神話創生 アトラス歴1462年【538年前】4-13
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大会は準優勝者のナギが突如として会場から姿を消す等と一時騒然したが、道化師と呼ばれたナギの演出だろうと大会運営と考え、優勝者を讃える様に閉幕した。
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──その晩、日本語で書かれた手紙によって青龍は呼び出されていた。
「お待たせ?」
人気が無い場所、青龍を呼び出した人物がが彼女より先に待っていた。
「そんなには待ってないよ青龍ちゃん」
フードを深く被っており、一見して誰か分からないが、青龍には此処に来る前からその人物が誰なのか分かっていた。
「……久しぶりだね白虎ちゃん。急に居なくなったから凄く心配したんだよ?」
「ゴメンね……私もそっちに戻れない理由が出来ちゃったんだ」
「そうなの? ……因みにそれは白虎ちゃんの意思で戻らないの?」
「うん。正真正銘私の意思だよ」
「──それなら僕は何も言わないよ」
「それを聞いたって事はやっぱり知ってたんだよね?」
何が? と青龍は聞かず、代わりに無言で返す。
「神永教会のクロード・プロヴィナス・カザマはやっぱり洗脳系能力の持ち主って事なんだね」
「……よく気付けたね」
「何で親友の私には教えてくれなかったの?」
「教えても、僕以外どうしようも出来ないからだよ……」
「どう言う事?」
「クロードの能力は【思考誘導】。──発動条件は対象を認識し、能力を行使する事。僕は風神の力で自身を蜃気楼の様に偽っているから回避出来てるだけだよ……でも白虎ちゃんはそういう事出来ないよね?」
「──うぐっ……それはそうだけど、教えてくれる位良いじゃん!」
「アハハ、ごめんね」
白虎が何時もの調子で青龍に絡む。その見慣れた光景を懐かしみ、思わず笑ってしまう青龍。
「──でもね、クロードに皆が人質にされてたから僕は逆らえないんだ」
青龍以外の勇者は青龍にとって人質として機能していた事を教えられた。
「逆らえば白虎ちゃん達は自害させられるか、それに近しい目に合う。逆を言えばクロードの言う事を聞いてる限り、皆は神永教会保護の元、異世界で不自由無く暮らせる」
「……だとしたら今の状況って青龍ちゃんは私達の側に来れるんじゃない?」
親友である白虎が居らず、玄武は魔王に殺され、朱雀も完全に引き篭もってる現状ならば人族側で青龍が戦う理由は薄い。
「それは無理。……僕にもこの世界で好きな人が出来た。彼を護る為にも僕は人類側で戦う」
「……そっか青龍ちゃんは彼の事、本気なんだね?」
「うん……でもそれを言ったら白虎ちゃんも彼に本気なんでしょ? ナギは何者?」
白虎の性格を把握し、これ迄の状況を整理するとナギは白虎にとって大切な人と云うのは直ぐに理解できた。
「彼は私の旦那様で最強の男です!」
此処にナギがいたら、即座に否定するだろうが残念ながら此処にナギは居ない。
──白虎が偶に壊れる姿を見てきた青龍にとって、このやり取りにも懐かしさを感じるが、
「答えになってないよ……」
「ごめんね。でもその質問には答えられないよ」
「そっか……だったらコレだけは教えて。──貴方達は私の敵になるの?」
青龍は真剣な表情で白虎の瞳を射抜く。
「青龍ちゃん、眼が怖いよ! ──まぁ、真面目に言うと答えはNOだよ。私達の敵は神永教会のクロード。……でもね、それに立ち塞がるなら敵になるかも?」
「……なら安心して。私はファーラスト王国に一度戻り、ミシェルさんに挨拶した後は魔王に決戦を挑むつもり。だから……その間なら神都フリューゲルは手薄になるよ」
「そんな情報教えていいの?」
「いいよ。前に会った時、『勝手に消えた奴に私はどうする事も出来ない!』とかって僕に言ってきたからね」
「……それってド正論なんじゃ……?」
「そうだけど、アイツが僕との約束を破った事には変わりない」
理不尽すぎひん? って単語が頭の中に浮かんだ白虎は大分ナギの影響を受けていた。
「そっかぁ〜。何にせよ、お互いの幸せの為に頑張ろうね」
「……そうだね、お互い幸せになろう」
両者共にコレが今生の別れと予感し、別れを惜しむ様にどちらとも無く抱き合う。
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暫く抱き合った二人は名残惜しそうに身体を離すと、
「それじゃ、私は行くね」
「うん。また、ね? ……白虎ちゃん」
「青龍ちゃん、今迄ありがとう」
そうして白虎は夜の闇へと消えていく。
「…………」
消えた闇を見つめながら青龍が一条の涙を流すと、それを感じ取った様に空からも雨が降り出した。
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