神話創生 アトラス歴1465年【535年前】5-5
更新です。
◆ナギside◇
俺達はマルチが経営する病院へと向かったが、
「ナギはフリューゲルは初めてだったか? だとしたら、この光景は中々堪えるだろ」
「そうだが……この状態って、フリューゲルでは普通の事なのか?」
華々しかった表通りと比べ、裏通りに一歩でも入れば其処は文字通り裏通りだった。
そこに住む人々は老若男女問わず、屋根のないボロ屋で寝ていたり、中にはゴミ箱を漁っている人も居た。
「何処の街にもスラム街はあるだろ。しかしフリューゲルでは規模が違う。此処で裕福に暮らせる者は皆、神永教会から恩恵を受けてる者達だ。そして、逆に教会に属さない者は徹底的に排他される。その結果がこの光景だ」
「……教会はコレを良しとしているのか? 風聞に関わる事だろ」
「奴等は過酷な環境に人間を堕とし、そこに順応した超越者を作ろうとしている」
「超越者?」
「何だ知らないのか? お前もその超越者だろ」
さっぱり何を言ってるか分からんのだが。
「超越者とは神子や魔子でも無い、人間としての壁を超えた者を指す者です」
白虎は知っているのかマルチの代わりに俺へと説明してくれる。
「ナギは神子じゃないんだろ? それなのにあの強さは超越者以外ありえん。それも上位の力を持っている、な」
成る程! だったら、俺は超越者じゃないな、スキル盛り盛り野郎だし! しかし、此処はある程度話しを合わせておく。
「超越者と呼ばれているのは知らんかったが……まぁ、俺の場合は死ぬ程訓練したし! それに、その理屈で言えばお前もそうなんだろ?」
「あぁ、私も一応は超越者だ。神殿騎士にスカウトされる位には強いと自負しているよ。勿論断っているが……」
「神殿騎士か、アイツ等ももしかして?」
「そうだ、神殿騎士は全員超越者だよ。その強さはピンからキリ迄あるがな。──さて、到着した。上がってくれ」
到着した先の医院はお世辞にも……ってよりかはスラム街によく合う外観だった。
神殿に潜入する事を考えれば、もっと話しを聞いておきたかったが、取り敢えず部屋に上がらせてもらう事としよう。
「「お邪魔します」」
「おかえりなさいマルチさん! それとナギさんと奥さん!」
「ケイティ戻った、早速で悪いんだが二人にお茶を出してあげてくれ」
「はい! 分かりました!」
ケイティと呼ばれた女の子は直ぐに去っていった。
「別にお茶とか気にしないで良いぜ? ……その、大変だろ?」
このスラム街の住人が他人に何かしてあげられる程余裕があるとは思えない。当然、病院の外観からして、マルチもお金があるとは到底考えられなかった。
「気にするな。私の場合は遺跡とかでも稼げている。この医院の外観も目立たない様に敢えてしているだけだ」
どうやら俺の考えていた事はマルチにはバレバレだったようだ。そして、その考えも杞憂との事らしい。
「──それで、私に聞きたい事があるんだろ? その為に態々此処まで連れて来たんだ……」
何か知らんが警戒されてるのか?
「何の事だ? 単純にちょっと話そうぜって思っただけだぞ」
「ナギ、お前はフリューゲルは初めてなんだろ?」
「それが何だってんだ」
「勇者と魔王の戦いが近いこの時期。警戒体制の強いフリューゲルに、騒ぎを起こさず入り込んだ有名人ナギ。お前程の男が此処に居るのを疑問に思わない訳が無いだろ?」
そう言う事か。
勇者と良い勝負した俺が真正面から街に入ったら騒ぎは必ず起こる。それなのに俺達があの場所で平穏に居たのを疑問に思ってるんだな。……つまり、不法侵入したのはバレてると思っていいな。
「勘違いするな。お前達を憲兵に突き出すとかはしない。お前には毒を盛った詫びもあるしな。まぁ、戦った仲って事で味方だと思ってくれて良い」
「そうか。……まぁ、詳しくは言えないがこの街には隠密で来ないとイケナイ用事が合ってな」
教会に良い感情を持ってなさそうなマルチに協力を頼もうかとも一瞬思ったが、
「お茶どうぞ!」
ケイティの顔を見てそれは止める事にした。
マルチに何か合ったら、この子も間接的に巻き込む事になってしまう。その考えがマルチを誘う事を俺に躊躇わせる。
「──ふむ。直接的には手伝えなさそうだが、情報提供位なら幾らでもしてやる」
こっちの事情を色々察したマルチの言葉に甘えて色々聞く事としよう。
何時も見て頂きありがとうございます。




