強化魔法Lv0.1が効果反転の呪法になったので強くなれません ~婚約破棄せず結婚できて感謝された聖騎士~
拙作の『蘇生魔法Lv0.1なので生き返すことができません ~世界中の男から感謝された聖女~』の続編となっておりますが、単体でもお楽しみいただけます。
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
いつもの100倍は賑わう城下町。
ピエロは玉乗り、手品師はシルクハットから鳩を飛ばし、楽団はバグパイプでデスメタルを掻き鳴らし、ビアガーデンでは酔っ払いがもう数えるのをやめた乾杯の音頭を取って呑んでいる。
戦争を回避できたのだ。それも国力比から絶対に勝てないと思われた戦争を。
1か月前までは宮廷、軍、騎士団、地方領主、貴族からスラムの住民まで、戦争という絶望の淵にいたがついに危機が去った。
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
それだけではない。今日は国を挙げての慶事である。
学園を卒業された我が国の第2王子が大公家を創設し、隣の大帝国の王族たる公爵令嬢が嫁いできたのだ。
公爵令嬢も学園に留学していたが、なんでも卒業直前の1か月前までどこぞの男爵令嬢が第2皇子にまとわりついていたらしい。
もし第2皇子が愚かにも公爵令嬢を捨て男爵令嬢に靡くようなことになれば、メンツを潰された大帝国からの報復戦争は確実であった。
だが第2王子は不埒な色香に惑わされることなく、幼少のころからの婚約者にして、品行方正で社交界の華、慈善事業で貴族から平民に至るまで人気のあった公爵令嬢を選ばれた。
卒業パーティーにて第2王子から公爵令嬢にあてた真実の愛の告白は、すでに王都の住民なら誰でも知っているセリフである。
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
嗚呼、幸せな結婚をかなえた2人に対し幸多からんことを!!
「楽になさってください。直答も許します。私の父も伯父も祖父も曽祖父も、一族の眩しかった者は皆、貴方たちの祖母殿にはお世話になっていました」
「「きょ、恐縮です」」
「この場においては国籍も爵位も関係ありません。貴方たちの魔法でもって私を助けてはいただけないでしょうか」
世界中の患者を癒し聖女と呼ばれた祖母が亡くなって5年。
祖母は一等勲爵士の三男を婿に迎え俺たち兄妹の父親を産み、60年近い国家への貢献をしてから亡くなった。
そのときには長年の国家、王室への忠勤により死後叙勲で一等勲爵士の位階を得ていた。
聖女の訃報には世界中の患者予備軍と順番待ちが涙を流してその死を哀しんだという。
ハゲの皆さんさぁ・・・
位階年金はなく役職給も王城に呼ばれるためのドレス代などの交際費に消え、父は浪費家ではなかったが俺たち兄妹は食い扶持のため、祖母が亡くなった5年前から冒険者をやっていた。
祖母譲りと思われるクソステのためパーティーに入れず、ひたすらノンアクティブなモンスターを狩り続けて5年かけてようやく達した念願のレベルアップ。
はい、成長限界も祖母譲りでLv2で終わり!閉廷!以上!解散!
だがそれだけならまだ良い。しかし哀れにも俺たちはレベルアップに体質が合わず折角覚えた魔法は効果が反転する呪法となってしまった。
どちらにしろ魔法レベルはクソ雑魚ナメクジなんで冒険者生活が楽にはならなかったが。
「失礼ながら申し上げます公女様。確かに私たち兄妹の祖母は聖女と呼ばれるに相応しい魔法を使えましたが、私たちはLv2で成長限界を迎え覚えた魔法も魔法レベルが低くとても貴きお方のお役に立ちそうにはありません」
「そうです。お兄ちゃ、失礼しました。兄上の言うとおりでして私たちは魔法が体質に合わず効果が反転する呪法となってしまいました」
「あら、そんなことありませんわ。貴方たちの魔法は2人で重ね掛けすることによりとても大きな力になると言えるでしょう」
「お、お戯れを、何を根拠に・・・」
「どの国の高位貴族は聖女様の稀有な魔法の性質から貴方たちのことは冒険者ギルドから逐一報告をもらっていたのですよ。それに今の妹さんのお姿を見れば貴方たちの魔法は聖女様が世界にもたらした以上の国益も想定できます」
「わ、わわわわ私の体型がななななななにか」ぼいーん
