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5/15

わたくし漁は大量に大漁でしたことよ

そして、1時間ほどで船長がイカリをあげましたことよ。ストップ獲れ高でございます。


はい?


なぜ、釣り上げるところを端折ったか?


それは、ご自分の目で見てくださいまし。なんと、大量に大漁もいいところ、たくさん釣れたではありませんか。


ただ。やはり、異世界の魚。魚はサカナでも、わたくしの元いた世界のさかなとは少し、異なっているようでございます。


ですから、わたくし、ノートを取り出して、さっそくメモりました。


バゴネスリ→マグロ

ダンドンド→ハマチ

ディアンネルダーバン→タイ

ピチュピチュマイ→シャケ

ブイブイ→エビ

ダガボ→イカ

マットゥンダ→ツブ貝


と。


強引に、名付けてみました。ほぼ、見かけで。


こう解釈すれば、間違いないという、辞書のようなものでございます。


そして、この漁船を船長や船員ごと、まるごと買収することにしたのです。

もちろん資金は、エビダスさまより頂戴いたしております。


ポケットから現金を出し、領収書を切っていただきました。


以下、その内訳。



❇︎❇︎〜領収書〜❇︎❇︎


漁船買取額 50000 ガリ

船長手当 200 ガリ

船員手当 150 ガリ× 2名

燃料費(前払い) 月48 ガリ



そして、契約。


漁船は、『スシゴテンマル』と命名し、皇室御用達の漁船といたしました。


わたくしの、初めての財産でございます。






ただ。その半年後のことでございました。


わたくしが、漁船で釣った魚をさばいてさばいてさばき倒していましたところ、あまりのその忙しさに、エビダスさまのことをすっかり忘れ申し上げており。


痛恨のミス。



「スシノ=カズハ=ヤーリイーカ、第三王子エビダスとの婚約を解消し、第ニ王子マグローニと婚約関係を結ぶことを、ここに宣言する」


父王さまの朗々とした声が、大広間に響き渡ります。


「……はい、承知いたしました」


とは言ったものの。


実はその少し前、エビダスさまより直々に、


「スシノ、私との婚約を解消してくれ。何度となくプロポーズしたのにもかかわらず、一度も振り向いてくれなかったおまえよりも、もっと好きな人ができてしまったのだ。すまない、スシノ。私を許して欲しい」


さすがに胸が、ちくちくっと痛みました。


もちろん、婚約者であったエビダスさまを放っておいて、漁場ばかりに足を運んでいたわたくしが、どう考えても悪いのでございます。


魚を寿司ネタとして、どのように刺身におろすか。こればかりに、気を取られてしまっていたものですから。


色恋には疎い、わたくし。これは、元の世界でも同じでございました。

恋愛に向かない、わたくし。クリスマスの前日に振られるなど、何度も寂しい思いをしたものでございます。


振られるのには多少、慣れてはおりましたが、けれど、流石にこの日はショックでございました。

さばいたネタで作ったお寿司を、いつもなら50貫はペロリでございますのに、この日はたった33貫。


確かにわたくし、回転寿司をチェーン展開すべく、資金集めで上へ上へと上り詰めねばならない身、ゆくゆくは父王さまのお妃さまとして、そして回転寿司のオーナーとして、この城に君臨する日を夢見ておりますが。


ただ、エビダスさまはわたくしを、好きだと言ってくださった。

結婚して欲しいと、言ってくださった。


ただ、形だけの婚約者であるはずのわたくしを、一目惚れしたと愛してくださった。


情が湧いて胸に痛みを感じてしまうのは、致し方ないことであるのかもしれません。


けれど、いつまでも引きずっているわけには参りません。


わたくしには、この世界を回転寿司店でいっぱいにする、そんな野望があるものですから。


さあ、あと一歩です。


正式に、第二王子マグローニ殿下の婚約者となったあかつきには、米農家との契約を結ぶ算段も持っておりましてよ。


わたくしは、懐に秘めている計画書を、そっと手で押さえました。



ほほほほほほ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 大義のためには犠牲はつきものですね。 ちょっとしみじみでしたが海鮮が手に入ったならもう残すパーツもあと少し。 わくわくが続く展開にソワソワしてます(笑)
[一言] 私、二十代の頃、33貫は多分食べたことがあります(回転寿司17皿)。 しかし、50貫はないですw 次はシャリ編? 醤油編はあるのでしょうか?
[一言] 33貫食べれるなら大丈夫!www
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