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暗闇の中で  作者: しずく
1/1

ひまわりの咲く時には


どこから話しても過去は変わらないというのなら、

いっそのこと、最初から紡げればよいのに

玉結びさえ見当たらない




夏は本を読むにはうってつけだ。

外は暑いから出たくはないし、部屋の中にはゲームもパソコンもある。

その中でもレトロな遊びは本だと思っている。


…うん、単に全部に飽きただけなんだけども。


近年では持ち運びゲーム機というものが流行しているが、当時はそんなものは無かった。

学校では朝の10分間読書が決められている。休み時間は校庭でドッジボール。

雨の日はバトル鉛筆とカードゲーム…体育館が解放されていれば竹の弓を使って弓道だ。

帰る時には学童へ寄らなければならないし、帰り路には駄菓子屋の一つもなかったから

家に直帰してはゲーム三昧・またはパソコン三昧…ネットは当時とーっても高かく

そんなにできなかったから専らタイピングソフトしかしてなかった。


おかげで成長した今でもブラインドタッチはお手の物だ。

それはどうでもいいとして。


そう、ボクはとても暇だったのだ。

本だけは欲しがれば大人は喜んで買い与えたものだからそれが支流の遊び道具だ。

読んでも頭が良くなるわけではない小説なんかがボクの主な読みもの。

お偉いさんのむずかし~い小説なんて読めないし。

読み物として多かったのは怪談ものが多かったかな。

当時はゲゲゲの鬼太○なんかがアニメでも放映していたし、その手の物には事欠かなかった。

怪談・怪奇現象・幽霊番組とかも多かったしね。


当時は新耳○なんかを読みながら涼をとってたかな。

鍵っ子だったし、夜もご飯は無いからコンビニに行くか、大嫌いなプリンを食べるかしかなかった。


日が落ちたら音を最小限に小さくしたテレビしか見ていなかったから

足音が近づいた瞬間に気づいてテレビを消す癖がついてしまっていた。

電気は元よりつけていない。母親との約束だ。


インターフォンが鳴る。


母親には自分が帰るまで誰も通すな。と言われているから開けはしない。

真っ暗な時間帯に来る訪問者。

一応鍵を忘れた母親かもしれないので玄関へ向かう。


足音を立てないように玄関に近づくとじっと見る。

築30年くらいのアパートなので、玄関の下には郵便ポストがついているタイプの玄関。

覗き穴はボクの身長では見えないので、無理に近づく事もしない。

相手もボクが中にいるのかいないのかわからない状態のはずだ。



鳴らすのに飽きたのか、5回くらいでインターフォンが止まる。

「さつきちゃん…さつきちゃん…」

蚊の鳴くような声が聞こえてくる。

他の家には聞こえないように。

郵便受けが開いているからそこから呼んでいるのだろう。

勿論手紙を受け止める箱がくっ付いているので向こうからボクの方は見ることができない。


怖くはない。

だって、そこにいるってことは物理的に入れないからこっちに来ないだけなんだから。

つまりは幽霊でも何でもない。人間ってこと。

ボクはその場に座り込んだ。

壁に寄りかかってずっと声が聞こえる方に顔を向けて悲痛な声を聴いていた。


子供にはどうにも出来ないことを

なんで大人達は押し付けるんだろう。


何度そう考えても答えなんかわかりきっている。

憎悪、その一言だけだ。


(ごめんなさい。)

思ってもいない言葉を浮かべるも口に出さない。

こうやって大人になっていくものなのだろうか。

子供だからどうにもならないという言い訳を並べて


その日もその人を見殺しにした。



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