「この際はっきりと言いましょう。このままでは第2皇子様はあの男爵令嬢の甘言に惑わされ私を捨ててしまいます。そうなったらメンツのため開戦です。この国は亡びるでしょう」ぺたーん
「ふぇぇぇぇぇ開戦になったら徴兵されて死亡ENDだよぅお兄ちゃん!」ぼいーん
「ですからあのBオンナに勝つために私のAを盛りなさい!貴方たちが盛る!私が勝つ!戦争がなくなる!これ以上にないシアワセの方程式です!」
「こうなったら腹をくくれ妹よ。では魔法を発動するために精神を統一させますゆえどうか身体をこちらにお向けください」
「お祖母ちゃんも同じような気持ちだったのかなぁ・・・」ぼいーん
身体の正面をこちらに向けている公爵令嬢に対して手を伸ばすように精神を統一して魔法発動の態勢をとる。
妹も同じ態勢だ。これはマイナスとマイナスを掛けるとプラスになるように、BADとBADを重ねることによる奇跡なのだ。
「その身に宿りしマナよ防護の加護を増やしたまえ、マイナープロテクション(呪い)」
「光よ弱体化の魔障を消し去りたまえ、デバフディスペル(呪い)」
俺の魔法を受けた公爵令嬢は、下位魔法ゆえに全身ではなく胸部のみの筋肉が盛り上がる。
だが膨れた直後に呪いにより強化魔法から弱体化魔法へと反転されて筋肉が脂肪の塊へと変わってしまった。
追い打ちをかけるように妹の魔法により弱体化魔法への解呪は失敗し、むしろ呪いによってその効果は一時ではなく永続的なものへとなってしまう。
そして魔法の光が収まっていき・・・
ぼいーーーーーん、ぼんっっっ!
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
「妹よだから言ったろう。ぺたーんなお前が急にぼいーんになったら絶対に目を付けられるって」
「うるさい!お兄ちゃんは男だから、女の子だけの深い悲しみをわからないからそんなこと言えるんだ!」
「だけど知りたくなかったな。大公になる第2皇子様がおっ〇い星人だったなんて」
「私も知りたくなかったよ」
「そういや今回の褒章で一等勲爵士から騎士爵位への陞爵と国から聖騎士への称号がもらえるってさ」
「お祖母ちゃんが言ってた囲い込み?」
「だろうね。そしてこうなると次に来るのが・・・」
「失礼します。私は皇太子妃殿下の侍従に御座います。皇太子殿下との間にお世継ぎがまだいないことを憂いた妃殿下からご依頼が御座いますればどうか登城をお願いいたしたく」
「あいや、またれよご両人。私は国王陛下の側室夫人の侍従に御座います。側室夫人からも是非との依頼がありますれば」
「私めは宰相職にして公爵閣下の侍従に御座います。主人は是非ともご両人と聖女様たる祖母様の昔語りをしたいとお茶会へのご招待を」
公園のベンチで話していた俺たちの周りにはいつの間にか王族や高位貴族の侍従を名乗る人だかりがいた。
知りたくなかった。第2皇子だけじゃなくて国王陛下も皇太子も一家揃ってロイヤルおっ〇い星人ファミリーだったなんて知りたくなかった。
侍従たちが順番の言い争いをしている間にふと顔をそむけると、各国の大使らしき人たちも順番で揉めていた。
大使さん、貴方のお仕事は結婚式への出席ですよね。間違っても俺たち兄妹への依頼じゃないですよね!
流石にたかが豊胸のために外国人である俺たちを拉致ったり、貴族位で亡命を促したり、領土や利権のバーター取引になったり、盛る盛らせないで戦争に発展したり、そんなことないよね!
そんなことないよね!(2回目)
なんか旗が高々と昇る光景を幻視した俺たちは精神安定のため現実逃避するのでした。
りぃぃぃぃぃぃぃんごぉぉぉぉぉぉぉぉぉん(ねっとり教会の鐘の音)
嗚呼、幸せな結婚をかなえた2人に対し幸多からんことを!!(2回目)
下級位階メモ
二等勲爵士 準々々々貴族 位階年金なし 地方では名主、都市では町内会会長くらい
一等勲爵士 準々々貴族 位階年金なし 地方では村長、都市では地区長くらい
騎士爵位 準々貴族 位階年金あり 地方では小領主、都市では政府の役職を貰える可能性がある
準男爵位 準貴族 位階年金あり 地方では領主、都市では政府の役職を貰える可能性がある
男爵位 下級貴族 位階年金あり 地方では領主、都市では政府の役職を貰える可能性がある
兄妹の祖母(聖女) 二等勲爵士から死後一等勲爵士へ 生前に聖女の称号もらう
兄妹 一等勲爵士から今回の豊胸呪術で騎士爵位へ 2人ともに聖騎士の称号もらう