わたくしにまさかまさかの求婚です
❇︎❇︎〜計画書〜❇︎❇︎
第三王子 → 漁船スシゴテンマルの購入管理 済
第二王子 → 米農家コマチサンとの契約 仮おさえ
第一王子 → 回転寿司『転生寿司』の設計建築 設計図あり
王 → チェーン店の全国展開
座右の銘 『お寿司のためならどこへでも!』
好きな言葉 『へいらっしゃい! 』
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時間は少し遡りましてよ。
わたくしが第三王子、エビダスさまと婚約をさせていただいた時代の話でございます。
「スシノ、君と婚約できて光栄に思う。イクラスの婚約者であったおまえを横取りする形になってしまったが、私は幸せだ。父上には感謝せねばなるまい」
「幸せ、でございますか。それは、なぜですの?」
確かに、わたくしは第四王子の婚約者ではありましたが、普段エビダスさまとはあまり接点はありませんでしたので、不思議に思いました次第です。
「そ、それはだな、まあ。……おまえがイクラスの婚約者となった時に、ひ、一目惚れというヤツを」
ほっほう。ヒトメボレですか。そんなお米もありました。ねばりが強いので、寿司飯には向かないのかもしれませんが、おにぎりとしては最高でございます。
「そうだったのでございますか。けれど、殿下はハラミー皇女と結婚のお約束をされていらっしゃいましたね」
「あれは、父上が取り決めたことだ。私には母がいない。だから、父上は早めに婚約者を王子たちにと、片っ端から当てがっていくものだから、その……」
「はい?」
「……は、配置が、ころころ変わるのだ」
「配置?」
わたくしがわかっておらず、首を傾げていますと、エビダスさまがそれはそれは言いにくそうに、顔をしかめながら仰いましてよ。
「こ、婚約者の……その、ローリング、みたいな」
ローリング? 回転ということでしょうか?
なるほど、回転寿司のように婚約者を回し、婚約者と王子の相性を見ている、というわけですか。
確かに!
確かに、このわたくしめも、第八王子ヒラメルさまより一段階ずつ、ステップアップでございました。それには、そのような目的があったわけでございますね。
なるほど〜。回転を用いるとは、父王さま、話がわかる〜。それはなかなかの良いアイデアグッジョブです。
確かに、軍艦や握り、巻き、ひいてはこぼれ系、あふれ系などなど。自分に合った食し方があるということは、言わずもがな。指にシャリがくっつくのが嫌、海苔が上あごにくっつくのが嫌、醤油の染み込む速度が速い、などさまざまでございますものね。
父王さま、その気持ち、よくわかりましてよ。ほほほ。
わたくしが、そのようなことで頭をいっぱいにし、熟考しておりましたら。
「だが、スシノ。私はおまえとは最終的には結婚まで至りたい、そう思っている。だから、婚約者がまた変わってしまわないうちに、おまえとその……添い遂げたいと思っているのだ」
え。
「スシノっ、愛してるっ。私と結婚してくれっっ」
お待ちくださいまし。昨日、いえ。おととい、婚約したばかりでございますよ。
わたくしはひとつ、ため息をつきました。できるだけ長く、そしてできるだけ、呆れた顔をして。
「はああ」
あら、エビダスさま。そのお顔はなんとやら。わたくしの、歪みに歪んだ呆れ顔の意味をおわかりになってくださいましたか?
「エビダスさま。耳をかっぽじってよくお聞きください。わたくしには、結婚の前に、やるべきことがあるのです。そのやるべきことが達成できないようであれば、わたくしはエビダスさまと結婚することなどできませぬ。どうぞ、エビダスさまもご協力くださいませんか。結婚は、そのあとということに致しましょう」
「な、なんだ? そのやるべきこととは? なんでも言ってみろ。私が叶えてやる。なにか欲しいものでもあるのか? おまえと結婚できるなら、金に糸目はつけんぞ」
財力!
わたくしが、歪んでおりました顔を以前のようにまずまずの麗しい顔へと戻すと、引き気味でありましたエビダスさまは、少しほっとした様子で、顔を近づけてきました。
「おまえと結婚したいのだ」
真剣なお顔です。
ですから、わたくしも真剣にお答えしました。
「わかりました。それでは参りましょう。さあ、エビダスさま、海へっ! 海へいざゆかんっ!」
さあ、わたくしの野望、スタートでございます。
海えぇぇぇぇええええ!
ほほほ。