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ペドロMARKⅡ   作者: ふじわらしのぶ 2017年度版
1/6

天才軍師 諸葛孔明

 自由とは模倣である。


 他人の自由な、あるいはさも自由そうに見える姿を見て我々はそれを自由のあるべき姿だと勘違いしているにすぎない。

 厄介なことに我々は自由奔放に振る舞う他人の姿を真似ることによって、自分が自由な存在であると考えてしまうのだ。

 何という体たらく、これでは自由という既成概念に隷属しているだけではないか。

 この滑稽な姿を造物主が見たらどう思うだろうか。我々は怒れる造物主を前にして、「おお神よ。赦したまえ」とひれ伏す以外に道はないのだ。


 もしも、それでも恥知らずにも自由を求める者がいるとすれば、その者は二番煎じの誹りを受けることを覚悟しなければならないだろう。


 君はそれでも自由という贋物に手を伸ばすのか。

 それは純真な乙女ではない。すれた阿婆擦れなのだ。君の純心はやがて引き裂かれよう。厄介な者と関わってしまったがゆえに地獄に落ちるかもしれない。それでも、それでもなお君は自由を求めるというのか。

 だとすれば君は第一級の愚か者だ。そんな君には「自由人」という本当に不自由な称号がふさわしいのかもしれない。

 

 このしがらみだらけの世界の中で、大空を羽ばたく鳥のように振る舞っているものがいるとすれば正しくそれは偽物に違いあるまい。



 神よ、そろそろ私はウィッグとかを装着した方が良いのでしょうか?照明の下に立つとガチでやばいそうです。




 まず現状を整理するとしよう。

 壺の中を満たす酒がまるで減っていない。事前に立案された作戦では、対象の好物は酒ということだった。

 斎藤ペドロは諸葛孔明に問いただした。


「酒。減ってないよ?」


 諸葛孔明は軍師である。

 今回の作戦、首がいっぱいある大蛇にお酒をたくさん飲ませてから大きな蛇が寝ている間に退治する作戦を立案したのは他でもない彼自身だった。

 孔明は自慢の羽扇で口元を覆い隠す。軍師たるものはたとえ大蛇にめっちゃビビッていてもそれを気取られるわけにはいかない。

 孔明が今ここで考えなければならないことは大蛇を退治することではない。

 暴走したペドロが孔明に襲い掛かることを如何にして未然に防ぐかということである。

 目の前の脅威を対処すれば、自ずと勝利への方程式が見えてくるはずだ。この時、孔明は己の聡明さに酔いしれていたのだ。


  口元に羽扇を当て、両肩を震わせながら笑いを堪える孔明の姿を見てペドロは孔明という人間に恐怖を覚えた。

 軍師諸葛孔明はこのような窮地において武者震いを禁じえぬほどの豪胆な性格の持ち主だったのか。

 ペドロは逃げることばかり考えていた自分の臆病さを心から恥じる。

 いざとなれば孔明もあの怪物の姿を見るやいなや逃げ出すに違いない。その時にどさくさに紛れてペドロも逃げてしまうつもりだったのだ。

 軍師が肚を決めた以上は、主君であるペドロも覚悟を決めなければならない。ペドロは軍配を荒波のように押し寄せる大蛇の方に向けた。


 「今こそ命を捨てる時だ。全軍、突撃せよ」


 ペドロは彼の率いる精鋭たちに命令を下す。

 後世においてペドロ致死軍と呼ばれる彼らは脇に成人男性くらいの大きさのロケット花火を抱えて、大蛇に向かって突撃を開始する。

 大蛇は硫酸を含んだ吐息を兵士たちに浴びせかける。

 しかし、討ち死にの覚悟を決めた兵士たちにそんな小細工は通用するはずもない。途中でロケットが引火して爆死する者の姿に、他の兵士たちは大蛇を必ず倒すことを誓いながら突撃を続ける。

 ペドロは涙を流しながら自らが鍛えた精鋭たちの最後を見守った。


 「お前たちの死は決して無駄にしない」


 ペドロの肉体にはすでに9999本のダイナマイトが括りつけられている。大蛇がどれほど強力な防御手段を取ったとしてもおそらくは無傷ではいられないだろう。

 さらにペドロの体内には爆発すればユーラシア大陸の半分を吹き飛ばすほどの超強力な反物質爆弾が内蔵されている。この爆弾はペドロの心臓が三分間くらい停止すると自動的に爆発する仕組みなのだ。

