4、ミアとの束の間の休息
野薔薇平原とは、キュクロープスと戦った魔の森の先にあり、Aランクの冒険者でもそこへ行くには抵抗があるような場所だ。
そんな場所に、超危険モンスターのベヒーモス討伐に加え、オウマ達とどちらが先にベヒーモスを倒すか競いあっていた。
「そろそろ暗くなってくる頃だし、この辺で休憩しよう」
そう言って、【全道具召喚】を使い、【魔除けの灯火】を取り出した。
「これでよほど強い魔物じゃなければ近くの魔物は寄ってこないから安心して休もう」
俺は、他にもキャンプアイテムなどを取り出す。
「すんっっごぉぉおおい!!!町の外でこんなにゆっくりできるなんて思わなかったよ!さすがウグルだね!」
俺が取り出した【高級ハンモック】や【高級テント】をみて、目をキラキラさせながらミアは言う。
「そんなことないって、とりあえず明日に備えて今日は休もう。ミアはその【高級テント】で好きに過ごしてていいからな」
「もぅ〜、謙虚だな〜ウグルは。ありがとね!ウグルも寂しくなったらテントの中入ってきていいからね」
「いやいやいや!入らないからね!人をからかうんじゃありません!俺はハンモックで外の見張りもするから!」
「別にウグルならいいんだけどな……」
「ん?何か言った?ミア」
「ん、んん!なんでもないよ!」
ボソボソっと、何かを言っていたようだったが、ちゃんと聞き取ることができなかった。
そして、一夜が明けた。
「ーーふぁ〜〜、よく寝た……ってミア!?」
なにか、体に違和感があると思ったら狭いハンモックなのにも関わらず、ミアが俺の隣で寝ていたのだ。
「ちょ、ミアさん?!これはまずいって!しかもぜんっぜんっ離してくれない!!」
腕を強引に掴まれ、起きあがろうにも起き上がらせてくれない。
それどころか、ミアの胸が腕に……
「うわぁぁ!!ミア〜〜!!起きてくれ〜〜!!!頼む〜〜!!」
強引に起きあがろうとしたその時、ハンモックが回転し2人して地面に転げ落ちてしまった。
「いててて……ミア、大丈夫か?」
「ん?ふぁあ〜おはようウグルぅぅ〜、あれ?なんで私地面で寝てるんだろぉ〜」
寝ぼけてるのか状況を理解していないらしいので、ミアのためにもこのことは黙っておこうと思った。
ーー準備を整え、野薔薇平原へ足を運ぶ。
「少し出遅れたかもしれないから、少し急ごうかミア」
「にゃぁ〜ごめんねぇ〜私朝苦手なの言い忘れてたよ〜」
「ははっ!気にしてないよ!それより髪の毛に寝癖がまだついてるぞ?」
「にゃにゃ?!」
"わしゃわしゃ"と髪の毛を強引に溶かす姿を見て少しほっこりしてしまった。
恥ずかしかったのか話題を変えるミア。
「そ、そういえばさ、私の第1印象ってどんなだったの?」
「ミアの第一印象かぁ〜、正直傷だらけでそれどころじゃなかったけど、獣人は獣人でも虎の獣人は見たことないからなんだか新鮮な印象だったかな〜」
本音は今まで見た獣人の中でずば抜けて可愛いし、俺と同い年ぐらいで二十歳ぐらいにしては豊満な身体が……
先程腕に当たっていた胸の感覚が忘れられず、頭をブンブン振り、紛らわせようとする。
「そっかぁ〜、確かに虎の獣人さんはあんまりいないからねぇ〜、私も気を失っててそれどころじゃなかったけど、ウグルは普通がよく似合うよね!」
それは第1印象なのか?とツッコミを入れたくなったが、正直俺自身もなんの取り柄もない普通の人間だと思っているので、つっこめなかった。
「でも、ウグルの能力はすごい!ほんとにすごい!しかも使ったこともないアイテムで勝てるかもわからないのに、見ず知らずの私を助けてくれたのはすごくかっこよかったよ!だから第1印象はかっこいいだね!!」
いきなりの褒め言葉に俺は、気恥ずかしさで顔が赤くなっていることだろう。
そんなたわいも無い話をしていると、気付けば『野薔薇平原』にたどり着いていた。
あたり一面には数え切れないほどの薔薇が咲いていて、とても美しい景色だ。
「うわぁ〜!!すごいねウグル!!こんなにいっぱいの薔薇の花束を渡されたら、嬉しくてなんでもしてあげたくなっちゃうね!」
「なんでもはしなくていいけど、はいこれあげる」
俺はミアに、5本の薔薇を花束にして渡した。
「え〜5本だけなのぉ〜?ウグルぅ〜」
ぷく〜と頬を膨らませ、すこし不服な顔をしているミア。
「知ってるか?薔薇には本数と色で別々な花言葉があるんだぞ?」
「え?そうなの?じゃあこの真っ赤で綺麗な薔薇が5本はどういうことなのかにゃ?」
「それは内緒だよ」
人差し指を鼻に寄せ、意地悪な笑顔をミアに向ける。
「む〜!ウグルが意地悪になった〜」
綺麗な薔薇の風景に、晴れた日の空。
そしてミアがいる、それだけで追放されたことなど忘れて、心から笑顔が溢れていた。
しかし、楽しい時間はあっという間におわる。
"ズドォーン"
遠くの方でとても大きな轟音が響いてきたのだ。
「おっと!やっぱり先を越されてたな、多分オウマ達だ!急ごうミア!」
「そうだね!負けたら土下座なんて絶ッッ対嫌だし!!ウグルの力でサクッと倒しちゃおっ!」
こうして、俺らは轟音のする方へと向かうのであった。
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