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06_ということでご一緒に。ヒナプロジェクトさん、ありがとう


 ここにきて、ようやくこのエッセイの本題になる。

 利用者の以降など無視し、「小説になろう」というサイト、管理運営を行うヒナプロジェクトという会社の立場でワガママを通すなら、このサイトはどういう形になるか考えてみよう。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 テンプレばかりの現状については、歓迎すると同時に危惧もしている。

 これは当たり前の話だ。イチ利用者の立場では考えないが、当事者であるヒナプロジェクト関係者は、当然として考えているはず。


 「小説になろう/読もう」といったサイトは、素人作者が投稿した異世界ファンタジーがウケて今の形がある。これは否定しようがない現実だ。

 それはそれとして、問題なのはこれから。

 異世界ファンタジー歓迎という新規利用者増は、ほぼ上げ止まりで、これ以上見込めないだろう。イチ利用者には具体的な数字は見えないが、大手出版社による類似投稿サイトの登場などで、既に利用者や広告収益は減少傾向にあると推測する。


 現状から更に企業として成長しようと思えば、新たな事業という手段もあるが、それはそれとして、このサイトでテンプレ好き以外の利用者を増やすのが一番手っ取り早い。

 安直な異世界モノを好む読者も、別ジャンルの作品を好む読者も、双方とも楽しめるのが理想形だ。 


 今後ベストなのは、異世界ファンタジー歓迎な今の読者層を取り込んだままの新利用者増だが、現実には別ジャンルの作品が台頭してきたら、それまでの読者層は減っていってしまう。

 減らすことなくどうやって増やすか。ジャンル再編やアンケート調査などで、その苦慮が(うかが)い知ることはできる。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 対して、批判の是非についてだが。

 批判禁止の方針をサイトが採ることは、ありえないと考える。色々と考えてみたが、(くつがえ)す要素が見当たらない。

 素人作者の頑張りを否定したくないという、個人の感情論は存在したとしても、企業としての考え方の前には(かす)んでしまう。


 投稿されている作品は、質が高ければ高いほど、サイトにとって都合がいい。

 作品タイトルをクリックすれば、「なんでこんな作品が世に出てなかったの?」「このジャンル読んだことないけど面白い!」と思える作品ばかりが並び、読者が全員満足できるのが、究極的な理想形だ。

 現実にはそんなことは不可能で、作者のワガママ「とにかく評価されたい」が、批判の是非に結びついてしまっているが、そもそも創作初体験の素人作者全員でも、読者誰もが楽しめる高レベルの作品をスラスラ書けさえすれば、そんなことに悩む必要性はない。


 ラノベなんて読んだことない一般層にも知られている、芥川賞・直木賞・本屋大賞といった受賞作が、このサイトから出てみろ?

 いやいや、ノーベル文学賞とかこのサイトに出てみろ?

 これ以上を望めない宣伝効果だ。世界的にも存在が周知され、ちゃんと翻訳元からも収益を上げられる仕組みを作って、世界中に公開できれば、株式上場も夢ではない。


 まぁ、これは努力目標としても、ちょっとありえないが、本題はそこではない。


 批判を禁止する方針を採ったとすると、理想に近づくためのクオリティ向上どころか、現状維持すら怪しい。

 作者よりも読者が遙かに多いので、サイトの状況は悪化していく未来しか見えない。


 一番想像しやすいのは、食物連鎖だ。

 草食動物が食べられるのが可哀想だからと、か弱い個体を保護し、肉食動物を駆逐したら、その先に待っているのは異常繁殖からの生態系破壊・土地荒廃だ。


 ぶっちゃけてしまえば、質の悪い作品は、保護するよりも、批判・否定によって適度に駆逐されたほうが、サイトにとっての都合はいい。

 投稿されている作品のクオリティは、高いに越したことはないのだから。

 全ての投稿作品が、全ての読者を満足させれば、それに越したことはないのだから。


 ついでに言えば、楽。

 誰でも投稿できると謳ってる以上、下手に手出しすれば悪化しかねない管理者の立場からなにもせずとも、利用者間である程度の『自浄作用』が働く。


 批判の禁止は、その理想の極地になる。

 作品を批判することなく、質の悪い作品が投稿され続けると、現状でも色々と言われている作品平均クオリティは確実に下がる。

 サイト利用者が微減し続ける、先行きの悪い予測しか立てられない。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 ここで冒頭に戻る。


 エッセイジャンルでよく繰り広げられる議論を見ていると思うのだが。

 無意識に根本的な勘違いというか、忘れている人がいないか?


 イチ利用者それぞれにこのサイトへの思惑があるように、ヒナプロジェクトにも思惑があることを。


 管理者の意向によって、あなたの望まない形にサイトが改変されたとしても、イチ利用者の思惑なんぞ無視されるぞ? 知ったことじゃないからな?

