神話創生 アトラス歴1465年【535年前】5-14
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◆魔王ユウナギ・カケル◇
頭に、人の温もりと柔らかさを感じる。
眼が覚めると其処には見知らぬ女が膝枕をしながら俺の頭を撫でていた。
「誰だ、お、まえは?」
霞がかった記憶に朧気ながら覚えがある様な気がするがハッキリしない。
「……そっか、代償が記憶だったのね。──私は西宮 白虎。貴方、夕凪 翔の妻です」
女の風体はかなりボロボロであった。
隻腕の腕からは今も血が滴っており、俺に膝枕なんてしてる場合じゃないだろう事が伺える。
「ん、あぁ、これ? 貴方が気にする事じゃないよ、私が好きでやった事だしねっ」
「そんな事を言ってる場合じゃないだろ、早く処置しないと大変な事になるぞ」
「──ふふっ、やっぱり記憶が無くなってもカケルさんはカケルさんだね。私の自慢の旦那様です」
俺の妻を名乗る女は何が嬉しいのか微笑みながらそんな事を言っていた。
「別に……ただ、俺の事を知ってる奴に死なれると困るからだ」
「ツンデレって奴だね」
自分の事を思い出したい。……その為に妻を自称する女に今、死なれるのは困る。
「医者はいないのか?」
「あぁ……医者ね、うん、スラム街にマルチって知り合いがいるから、そいつの所に連れて行って」
どうするか悩んでいる様子だったが、白虎と言う女の指示に俺は従う事にした。
「わかった」
この女は貴重な情報源だ、絶対に生き残らせる。
そうして俺は女を抱き上げると、そのまま外へと向かった。
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聖堂から外に出ると街全体が喧騒に包まれている。
「は、早く街から逃げないと!」
「教会は何をしてるんだ! こんな時こそ神永教会の騎士がどうにかするべきだろ!」
「街道は封鎖されてるらしいぞ!」
「こ、こんな事……きっと魔王の仕業だ!」
「……っ!?」
錯綜する街の騒ぎの中で、俺は魔王と言う単語に反応してしまった。
「カケルさん落ち着いて下さい。状況的に魔王サラサ率いる魔王軍が青龍ちゃんに勝ったのかもしれません」
抱えている白虎は下唇を強く噛み、俺にしがみ付く腕に力が入っていた。
「大丈夫か? ってそんな状態で大丈夫な訳ないか」
「え、えぇ……気にしないで、ちょっと考え事してただけだから」
「……そうか」
「それより、マルチはそこを──」
白虎は俺を医者の居る場所に案内を続けた。
◆マルチside◇
「ある程度は予想をしていたが、これは予想外だった……」
俺は重症だったナギの妻、シロの処置を終わらせて事情を問いただすと、少し逡巡した後にシロが答えてくれた。
「まさか、シロが【地神】の白虎様でナギも異世界の勇者だったとは……」
そして、俺たちの会話を聞いていたナギはかなり驚いていた。
「何でお前が驚いてるんだ?」
今日最初に会った時と比べて、外側も内側の印象も大分変わっていた。
「それは多分、カケ……ナギさんの記憶が失われたからです」
シロは「私も全部を見ている訳じゃないのであくまで想像ですが……」と前置くと、俺に状況を説明をしてくれた。
「そうか、ナギの強さには代償があるのか」
「はい、そしてその代償は肉体と精神で支払わさせられます」
「ふむ。それはそうと俺にそんな話しをしていいのか? 教会潰しの事迄話すとはな……」
「勿論喋るつもりは有りませんでした。──ですが、この状況は下手に隠す場面では無いと判断します」
「成る程な。それで俺に何をして欲しいんだ?」
勿論全てとは限らないが、ある程度事情を説明して来たって事は、きっと協力を求められると察せられた。だからこそ、断るつもりの無い俺は先に切り出す。
「……良いのですか?」
「出来る事なら、な」
「では、ナギさんの記憶の戻し方を知りませんか?」
「記憶か……脳が損傷しているとかなら難しいが、ナギの場合は力の代償なのだろ? なら、長い時を掛けてじっくりと思い出させるしかないな」
「そう、ですか」
「もしくはナギを知る者と邂逅するかだな」
「わかりました。心当たりは一応あります」
「そうか」
白虎は「直ぐには無理ですが……」と呟くが、俺は聞かなかったフリをした。
「まぁ、ふとした拍子に戻る事もある。気長にやっていけ」
「そうします」
その後、この話が終わると魔王軍の進軍状況等を聞いて来たのだった。
何時も見て頂きありがとうございます。
申し訳ないですが次回更新も数日頂きます。
夏休み前なのでかなり忙しいです……。
それと物語は後2話程で四神の章が終わり、次章に進みます。
亀の様な更新速度ですが、今後ともよろしくお願いします。




