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作戦その12 オフの時間を一緒に過ごして仲を深めよう!3

「それじゃあ、乾杯!」

「乾杯」


 クロルドが音頭を取り、五人のグラスが合わさる。テンションが高いのはクロルドだけで、あとは不機嫌そうだったりどぎまぎしたりという面々なのだが。


「さ、ティーナこれ食べなよ。取り分けてあげるよ?」

「あ、ありが……」


 クロルドの言葉に甘え、ティーナが皿を差し出そうとしたのをフェンネルがすかさず止める。


「俺が取ってやる」

「えっ……」


 フェンネルは不機嫌そうな顔でティーナの皿に山盛りのフライを取り分けていく。五人分のフライの半分以上がティーナの皿に収まった。


「ふふふ、面白いなぁ」


 くすくすと笑うクロルドをフェンネルが睨みつける。


「なんだよ、お前は。感じ悪い」

「ここまであからさまなのにどうともなっていないなんて、これは隊員たちも苦労するなぁ。あとちょっとだとは思うけど」

「さっきから何の話をしてるんだ」

「意味がわからないならいいよ」


 テーブルの端と端でいがみ合う二人をユウリはおろおろと見つめる。二人の隊長と一緒に過ごす機会などなかったので、慣れていないのだ。そんなユウリにフォローを入れたのはノルスだ。


「この二人のことは気にしないでいい。いつもこうだから」

「あ……」


 ユウリは頬を染めて頷く。ノルスの前だと上手く話すことのできないユウリを見て、なんて可愛らしい乙女なんだろう、と何故かティーナが胸をときめかせる。そんなユウリをなんとかサポートしてあげたいと動き出す。


「ね、ノルスのプライベートの話って全然聞いたことないけど、聞いても良い?」

「僕の話ですか?」


 ノルスはティーナに向けて怪訝な表情をする。


「聞いて何になるのです?」

「いいじゃない! 教えてよ!」


 ティーナは山盛りフライを順調に消化しながら身を乗り出す。


「まず、恋人はいるの?」

「いません」

「いないんだ!」


 即答したノルスにティーナはパッと顔を明るくしてユウリを見る。ユウリは顔を真っ赤にしたままちびちびとカクテルを飲んでいた。しかし、耳は当然ノルスの方へ向いている。


「女性の好みのタイプは?」

「手間がかからない人がいいですかね。めんどうな人の相手は仕事中だけで十分だ」


 ノルスの言葉にユウリはピシッと背筋を伸ばし「サラダをお取り分けします!」と言ってお皿を受け取った。どうやらしっかりした女性アピールを始めたらしい。


「おや、ノルス? 俺の悪口を言ったのかな?」

「いえ? 誰とは言っていませんから」


 静観していたクロルドが話に入ってきた。ノルスはいつものすました顔でサラッとかわしてみせる。


「おい、ティーナ」


 割り込んできたのはクロルドだけではなかった。ティーナの隣のフェンネルがどす黒い声を発する。相変わらずの不機嫌モードに、ティーナは恐る恐る顔を向けた。


「随分とノルスのことを気にするんだな」

「え、いや、これは」


 フェンネルの不機嫌度合いは明らかに増していた。そうであっても、素直にユウリのためだとは言えない。乙女の気持ちを他人に話すものではないと思ったからだ。しどろもどろになるティーナにフェンネルは不機嫌さを倍増させていく。


「ノルスに気でもあるのか」

「そんなわけないじゃないですか」


 ティーナは即座に否定したが、フェンネルの眉間の皺は消えそうにない。


「ティーナ。フェンネルは自分にも質問してほしいみたいだよ?」


 険悪な二人に割って入ったのはクロルドだ。


「質問、ですか」


 フェンネルの好みの女性像を聞きたいのは山々だが、想い人がいると思っているティーナは聞きにくい。傷つくのが目に見えているから。


 だけど、フェンネルの機嫌はすこぶる悪いままなので、打開するためにもクロルドの言うことを聞くしかないと腹を括った。


「フェンネル隊長に恋人はいないですよね?」

「ああ」

「女性の好みのタイプは、ありますか?」

「好み……特にないな」

「そうですか」


 話は広がらない。そんな二人を見て、ノルスが口を開いた。


「なるほど、話が見えてきました」

「この二人をどうにかしてやってくれよ、ノルス」

「そんな面倒なことはしたくありません」


 話が通じ合ったクロルドとノルスのやり取りに三人は首を傾げる。フェンネルの機嫌の悪さを把握したノルスはこう切り込んだ。


「フェンネル隊長。僕がティーナに好意を向けることはありませんよ」


 フェンネルは静かにノルスを見る。その言葉が本当なのか判断するために。


「ティーナも面白がって聞いているだけでしょう? 僕に好意を持つはずがない」

「……そうなのか? ティーナ」


 フェンネルに確認を取られて、ティーナはコクコクと何度も頷く。


「もちろんです。ノルスのことは良き友人だと思っています」

「……そうか」


 ティーナがしっかりと答えると、フェンネルの怒りが収まったのがわかった。ティーナはホッと息を吐き、それにしてもフェンネルは何故怒っていたのだろうと頭を捻る。


 その様子を前で見守っていたユウリはこう思う。


 フェンネル隊長はティーナ副隊長のことが好きなんだ! っていうことは……三角関係だわ! ティーナ副隊長を奪い合っているから、いつも二人は喧嘩ばかりしているのだ!


 ユウリの勘違いは暴走するばかりである。

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