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わたくし「寿司あるところにスシノあり」でございます


ドンドンカンカンドンカンカン。


わたくしは、太陽を背にした建築物、いわゆる『転生寿司』の建築現場に来ております。


あちこちから、なにかを叩く音、なにかをひっぱりあげる音、なにかを引きずる音などなど。


ドンドンカンカンドンカンカン。


クレーンのようなものが、資材を高く高くへと引き上げていきます。そんなクレーンの先から、太陽の光が、数の子のようにキラキラと射し込んでいます。


「カズハー!」


あら、手を上げてこちらへと走っていらっしゃいますのは。


「ホタテムンドさまあ!」


わたくしも建築費を出してもらう手前、良い感じな婚約者ってな感じで、手を振って差し上げます。


「はあはあ、カズハ、ようやく会議が終わったよ。まったく、セバスメシチャンがなかなか離してくれなくてな」


「まあ、大切なお話だったのではないですか?」


「いや、良いのだ。カッパースシ国の隣国、クラクラ国が、戦の準備をしているとの話だったんだが、マグローニはタラモ姫とラブラブチュッチュで欠席だし、エビダスはまああいつは宰相だからな、アボガド&スライスオニオンがなんだー、マヨネーズ&チーズがなんだーなどと言っておったが、ちょっとなに言ってるかわからなかったものだから、もういいやって強制的にPCとプロジェクターの電源を切ってきたよ」


え? 隣国が戦の準備をしているという時に? PCの電源を? でございますか?


「ホタテムンドさま。すぐに会議を再招集なされませ。これは有事。有事でございますわ」


「な、カズハ。キミの回転寿司店を作り上げることが最優先だ。俺は問いたい! それ以上に大事なことが、この世にはあるのか⁉︎ 」


ある!


戦争になったらどうすんねん! 寿司寿司言っとる場合じゃなかろうもんねや! (異世界オリジナル方言)


「さあさ、早く召集するのでございます! そして、イクラ砲とユッケ軍のご準備を!」




……本当に良かったと、


……心から、


……そう思う日が来るとは。




歴史書朗読


こうしてカッパースシ国とクラクラ国との戦争は、開戦(海鮮)した。だが、カッパースシ国の国王と第一王子ホタテムンドの早急なる発案によって用意されたイクラ砲と自国ユッケ軍によって、敵国であるクラクラ国を撃退。こうして、二国間によって国境を新たにするカッパー=クラ平和条約が結ばれた。カッパースシ国はその後、政治の基本方針を転換し、オリジナルな平和への希求によって、貿易を中心とする中立国として繁栄していくこととなった。クラクラ国の主要産物、まろやかなコクが売りの『ヨツカン酢』を大量に輸入。そしてカッパースシ国より『寿司 SUSHI』を連続して輸出。オリジナルな平和の希求により、輸出入の取り引きの方へと競争原理を展開していった。

だがそれだけではない。先の大戦の際、イクラ砲とユッケ軍を指揮した最高司令官でもあったホタテムンドを陰より支えた女軍師がいた、という伝説が残されていることを忘れてはいけない。戦争の勝利に加え平和条約の締結に尽力し、その功績を称えられ、女軍師の好物から二文字取って寿司軍師と、民衆からは親しみをもって呼ばれることとなる。ことわざ「寿司あるところにスシノあり」はこれを起源とするとされている。



……名誉なことでございます。


……心から、良かったと。


……ホタテムンドさまのお尻を蹴り上げ、貝殻を割ってみせた甲斐がありました。貝だけに。


けれど。


あの時は本当に、焦ってしまいましたわ。





ここからスシノの回想


「転生寿司」のハコモノがようやく完成、出来上がりますわよー、というそのすんでのところで、隣国クラクラ国との戦争が、開戦してしまいましたのでございます。


もう少しで、回転寿司チェーン展開どころの騒ぎでなくなるところでございました。


わたくし、心からヤヴァイと思いました次第でございます。こんな危機的状況、ございまして?


平和ボケしたホタテさんが、PCの電源切ってやったぞーなどとパクパクと笑いながら海中をフラフラ浮遊しているお姿を拝見しまして、わたくし。さらに、ヤッベーなコレ、そう思ったのも頷けますでしょう?


国と国との外交は、女性にとっての婚姻問題に等しいほどの修羅場、いわゆる弱スシ強食の世界でございます! 喰うか喰われるかの戦いでございますよ! と。


わたくし、そう言ってホタテムンドさまの横っ面を、この手で張ったのでございます。


パシン。


乾いた音が響き渡りました。

ホタテムンドさまは、頬を押さえたまま、わたくしを焦り顔で、じっと見つめてこられます。


「な、なにをするのだ、スシノっ」


「いい加減、目をお覚ましになられてください! クラクラ国から、このカッパースシ国の民(厳密に言うと回転寿司店)を守らねばなりませぬ!」


「す、スシノ……そ、そうだ、そうだな。俺はようやく目が覚めた。教えてくれ、スシノ。俺はいったい、なにをしたらいい?」


わたくし、こう答えましたことよ。


「ホタテムンドさま。いいですか、これは有事でございます。いま一度、貝ひもを引き締めて、この有事に取り組まれてください」


そして、わたくしの指示で、漁船「スシゴテンマル」へ、イクラ砲を搭載。ホタテムンドさまは漁船で全軍を指揮いたします。その後ろには、ユッケ軍。(漁船をレンタル)


空からクラクラ国へと大量の大粒イクラを落とす作戦でございます。


「⁉︎ なんだこれはっ⁉︎ くそっっ、潰れたイクラがベトベトで足をとられるっっ」


敵軍壊滅。


そうして、クラクラ国は、ぐうの音も出ないということで、白旗を揚げられました。


ちゃんちゃんでございます。


ふー。


あっぶね。


ただ。


このような有事以外で、食べ物を粗末にしてはいけませんことよ。


(後ほどスタッフが美味しくいただき……ました……イクラ丼にして)


次回、回転寿司『転生寿司』、開店(回転)でございます!






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― 新着の感想 ―
[良い点]  そしてスシロー帝国が立ちはだかるのですね(笑) [一言]  面白いです!
[一言] ホタテめ、前話でもそうでしたがこのやろうめ。 お前みたいなポンコツはイクラ砲の餌食にしてくれるわ! そして後処理は是非私めが。私がイクラ丼として美味しく食させていただくわ! ああ……イク…
[一言] >(後ほどスタッフが美味しくいただき……ました……イクラ丼にして) ウマイ! > ( '༥' )ŧ‹”ŧ‹” ←スタッフ(私) イクラ丼ならいくらでも! イクラだけに!
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