 というか、あなたの主張どおりに物事が改変されても、あなたの想定した結果が出る保障はないぞ? むしろ違う結果になる可能性が遙かに高いぞ?

 その時に責任取れるの? いや公的な責任なんて取れるわけないけど、「お前の言うとおりに変えたらダメになったじゃないか!」となじられても困るだろう?

 それに、利用者激減して過疎化しても、「こうなれば良くなる」と主張を行ったイチ利用者の責任として、結果を受け止め、あなたはこのサイトで活動し続けるの?

 偏見込みだが、その覚悟があるとは到底思えない。



 そういう意味では、自分はこのサイト、ひいてはヒナプロジェクトという会社に期待していない。

 

 というか、議論される意見の大半は期待しすぎ。高望みしすぎ。

 個人の最良が安直に、利用者全員・サイト全般に適用できるわけはない。でなければ、議論すら行われない。みんなが全く同じことを望んでいるということなのだから。

 ヒナプロジェクトという会社を形作るのは、神でも聖人でもなく、ごく普通の人々だ。

 全ての個人を満足させる空想など、到底実現不可能なのを忘れて、ふっかけるようなマネなんてしない、というかできない。


 そして、今のところ自分は「小説になろう」というサイトを利用しているが、メリットよりもデメリットが上回った場合、容赦なくこのサイトを見捨てて活動方法を変える。

 そこまで過度に入れ込みはしない。

 管理者も、利用者はそういう存在だと認識しているだろうし、社員でもない人間に責任感発揮されるのは、むしろ迷惑と思うはず。



 フィクションの中なら、どんな世界も作れる。

 主人公ひとりのために作られた、主人公をひたすら甘やかすだけの世界でも許される。


 でも、その物語を作り公開するのは、フィクションではない。

 現実の世界での、現実の行為だ。

 その物語を読む読者も、フィクション世界の住人ではない。現実に生きる人々だ。

 空想と現実ごっちゃにされて、フィクション内と同じ感覚で「なんで他の人間はオレの思い通りに動いてくれないんだ?」と(なげ)かれても、他人は困るのよ?



 不満に思うだけなら、まだいい。


 【01】項で言った。

 否定するヤツは全て敵か? 敵と思って味方を駆逐しようとしていないか?

 【02】項で言った。

 あんまワガママ通そうとすると『老害』と言われるかもしれないよ?

 【03】項で言った。

 それ言うと『キモオタ』呼ばれわれされる可能性あるんだけど?

 【04】【05】項で言った。

 その主張は誰のものだ? 自分勝手なワガママじゃないのか?


 あなたが主張することで、他人からどう見られるか、考えたことがあるか?

 『口は災いの元』の場合が多い気がするのよ?


 『上から目線』とか『自称評論家』なんて(あげつら)って、作品の批判を嫌う人が多いけど、その素人評論家のほうが遙かにマシだよ?

 だって読者は全員評論家だよ?

 しかも好き/嫌いの個人的感情論でしか語れないのに「これは優れている」「ダメだ」「これは正しい」「間違ってる」と好き勝手に批評してんだよ?

 具体的に論じている分、(あげつら)われる『自称評論家』のほうが、持ってるスキルは上等だぞ?

 しかもだ。しているのは『作品の批評』だけなんだが?

 『上から目線』とバッシングする人は、「それは読者としてあるまじき行為」「読者とは自分のような人間であるべき」と、人間の行動・性格そのものを勝手に決め付けて評論しているわけなんだが? 

 情報番組につきもののコメンテーターって、そういう発言になりがちだから、「何様?」と嫌う人多いぞ? 社会的地位のある高名な人間でも、今の時代ネット上で容赦なくバッシングされるぞ?


 まぁ、この辺りは、こんなエッセイを書いて主張している自分にも突き刺さる、盛大なブーメランだけど。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 



 あなたは『妥協』の意味を勘違いしていないか?


 ふたりの腹ペコと、ひとつのパンがある。

 満腹にはならないけれど、分け合えばふたりとも、そこそこは満足できる。


 これが『妥協』だ。

 言うまでもないだろう。

 「当たり前だろ」と思った人も多いだろう。


 だが、様々な議論の中で反感を覚えた人は、怪しんだほうがいい。

 客観的/理論的に間違いと思ったのならまだしも、主観的感情論として聞く価値がないと思ったなら、確実に『妥協』を勘違いしている。


 半分のパンでは満足できない。

 だから相手をじーっと眺めて「お腹減ってます」アピールする。

 相手は気まずくなり、半分のパンを渡してくる。

 そして「悪いなぁ」と言いながらパンを全部食べてしまう。


 これが、あなたの考える『妥協』である可能性がある。



 妥協とは、双方がそこそこ満足する状態。

 ということは、同時に双方とも、多少の不満を持っていることを忘れてはならない。


 しかし、自身の不満に対してものすごく敏感だと、相手も不満があることを想像もしない。

 なので相手が『自発的に』譲歩するよう仕向ける。

 『自発的に』なので、恐喝したわけでも強奪したわけでもない。

 罪悪感を覚える必要もない。

 譲歩しないなら、そいつは悪人だ。

 弱者を助けるのが当然という倫理がないのだから排除するのが当然。

 罪悪感を覚える必要もない。


 無意識の話だから、訊いてもまともな回答は返ってくることを期待できないが。

 そんなことを考えていないか?



