わたくしトラップに気づきませんでしたことよ
ここは、第一王子ホタテムンドさまの自室でございます。
その中に招き入れられ、そしてホタテムンドさまはなにやら金庫のようなものをお持ちになったのでございます。
「ホタテムンドさま、これはいったい何ですの?」
「これを見れば、あなたも記憶を取り戻し、俺を思い出すかもしれない」
「?」
わたくしは、頭の上にハテナをたくさん並べましたことよ。いったいホタテムンドさまは何を仰られているのか。
金庫のダイヤルをうやうやしく回します。
右に1回、左に1回、右に1回にて解錠。なるほどでございます。寿司の日「11月1日」でございますね。しかし、暗証番号としては、失格の数字。指導!
そして、パカっと蓋を開けましたところ。
「えええっっ、こ、こ、これはっっ!」
「スシノ殿、これで俺のことを思い出してくれるだろうね」
わたくしは絶句してしまいました。
金庫の中身に手を伸ばします。けれど、伸ばした手がどうしても震えてしまうのでございます。
「……あなたは、海馬志羅篤志さんですね?」
ホタテムンドさまが、苦々しく笑いながら、わたくしの頬に手を当てました。
「ようやく、思い出してくれたね。あの日、俺はキミに会い恋に落ちた。キミが、あのスシノカズハちゃんだと分かったのは、第四王子イクラスの婚約者に選ばれた時だった」
ホタテムンド氏の回想
「なんだ、また父上は婚約者のローリングを行うというのか。そのためにいちいち呼び出されるのは、かなわないな」
「しかしですね。ホタテムンドさま。最終的にはその中のご婚約者さまの中から、選別しなければなりません。どうぞ、しちめんどくさいなどと仰らず、ご婚約者さまをお見定めください」
「だがな、セバスメシチャン。お前には言ってはおらぬが、俺にはもう心に決めた女性がいるのだ。心を奪われ、そして愛した女性。あの人のことを考えるだけで、今でもこの胸が高鳴ってくる」
「それはなにやら怪しい夢のお話でございますね?」
「夢ではないと何度も言っておるであろう! お前もなかなかの頑固者だ、な……はっ!」
「ホタテムンドさま、どうされましたか?」
「せ、セバスメシチャン、あ、あ、あそこで佇んでいる、じょ、女性は?」
「あのお方は、第四王子イクラスさまのご婚約者さま、スシノ=カズハ=ヤーリイーカさまでございます」
「いや! いや違う! あの方は、スシノカズハちゃん、すなわち鮨野数羽ちゃんだっっ! セバスメシチャン、すぐにあの方を紹介してくれっっ!」
「ホタテムンドさま、いかにお知り合いのお嬢さまとはいえ、現在は第四王子イクラスさまのご婚約者さまです。それにホタテムンドさまには、サヨリ姫という立派なご婚約者さまが……」
「ああっ、行ってしまうっ、カズハちゃんっ、カズハちゃんっっっ!」
ホタテムンド氏の回想終わり
「とまあ、俺は俺の婚約者となってくれるまで、キミをずっと待っていた。本当に、久しぶりだね。カズハちゃん」
さあ、大変なことになってしまいました。カッパースシ国の国王さまの妃の座を狙っておりましたところ、このような思いも寄らないトラップがあるとは。
次回、「暴かれる秘密」。
ぜってー見てくれよなっ!




