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SSSS年S月SS日人類はーーーー

作者: ちゃばしら

ーーSSSS年S月SS日ーー





女「人類の皆様、こんにちは。」



女「私の名前は女。今世紀を代表する科学者の一人です。


今日は私に、このような時間と場を設けてくださったことを、心より感謝申し上げます。」






女「さて、


まずは一度、振り返りましょうか



我々人類が築き上げた、偉大な一つの歴史をーー。








XXXX万年前


私たち人類はこの、“世にも”不思議な世界に誕生しました。




その生に特別な理由はない。

偶然なのか、あるいは必然なのか。

必要なのか、意味のないものだったのか。



もしくはきっと、そのような表現を考えることこそ間違いかもしれない。


私達人間が言うなら、


“美しき出来事”などの表現に、

とどめるのがよいででょう。」





女「我々の祖先は、その発達した知能によって


道具を生み出し、狩を覚え

言語を生み出し、社会をつくり


科学を生み出し、生活を築き上げた。



科学という、強力な道具を使ってあらゆる工夫をこらし

この世界で生き残っていきました。」





女「やがて生態系のトップに君臨し、争う相手は動物から同じ人間へと変わった代わりに、大きな文明を築き上げました。



科学はその時も、人類の文明社会に大きな飛躍を与え続けていました。



しかし、科学に活きる、

いわゆる科学者たちの志は、初めの頃とは少し、変わっていました。」





女「科学者たちは世の中を、事細かに観察していたことで

あることに気づき始めていました。



世で起きた全ての事象には、必ず過去に原因となる事象が存在する。

“風が吹けば桶屋が儲かる”、“ブラジルでの蝶の羽ばたきが、テキサスで竜巻を引き起こす引き金になる”




現在に起きた出来事は、過去に起きた全ての出来事から、まるでドミノのように連鎖した結果、起きたことなのです。



そう、つまりはーーーーー







記者「全てのことは、必然であると....?」


ーー1XXX年X月XX日ーー



男「その通りだ。


宇宙が誕生した瞬間に、全てのことは決まっていたのだ。



物質ができ、星が生まれ、太陽が、月が地球が、生まれることも。生物の誕生も、人類の発展も、この私が生まれることも。

今日君が、私に取材をすることもね。



運命は決まっている。


そういう意味で、この世界は必然、そして偶然などありえないと言うべきかもしれないな。

これから起きることも、何であろうとすでに決まっていたのだ。


私達が、今見ている視点より、もっともっと広く大きな視点で物事を見ることができたら、世界観というのはきっと一変するのだろうな...」



記者「はぁ....。言いたいことは分からなくもありませんが...。

しかしそれが

先生が科学者になったのと、何の関係が...」



男「少し脱線してしまったが、...


分からないのかい?

全てのことは過去から“きている”のだよ?

今までの出来事に、これから起こる出来事への手がかりが残っているのだよ。当然私達は、それを知ることができる。


つまり予測が可能なんだ。



この世界には、全てのことに共通する“法則”があるのだよ。



私が科学者になったのは他でもない、

この法則を見つけ出すためさ。


いや、私だけでなく

これは全ての科学者にとっての最終目標と言えるだろう。」



記者「....そんな事本当にできるんすか」



男「さあ、分からない。

少なくとも私達が、私達の代で成し遂げることは、きっと不可能だろう。


だから私達には

今までの全てを、次の世代に次の世代に、託す義務があるのだよ。



いつのことかは分からない。

でもきっとだ。必ず、その瞬間は訪れる。


遠い遠い、今は遠い未来にーーーーーー






女「誰かが、解き明かすと信じて。



科学者たちは未来に、科学を繋ぎ続けた。

紐解き分かったこと、そして出てきた分からないこと。


今までの全てを、後世へと繋ぎ続けた。



それはもう、生活や文明に工夫をもたらすため、存続のための道具ゆえではありません。



知的好奇心という名の、人の心一つだったのです。」





女「何百年何千年、何億人何十億人と、未来へ未来へ繋ぎ続け


ついに科学は、

私に最後のバトンを渡しました。」





女「私はここに、


科学という学問、歴史に終止符が打たれたことを、声明しま

す。」





女「私は見つけた、この世の全てとも言える法則に


無限eternalの頭文字をとって、

“eー定式”と名付けました。




私達人類は、始まりと終わり、生と死によって縛られた有限な生物でした。


しかし我々は、有限な縛りをいくつもいつまでも託し、繋ぎ続け、

そしてこの世界そのものを手にすることに成功しました。



私達には全てが分かります。

過去も未来も。まだ見ぬ世界も。この世界全ての実態を。人類が生まれた意味も、手に入れました。




もう私達は、有限ではない。


この世界で唯一の、無限の存在へと、足を踏み入れるに至ったのです。
















































しかし、


果たしてそれで良いのでしょうか??」






女「私達には確かに、全てを手にする権利を与えられた。


その権利はまちがいなく、私達が“勝ち取った”ものであり、

私達がその扉を開くのは、全く間違いではないことと言えるでしょう。




しかし、この一線を期に、きっと人間は人間ではなくなります。」





女「全てを手にいれた私達は、

“私達”と言えるのでしょうか。



私達が勝ち取った権利を手にいれた存在は、もはや私達と同じ存在といえるのでしょうか。






この法則を見つけ出したのは




有限の存在でありながら、


それでも尚、


好奇心に全てをかけて探求し、


人間ができるすべてを行使した、


私達人間の功績です。




そう、

“科学とは、人類のもつ好奇心による産物である。”


私はこれを一貫したいのです。」











女「これは私の持論ですが、



人生に意味を与えうるのは

正しさではなく、人間の人間たる由縁である美しさです。





この世の全てを手にした者が、



このような理由で、それを手放したとなれば、



存在しないはずの神も思わず雲から顔をだし、


こう叫ぶことでしょう。」






なんて、美しい生き物なのだと


























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