 若い命を惜しむことなく散らしていった部下たちの為にも、ペドロはただで死んでやるわけにはいかないのだ。


 「人を無礼なめるなよ。爬虫類」


 また一人、ペドロの部下が爆散した。大蛇はさして怯む様子もなく人類最後の楽園に向かって進撃する。かの地に大蛇が到達すれば人類の歴史はその時点で終わってしまう。

 ペドロは爆発物によって空中でバラバラになっていく部下たちの姿を見て、美しいと思った。何度爆破されようとも大蛇の体は健在だが、精神的な戦いではこちらが勝っているはずだ。

 この時、ペドロはかつてないほどの高揚感を覚えていた。


「勝てる。勝てるぞ、この戦い。必ず勝つ」


 そして、最後の一人が大蛇の前で爆発したその時。斎藤ペドロは自分の体にぐるぐる巻きにしたダイナマイトの束に点火した。ペドロは覚悟していた。

 この戦いは決して無傷で終わるようなものではないと。

 大蛇が爬虫類の誇りをかけて戦いを挑んできたようにペドロたちもまた人類の矜持をもってしてこれに立ち向かって行ったのだ。

 守るものと攻めるものでは、当然ディフェンス側が有利であり歴史的観点における正当性も十分なものだ。

 ゆえに最近のアニメでは下手に優秀な人型の巨大ロボを製造するよりも自爆も辞さない鉄砲玉を量産した方が良い、ということを僕らに教えてくれたのである。


 ペドロはゴメス亡き後にもっとも信頼することになった軍師 諸葛孔明を見た。

 孔明の顔は以前よりも血の気が薄く、青いものになっていた。

 それもそのはずである。ペドロは本陣を出撃する前にダイナマイトに点火してしまったのだ。

 このままでは多大な犠牲が出る、と考えた軍師 諸葛孔明はペドロに一刻も早くここを去ってもらう為に献策する。これが上手く行けばペドロは大蛇を爆殺して見事本懐を遂げることができるだろう。

 軍師の保身とはあくまで策略を活かすことであり、自身の生命の危機など二の次なのだ。

 だがしかし、この世に命より尊いものはなく親からもらった大切なものであるのだから、孔明が生き延びる為に大蛇やペドロの命が危険に晒されることになっても全部ブラックな世の中のせいに決まっている。


 「お待ちなさい、ペドロ殿。今の貴男は焚き火の上をブンブン飛んでいるハエも同然。いずれは大蛇討伐の戦功という栄誉に気を取られたばかりに、足元に広がる猛火に焼かれて死んでしまうでしょう」


 その時、ペドロの動きが止まる。

 ダイナマイツが点火するまでそう時間があるわけではないが、ペドロが心から信頼を置く軍師 諸葛孔明の言葉となれば聞かないわけにはいかない。

 孔明は以前、バイオ殺人モンキー集団に襲われていたペドロたちを撃滅必勝の秘策たる背水の陣をペドロたちに授けて見事にバイオ殺人モンキー集団を倒すことに貢献したという実績を持つ嵐の夜の雷鳴の如き天才軍師なのだ。

 あの時、大河の激流を背に覚悟を決めて戦っていなければペドロたちは今ごろバイオ殺人モンキー集団に敗北し、死ぬまで彼らの為にアトミック猛毒バナナ農園で働かされていたに違いあるまい。

 ペドロの額に一筋の汗が流れる。この最悪の状況を踏破する悪魔の一手が存在するというのか。ちなみにダイナマイツが爆発するまで十数秒前くらい。


 孔明の羽扇があまた存在する大蛇に向けられる。

 その中には豪奢な冠を被ったものが一つだけ存在した。大蛇の他の肉体の部位に攻撃をしかけても大した効果は得られないことはペドロの部下たちの尊い犠牲によって周知の事実となっている。

