神話創生 アトラス歴1489年【511年前】1-3
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ベスティア砦がある戦場に数多の剣閃が煌めく。
刃が光る度に魔族の首が一つ、また一つ飛びかった。
「第一軍突撃せよ! 第二軍は一度下がって態勢を整えるんだ」
この戦場の主役であるアベル。彼の声が辺りに響くと、第二軍は後方に下がり始める。
「よし、第三軍は一軍の支援及び二軍の後退の援護をせよ!」
アベル率いるファーラスト王国の兵士達の練度は高く、更に強国であるゲルガの兵達も奮戦している。
「流石に四神の子供です。思っていたよりやりますね」
一人の女騎士が敵を討ち取りながらアベルの横に並んできた。
「そう言ってくれると、ベスティアまで来た甲斐があります」
彼女はゲルガ王国の女騎士であり、この砦の総指揮官サナタ。一見すると切れ長な目付きをしているためキツイ感じのイメージを持たれがちだが、そんな事は一切無い事をベスティア砦に来てからの生活でアベルは重々承知していた。
そんな彼女がアベルへと微笑む。
「──さて、どうしますかね。幾らベスティア砦が難攻不落とは言え、魔王が出てきたら抑えられるとは思えませんが……」
魔王はアベルにとって勇者である母を、残酷な迄に殺した存在だ。誰より魔王の危険性を理解している。
「魔王が出てくるならそうなのかもしれませんが……どう言う訳か魔王は過去の戦いから最前戦に現れる事はなくなった見たいですね」
サナタの言う通り、先の勇者と魔王の大戦【魔王の悪夢】と呼ばれる戦いから数十年、魔王サラサが戦場に現れる事は無くなった。
代わる様に戦場には魔子であり、八将貴と呼ばれる存在が都度現れては砦の外壁に少なくないダメージを蓄積させていく。
……今の人類には精々が時間を稼ぐだけであった。
「報告です! 西側の外壁に海淵のグラディスが現れました!」
アベルとサナタ元に伝令兵が駆け込んでくる。
「よし、この辺にいる魔族はあらかた殲滅できた様ですね! ならば私はグラディスを抑えに行きます。宜しいですか?」
サナタに確認を取ると、
「でしたら、このサナタも一緒に参ります。西側の外壁と言うと……グラム王国が担当していますね。──大丈夫かとは思いますが、アベルさんや私が行けば防衛はより確実でしょう。よし、ゲルガ王国の騎馬隊及びファーラスト王国の第二軍は我々についてくるのです!」
アベルはコクリと頷くと早々にサナタと一緒に兵達を連れて西側へと向かった。
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彼等が西側に向かう最中、グラム王国の英雄とグラディスが相食む様にお互いの血肉を削りあっていた。
「ガハハハッ! まさかこの俺、グラディスと打ち合える奴がいるとはな!」
熊の様な大男、グラディスは小柄少女と剣を交えている。
「……打ち合う? 私には一方的な展開にみえるのだけど」
小柄な少女、イニャ・シーロンは体型に見合わない大剣を小剣の様に振り回しながら、グラディスの問いに返答する。
「あんっ? そう思うならさっさと俺を倒してみろよ」
「…………」
「どうした、倒さねえのか? ガハハハッ、出来る訳ないもんな!」
全て判っているかのように、ニヤニヤしながらイニャを煽る。
確かに身体に負ってる傷等はグラディスの方が多かった──が、そのどれも精々かすり傷程度であった。
それに対して、イニャは目立った傷こそ無いものの体力の方は限界が近かった。
打ち合っている二人には状況を理解しているが、人族の兵士達にとっては戦況は有利に進んでいる様に見えていた。
そして、魔族の兵士達もグラディスがどんな性格か理解している為、自軍が不利だとは思ってもいなかった。
その結果、両軍の士気は高く、この戦いは何時迄も続く様に思われた。
「このままだと予定よりも早くベスティア砦は陥落しそうだな」
「そうですね……流石にこの速度で砦が陥落するのは不味いですね」
──二人の乱入者が現れる迄は……。
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