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 さて。ここまで色々と言ってきた。

 (かたよ)ってると思えなくもないが、擁護とか反擁護とか肯定とか否定とかの派閥なんて関係なく、全方面に喧嘩を売るような内容だ。

 だから「なにを言いたいたんだ?」と思う人もいるだろう。


 「議論すな」なんて言うつもりは、全くない。

 イチ利用者が言って止むことじゃないのが一番の理由だけど、そうではない。

 反対に「もっと議論しろ」とも言う気はない。



 そもそも疑問なのだが。

 反発する派閥間で理解しあう必要があるのか?

 もちろん限度はあるが、『議論』の枠内に収まっている限りは、自分は必要と思っていない。


 理解し合えない人種だから、という最初からの諦めで言っているのではない。

 反発しあっているのが、現実的なモアベターだと思うからだ。



 保守派/革新派、右翼/左翼は、鏡合わせの存在だ。

 主張のベクトルが真逆なだけで、やってることは同じく『異派閥の否定』だ。


 それは(つな)引きみたいな行為だ。

 双方が逆ベクトルの行動をすることで、平衡を保っている。

 平衡が崩れると、共倒れになる。


 なので、度を越さなければ、結論の出ない議論で結構と思っている。


 その言葉の受け取り方も、聞き手一人ひとりで違うのだし。

 100パーセント真に受けて神扱いする人もいれば、冷静に論理的に意見の半分を取り入れて残り半分は無視する人もいれば、「こんなこと言うヤツになりたくねー」と反面教師的な参考にする人もいる。


 なにより総体としての結論を出すのは、利用者による話し合いではない。サイト管理者であるヒナプロジェクトが最終的な意識決定権を持っている。


 個人が完全満足にすることは、総体にとっては重要ではない。というか極論の場合は積極的に無視だ。

 数多くの意見が出てくる議論の中から、多くの人々にとって最大公約数となる妥協点を見出せればいい。


 だったら無理に現状を変える必要性を感じない。

 議論するなとも言う気になれない。

 どっちの論が正しいと言う気もない。単体で見て変だと思えば、どっち派閥だろうと容赦なくツッコむ。



 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



 自重と自戒を含めて、このエッセイで自分が言いたいのは、このサイトを利用する上で、絶対に以下のことを忘れるなってことだ。


 これまでに書いたように、このサイトは株式会社ヒナプロジェクトの私有地だ。

 いくら利用者同士で言い争ったところで、管理者の意思は別次元のところにあり、その決定に利用者が逆らうことは決してできない。


 極論を言えば、だ。

 「このサイトは異世界チーレム以外お断り」とすることも「出版社に協力して優れた作品を世に送り出すために批判激化」なんてすることも、「揉め事一切禁止。他利用者に噛み付いたら即排除」とすることも「こんなうるさいことになるなら、サイト閉鎖しよう」となることも、可能性としてはゼロではない。

 というか、あまりにも利用者間の議論が激化するようであれば、管理者として近い対応をせざるをえなくなる。


 だけど現状では違う。少なくとも今はまだ。

 利用者同士の議論など、見守る大人の前で行われる子供のじゃれあいのように、フリーダムにさせてもらっている。

 その上で、企業の利益にも叶う可能な範囲で、ベクトルの違う利用者の意見を組み入れ、対応しようとしてる意思が(うかが)える。


 広告収入だから利用者の影響は大きく、意見を聞くことも重要だが、企業戦略が顧客の意見に振り回されてしまうのは、正直あまりよろしくない。アップル社のスティーブ・ジョブズも否定していたし、日本の企業が世界的に劣って見られるのはその点という意見もある。

 ヒナプロジェクトは、それでも可能な限り利用者の意見を聞こうとしている。企業対応としては良心的と言っていい。


 そこはこのサイトを利用している全ての人々が、感謝すべき事柄だ。

 重々承知した上で、許された範囲の自分勝手をしろよ?



 というわけで、はい。ご一緒に。


 小説になろう、ありがとう。

 株式会社ヒナプロジェクト様、ありがとう。

 代表の梅﨑氏をはじめ、社員の方々、ありがとう。

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