 だが、あの目立つ部分を一転集中で狙えば大蛇の息の根を止めることが出来るかもしれないしそうでないかもしれない。

 大蛇が起こってパワーアップするという状況も考えなかったわけではないが、いずれにせよ今は一刻も早くペドロに人間ボンバーとして特攻してもらわなければならないのだ。

 孔明はペドロの様相をさっと盗み見る。

 ペドロは右の拳を堅く握りしめて、孔明の次の言葉を待っている。孔明は己の術中に嵌ったペドロの姿を見て、安堵する。この時。ダイナマイツ、大、大、大、大爆発するまで数秒前。


 「もう言わなくてもわかりますね、ペドロ殿。この戦いは既に終わっているのです」


 ペドロの五体が光に包まれる。


 孔明の目にくるいは無かったのだ。


 このペドロという男こそが、光の使徒。悪魔の使いである大蛇を倒し、地上に正義と平和をもたらす男だったのだ。

 爆発時に全身が赤熱化して発光しているようにも見えるが、それは孔明の気の迷いかもしれない。

 やり直せるものならば三顧の礼あたりからやり直したいと考えるのは、孔明の甘えなのだろうか。自身もまた爆発の中心部に身を置きながら孔明は静かに目を閉じる。


 そう。これは全て夢。現実であるわけがない。


「おおっ!」


 ペドロはかつてないほどに興奮していた。

 自分の肉体の内側から発せられる光の奔流こそはパワーアップの証。

 まさか自分にこのような洗剤能力が隠されていたとは!と要するにペドロの体にくっつけられていた爆弾が爆発しただけなのだがペドロは自意識が強く自惚れの強い性格だったので自分の身に起きた不幸を極めて前向きに脳内変換していた。

 作者からの忠告だが、こういう人は社会に出るとリアルに存在するので注意しよう。レストランや喫茶店経営とか、住宅投資とか言い出したらそれは絶対に死亡フラグだから要注意だ。

 とにかくペドロの爆弾が爆発してえらいことになった。爆弾の威力は中途半端でペドロと孔明は死なない程度に痛めつけられるという結果になったのだ。

 

 孔明はうつ伏せになったまま、傍らに転がるペドロを血走った目で睨みつけた。


 孔明の熱い視線(悪い意味での)に気がついたペドロは親指を立てながら笑顔を彼に向ける。

 二人とも爆発に巻き込まれ衣服がボロボロになって散々な状態だったが、前向きなペドロは某少年漫画の主人公のように失敗という経験を得たと言わんばかりの気持ちになっていたのだ。

 苦難や失敗は人生のスパイス。

 そういった刺激ばかりではやがて燃え尽きて死んでしまうような気もするが今はそうでも言わないとこれから先やっていけそうにない。

 しかし、孔明は絶対殺すオーラを背中に纏いながらペドロを睨み続けていた。

 なぜならば先ほどの爆発で孔明のトレードマークである帽子と羽扇が燃えてしまったからである。孔明のペドロに対する憎しみはかつてないほどの熱量を発していたのだ。

 英語でいうと「バスチューアップ!」(ガイジンがガチで切れている時に言う言葉。鉄砲を抜いてくることもあるので気をつけよう)という感じである。


 「ペドロさん。もう限界ですよ。あなたは絶対にしてはいけないことをしてしまった。こんなに怒ったのは生まれて初めてかもしれません。あなたはもう終わりです」


 孔明はボロボロになった上着をばさっと脱ぎ捨てた。上着の下には鍛え抜かれた鋼のごとき肉体が存在した。

 これは「正史」という書物でも確認できることだが、諸葛亮は身長も高くインテリなイケメンで、マッチョだったらしい。ちなみにこの話に登場する諸葛孔明と諸葛亮は全然関係ない。


 「ぬんっ!」


 孔明は体内に蓄積された気を放出する。

 五体を神気が駆け巡り、一瞬で孔明の肉体を回復させる。

 この方法はスタミナを大量に消費してしまうので本来は使ってはいけない手段として、普段は封印している。

 だが、今回ばかりは事情が違った。孔明のトレードマークである羽扇と帽子が、ペドロのせいで失われたのだ。

 禁じ手を使ってでもペドロに一泡吹かせてやらなければ孔明の怒りをコントロールすることが出来なくなっていた。


 「おいおい。ケンカの相手でも欲しくなってきたのかよ。孔明ちゃんよ?」


 軍師と一軍の将。そういう間柄であったとしても本音でぶつかり合う機会はあまりない。

 軍師は策を速やかに遂行する為に、将帥に接する時には言葉に気をつけなければならない。対して将帥たるものは軍師から全幅の信頼を得るために、軍師が最良の状態で軍事と向き合えるようにやはり彼らへの待遇やかける言葉に気をつかわなければならないのだ。

