神話創生 アトラス歴1462年【538年前】4-8
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「勝者なんて居ない」
その言葉を聞き、俺の心臓が高鳴った時に奴の魔法が完成した事を実感した。
「くっ……」
俺の体が急に異変に包まれる……。
「……一体何が起こっ……た」
吐き気や震え等の症状が俺を襲う。
「成る程……やっぱりアレが身体に入ってない訳じゃないようだな」
「ハァハァ……俺に何をした」
朦朧とする意識の中、マルチが何をしたのか問うた。
「魔法でお前の状態異常無効を一時的に無効化した」
「なん……だ……と?」
つまり、今の俺は状態異常に罹る状態って事か?
「お前は気付いていただろうが、あの時握手した際お前に俺の毒を流し込んだ。……そしてそれはお前の中にまだ少しだけ残っている様だな? お前は運が良いよ……大分毒素が分解されて死ぬ事は無さそうだ。──しかし、今のお前に俺と戦える程の力があるか? 大人しく降参する事を勧める」
「……俺を毒にした位で調子に乗るなよ……テメェ位捻るのなんて訳ないぜ」
この言葉は嘘だ。マルチの勝ち誇った顔を見ていると、意地でも毒が効いてるなんて思われたくなかった。
だから、
「さっさと来いよ! そのニヤついた顔をボコボコにしてやるよ」
「この顔が気に食わないなら此処まできて殴ればいいさ。──それが出来る程元気ならね」
バレてやがる。
今の俺は正直に言って体調不良MAX状態で歩きたく無い……そして、アイツは俺の現状を正しく理解している。
「俺は医者でね……いや、医者じゃなくても君の顔色を見ればわかるよ。悪い事は言わない……降参するんだ」
「断る。お前の様な奴に負けるのは流石に俺のゴミの様なプライドでも許せんのだわ」
「そうか……なら君をこの観衆が見守る中、派手に倒して決勝へのチケットを手に入れよう」
そう言ったマルチは懐から別の短剣を取り出すと先程と打って変わって攻めの姿勢で突撃してくる。
「はぁ!」
「くっ!? 舐めんな!」
万全な状態ならば躱す事だって訳ない攻撃でも今の俺には重労働だった。
「そらそらそら!」
マルチの短剣による連撃を紙一重で躱す。
そして隙を見つけると其処に併せてカウンターを打ち込むが、
「さっき迄のキレは見る影もないな!」
あっさりと防がれる。
「……くっ!」
マズイ……このままではジリ貧で負ける。
打開するすべは無くはないが……やっぱり正体をバレるのはなぁ……だからと言ってこのままなのもヤバイ。
だったら取る手段は一つ。
「おいマルチ……喜べよ? 今から一瞬だけ本気でやってやるから死ぬ気で死ぬなよ」
「ふん。この状況をどうにか出来るならさっさとやると良いさ……出来るならな!」
「……そうかい。だったら後悔するなよ」
俺は鈍い体に鞭を打ち、バックステップでマルチと大きく距離をとる。
「それじゃあな……」
バックステップで着地すると同時に全身に無理矢理力を入れて大地を蹴る。
大地は爆ぜ、その勢いのまま俺はマルチに突進し殴りつける
「──なっ!?」
マルチはその言葉を発すると、そのまま闘技場の壁に打ち付けられる。
「殴る瞬間、一応手加減してやったから死にはしないだろ? まぁ、それでも重症だろうから自分で治療しな」
俺は勝利宣言と共に右手を掲げると、一瞬の出来事に凍りついていた会場が、
「「「すげぇ!!! 何だよ今の動き!! 地面が割れたぞ!!」」」
大いに盛り上がった。
「ふぅ……アイツが気絶したからなのか魔法は解除されたか……思わぬ苦戦をしちまったぜ」
さてと、次はいよいよ青龍か……って言うかマルチも毒キメれば青龍も倒せたかもしれねぇな。
「ん? 視線を感じると思ったら青龍が俺を見てるな……ここはガツンと決めてやるか」
俺は青龍の方を向くと握り拳を向けてやる。
「勝者ナギ選手!! これにより決勝戦は青龍選手とナギ選手に決まりました!!」
マルチが戦闘不能なのを確認出来た審判がやっと俺の勝利を宣言した。
「「「うぉぉぉぉ!!!! ナギ頑張れよ!!! 決勝でも応援するぜ!!!」」」
盛り上がっている会場を背に俺は東門に戻った。
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