神話創生 アトラス歴1465年【535年前】5-3
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「── 血で彩られた世界」
風の神だけが支配する空の世界に、突如として魔の王が血の世界へと染め上げる。
「──」
風の神、青龍は悲鳴を上げる間もなく血の海へと誘われた。
魔の王サラサは慢心も油断も無く次なる一手を打つ。
「──我は闇、闇は我。光あらば闇が生まれる。闇があらばこそ光が存在する。我が闇ならば、総てを捉え束縛しようぞ……」
空を飛べる訳ではない魔王は、落下しながら詠唱を完成させた。
当然それを阻む筈の青龍からも反撃は来ない。
今、この瞬間、空を支配していたのは魔王だった。
「──|汝は鎖に囚われ闇へと堕ちる《ダークネス・プリズン》」
魔王の周りから、莫大な数の実態の無い鎖が、赤き海を包み掴むと、魔王の落下に引っ張られる様に降下を始めた。
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ドォォーーン!
二人は地上へと墜落し、同時に鎖は総て消えた。
当然動ける魔王は着地を華麗に決めたが。……しかし、青龍は無防備なまま地上へと叩きつけられた。
普通ならばミンチになっていてもおかしくは無い。
だが、青龍の今の状態を確認すらせずに魔王は呟く。
「デストロイオーガ達よ、更なる追撃をかけよ」
土埃が舞い上がっている中、追い付いて来ていたデストロイオーガ達に冷徹な命令を下したのだった。
「「「ヴボァァァァ!!!」」」
土埃は晴れる事なく、それどころかデストロイオーガ達が暴れる事によって、更に土埃は巻き上げられる。
ドォンドォンと大地を鳴らす程にデストロイオーガ達の音が聞こえていたが、その騒音も次第に無くなっていった。
「……」
そして、音がしなくなり土埃も晴れはじめる。
「まぁ、これで終わったら拍子抜けもいい所だったよ。……四神の勇者」
全ての土埃が無くなった時、其処にはデストロイオーガ達の死体と全身血塗れの勇者が其処にいた。
「ハァハァ……」
「まぁ、だが……満身創痍って感じだな。最強って言われてる割には大した事無いんじゃないか?」
「う、うる、さ、い」
その言葉に力強さは何も感じられなかった。それ程に消耗したと言う事なのだろう。
「単身乗り込むとか舐めた事するからこうなったんだ。次に活かすと良いぞ? ……次があるなら、なっ!」
魔王が青龍へと一息で距離を詰めてくる。
「!?」
ダメージの影響か、またしても青龍の反応が遅れる。
「確かに普通に戦えば今の我では貴様に勝てない、が、正攻法で貴様に挑む程、我は愚かじゃないさ」
正拳突き、回し蹴り、胴回し蹴りと言った格闘術を駆使して魔王は攻撃を繰り出す。
青龍は血糊で塞がれた狭い視界で何とか攻撃を躱し、風神の力を駆使して反撃を行う。
「そんなにダメージを負って、まだこれだけ動けるのか……」
「僕を舐めるな」
「舐めてないさ。……だからこそ、今のお前を負のループに落としたんだよ」
「何を──」
「──我、求めるは安寧なり。我の安寧を阻む者、それ即ち敵也……。我の手は数多の血で既に塗れている」
今も尚、戦場では血が流れている。
今も尚、青龍から血が流れている。
此処は戦場なのだから。
魔王は余裕の笑みを浮かべている。
この詠唱を完成させてはいけない。
全ての直感が青龍に警鐘鳴らす。
「うぁぁぁぁぁ!!!」
こんな事になるのならば、魔王の言う通り一人で来るべきでは無かった。
こんな事になるのならば、白虎ちゃん達と共に歩む道も残しておくべきだった。
「安寧の為ならば、我が歩む道を幾千もの血で染めよう」
青龍の攻撃を器用に躱しながら、詠唱を紡ぐ魔王。
もう、青龍にコレを止める手立ては無い。
「願わくば、この戦いが最期で在らん事を……。── 血で彩られた世界」
呪文が紡がれた瞬間、戦場に流された血が魔王の右手に集まり出した。
そして、青龍の傷口からも吸われる様に血が流れ出す。
「あ、ぁぁぁぁぁぁ!!!」
急速に奪われる血によって、青龍の意識は遠のき始める。
「お別れだ、勇者よ。他の四神の勇者も、あの世で待っているさ」
その言葉を聞いた時、朦朧とする意識の中、大切な親友との約束を思い出した。
『お互いの幸せの為に頑張ろうね』
『……そうだね、お互い幸せになろう』
あの日あの時、親友は青龍の幸せを願った。
あの日あの時、青龍は親友の幸せを願った。
此処でこんな死に方をするのは幸せなのか? ──違う、本当ならば可愛い我が子や愛しい旦那と、これから共に歩める幸せが有った筈だった……。
ならば、どうしてこうなっているのか?
答えは一つ。
魔王が居るからだ。
「オマエタチ、ガ、イルカラダ!!」
親友と別れたのも、家族に会えないのも、旦那に会えないのも、我が子に会えないのも、自分が戦わされてるのも、故郷に帰れないのも、愛刀が砕けたのも、
コンナ、セカイ、ニ、ショウカン、サレタノモ。
「ゼンブ、オマエガイルカラ!」
全ての理不尽は魔王が居たからだった。
そんな思考に堕ちた青龍は、その怒りを思うがままに魔王に向けたのだった。
「── 怒りの日」
戦場は青龍の怒りに支配された。
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