わたくしついに漁に出ますことよ
皆さま、ごきげんよう。
本日は、海へのお供にお付き合いくださり、ありがとうございます。
日焼け止めクリームはもう塗りましたか?
海は陽射しが強うございます。日焼けは人類の天敵でございます。どうぞお気をつけくださいまし。
っていうか、わたくし。
ここが異世界ということを、すっかり忘れていたのですね。やってしまいました。が、舌をぺろりと出しつつ、てへ。とやるのは断じてプライドが許しません。オーマイガーなら良し。ですけれど。
船が。あ、ここで言う船とは、もちろん漁船のことですわ。
わたくし、漁船と言ったら、ポンポン船かなあなんて、それくらいに思っておりました。
けれど、この異世界では。海へと出航するのに、空を飛ぶのですね?
え? 海なのに空? まったくもって意味不でございます。
けれど、その理由、すぐにわかりましてよ。
どうやらこの世界、空に海の国が存在するのです。
空に? 空に。
海が? 海が。
空に海が? 空に海がっ。
漁船に乗って、空を飛んでいって、そこにある海の国で釣り糸を垂らし、魚を釣り上げる。
海が、空に浮かべた水たまりのように、浮いているわけなんですね。これはもう驚きを通り越して、驚愕、としか言いようがございませんもの。
釣った魚が鳥だった、なんてことにはならないでしょうね? これには不安しかありませんことよ。
「はああ? なにを心配してんだあ、お嬢ちゃんはあ。魚が鳥だって? ちょっとなに言ってるのかわかんねえけんども。魚はサカナ、さかなだべ」
船長さんがそう言いましてよ。なので、一緒に出航してみます。この目でネタを確かめるまでは、一切の信用も妥協も許さない、という強い意思を持って。
いざ、出航!
飛行機の翼がついた、漁船。そのままのフォルムと想像していただいて結構です。漁船は最初こそ、ふらふらしていましたが、そのうちに揺れも落ち着き、颯爽と飛んでいきますわ。
まるでイスカ◯ダルへと向かっていく、戦艦ヤ◯トのように。あぁあ。なんとも、わかりやすい例えですが、おわかりになられます? 年代バレと引き換えの苦行ではございますが、この完璧なまでの例えを使わない手はありませんことよ。助かりますわ。ほほほほほ。
「さ、ここからは海の国カイテイシーに入るんべ。あんた、パスポート持ってるかい?」
持っていましてよ。
このパスポートは、エビダスさまが直筆で、『第三王子の婚約者であることを証明する』と書かれたもの。
え? こんなんでいいの? 偽造できそう、とは思いましたが、わたくしが元いた世界でも、まあこんなもんでございましたからいいでしょう。
検問所でパスポートを見せ、通過。そして、半時間ほど進みましたところに、広大に広がる海を目の前にして、わたくしは興奮を抑えられないほど、昂ぶってしまいました。
目の前に広がる広大な海!
それはすなわち、寿司ネタの宝庫!
「ついたべ、お嬢ちゃん。さあ、糸を垂らすぞい」
ははあ。なるほどでございます。釣り道具は、わたくしの世界のものとあまり変わらないようですね。
漁船の船員のお方たちが、次々に糸を垂らしていきます。一本釣りのスタイル。
わたくし、今日は見学のみにて失礼致しております。
なぜなら。
船酔いです。おえええぇ。おほほほほほ。