうございます!
本年ものんびりと更新しますが、どうぞ宜しくお願いします。
戦場に人類と魔族の両軍にも属さない、仮面の二人は呑気に会話をしている。
「さて、どうするか?」
魔将ナギが相棒に話しかける。
「この場合は魔王軍を退けた後に人族にも多少の犠牲を出る様に調整すれば良いのかな? 恐らく神星石もそろそろだと思う」
自身の能力で精製した義手の女、シロがそれに応える。
「……そうか」
「気は進まないですけどね」
「まぁ、シロは後ろで見てろ。──俺が雑魚を一掃する」
二人の会話はグラディスの耳に入り、そして近くに居るイニャの耳にも届く。
「雑魚だぁ? テメェ等もそんな仮面付けてるんだ……こちら側だろ?」
グラディスは暗にそんな仮面を付けてるなら魔族側の人間だ、だったら手伝えと圧をかけている。
「魔族なら、それこそ俺を見てピンとこないのか?」
「あんっ? 何を訳わかんねぇ事言ってるんだテメェ」
「そうか……言ってもわからん馬鹿に説明する義理も無い」
「へぇ、言うねぇ……俺に舐めた真似をしたんだ、覚悟は出来てるんだろうな?」
「覚悟? それはお前がするべきものだ。──ついでに言うとそこの人族も掛かって来い。俺はお前達の敵だ」
「へっ?」
イニャは援軍かと思った相手がこんな事を言うとは思ってもいなかった。
「どうした? 貴様等は脆弱な雑魚なのだから、少しは協力でもして自身の生を掴み取ってみろよ」
ナギはそう述べると、空間が歪んで見える程の殺気を戦場に撒き散らした。
「……はっ、ハハッ! そうか、やっと分かったぜ。──テメェが魔将か!」
「やっと気付いたか愚図が……」
「……魔将って人族と魔族の戦場に現れては両者を攻撃してくるって──」
イニャはやっと現状を理解した様だった。
「そう言う事だ。──だから、グダグダ言ってないで掛かってきな」
「いいね! まさか魔王様が探している男が真っ先に俺とぶつかってくれるとはな!!!」
「……最悪すぎる」
グラディスとは反対に、イニャは貧乏籤を引かされたかの様にテンションが下がっていた。
「お前等! 敵は魔王様が探している男だ! 死なない程度に痛めつけてから差し出してやれ!」
「「「おぉ!!!!!」」」
グラディス率いる魔王軍は魔将をサラサへと差し出す為に動きだした。
「俺との実力差が分からないのなら仕方ないな……だったら、教育してやる」
魔将は自身に降り掛かる火の粉を払うが如く戦場を駆ける。
一陣の黒風が疾る度に魔族の兵がダンプカーに轢かれた様に爆ぜる。
圧倒的な暴力の前に魔族達は成す術もなくその命を散らしていった。
「どうした? 俺を魔王の元に差し出すんじゃないのか?」
あまりにも異常な存在に人族は騒然とし、魔族は恐怖に耐えながら死を抗う。
「良い加減止まれやぁぁぁぁ!!!!」
グラディスの身体から数多の触手が生えるとそのまま魔将を襲う。
「それが貴様の能力……か、やっぱりその程度か」
触手を直に掴むと、ナギは思い切りそれを自身に手繰り寄せた。
「ぬぁぁ?! ぐはぁぁぁ!!」
魔将へと引っ張られたグラディスは勢いがついたまま、その顔に拳が叩き込まれると、ドグシャッ! と鈍い音を響かせながら吹き飛ばされる。
この場からグラディスが消えると、魔将はイニャに向き直ると、
「そこの女、いいのか? さっきから見てるだけだが次はお前だぞ?」
「……私が勝てる訳ない」
「まぁ違いない。お前は現状を理解しているな。それならどうする? 逃げるか?」
「……一応、私もここの責任者だから、そうもいかない」
ゴゴゴゴゴッ!!!
「俺を無視してるんじゃねぇぇーー!!」
吹き飛ばされたグラディスは触手に剣や斧、槍と数多の武器を装備し、土煙を上げながら突撃してくる。
「かなり加減して殴ったとはいえ、中々タフな奴だな」
「……こいつ中々死なないから面倒なんだよね」
「んだとぉテメェ等! 仲良く喋りやがって! 実は知り合いか!?」
仲良さそうな魔将とイニャに、思わず突っ込みを入れてしまったグラディスは武器を装備した触手を振るう。
矢を放ち、剣が薙ぎ、槍が穿ち、斧が大地を割る。
「俺にそんなのが通用する筈が無いだろ」
しかし、そのどれもが魔将には届かない。
「ちっ、女! 俺に力を貸せ! お前達人族にとってもコイツは危険な存在だろ」
「……そんなのはわかってる。でも……」
イニャは自分が参加した所で勝てる相手とは到底思えない事を理解していた。それならば、今確実に始末できそうなグラディスをやるべきかとも思ったが……。
チラッと義手の女を覗き見ると、
「頑張ってね〜」
何故か応援される。
「……」
掴み所が無い義手の女がどう動くか分からない以上、迂闊な行動は避けるべきか? との考えがイニャにあった。
しかし……と動く。
「どうした早く手をか──」
グラディスのその言葉は最後迄紡がれる事は無かった。
「……確実に危険分子は排除する」
イニャは隙だらけのグラディスの首を刎ねる。
少なくともこれで八将貴の一人は消せた事になる。
「それで正解だ」
魔将はイニャを凝視しながら口元をニヤつかせる。
「コレでベスティア砦はもう暫くは耐えられるだろう」
「──貴方達は味方なの?」
「いや? 敵だと言った筈だが」
「だったら何故私を助ける様な真似をする」
「クククッ、助けたつもりは無いんだが……それとまだ戦争は終わってないんだぜ?」
「そんな事はわかってる」
どうすれば良いかイニャが迷っていると、
「──これよりグラディスの命に対して、人族に対価を払わせる」
そう告げると再び魔将は戦場を縦横無尽に暴れ回った。
それは一部異なる事象ではあったが、予知者レイシア・アーザルが見た光景と酷似していたのであった。
そう、ここは地獄だ。
何時も見て頂き有難うございます。