 軍師と将帥とは上司と部下のような関係に思われがちが、実際は対等の関係に近いものである。

 ペドロは以前から高僧のように気取った孔明の本音というものを知りたい、と考えていた。

 ペドロは爆風で破けたライフセーバージャケットを脱ぎ捨てた。上司も部下もない。男同士が本音で語りあえるのは素手勝負ステゴロしかないのだ。

 ペドロの五感は孔明の放つ気に触発されて、未だかつてないほどの興奮に支配されていた。

 ペドロは見るからに頑健な孔明の肉体を思いのままに破壊したいと心の奥底から考えていたのである。

 あの胸襟に穴をあけて孔明の心臓を拝んでやろうか。それとも孔明の腹に穴を空けて内臓を引きずり出してやろうか。

 人のそれとは思えないほほどの野蛮さを発しながらも、ペドロは孔明に対する破壊の欲なるものを隠すつもりが無かった。


 孔明とペドロ。

 二匹のオスは出会ってしまったがゆえに、どちらか一方が死ぬまで戦わなければならなくなっていた。ペドロは腕をぶんぶん振り回し、孔明を威嚇する。

 この腕に触れるものは皆死の運命を受け入れなければならぬぞ。と言わんばかりであった。

 対して孔明は凡庸なるペドロ何するものぞ、といった横柄な態度を崩さない。孔明はあくまで格下としてペドロに接していたのだ。

 孔明の中で、彼がペドロを恐れる気持ちは次第に薄れていた。

 孔明はあくまでペドロという羽虫にも劣る存在を相手してやる格上の存在なのだ。

 これから孔明とペドロは対等の条件で戦うわけではない。

 天を敬う気持ちを一欠けらも持ち合わせないペドロという無知な男が、それこそ神にも等しい孔明といおう存在に挑むのだ。

 言うなれば一方的な殺戮ショーでもあった。

 孔明は狩りを楽しむ獅子のような笑みを浮かべていた。


 ペドロ。ペドロよ。お前はどこまで愚かなのか。

 お前がこれから挑む相手は森羅万象において絶対的な力を持つ神なのだぞ。孔明は腰を落として低い位置で構える。

 まずはペドロにオープニングヒットを許そう。それから孔明の渾身のバックドロップで天国から地獄へとつき落とすのだ。孔明は頭蓋を地面に叩きつけられて絶望するペドロの姿を思い描いた。

 ペドロは後方に向かってダッシュする。

 今や鋼の要塞と化した孔明を仕留めるには、助走をつける孔明の肉体を完全に破壊する為の距離が必要となった。生半可な攻撃ではガードで押し切られるか、カウンターをくらうかどちらかだろう。

 ペドロは当初、ダッシュからのローリングソバットで孔明の肋骨を粉砕するつもりだった。

 しかし、今となってはそれは叶わぬ夢となっていた。いかにペドロといえども、あの肉の要塞と化した孔明に何度ローリングソバットを放ってもダメージを与えられる保証は無い。

 ローリングソバットの威力は孔明の腹筋と背筋によって押し止められて、逆にサイドスープレックスをくらってしまう可能性さえある。

 いっそローリングソバットをフェイクにして、トーキックで孔明の肉体に風穴を空けてやろうか。

 しかし、ペドロは甘い考えを中断する。この状況で孔明が姿勢を低くしたのはペドロの反撃に対する牽制も兼ねているのだ。

 もしも、この状況でペドロがトーキックを繰り出そうものならば孔明はドラゴンスクリューでペドロの蹴り足を破壊していいただろう。


 「策を弄するな、ペドロ殿。私の体はもはや育ちすぎたアスパラガスのように強靭なものとなった。茹でた後にマヨネーズをかけても、油で炒めても全然おいしさを感じない。なんかそんな感じだっ!」


 ペドロは舌打ちする。

 まさか諸葛孔明の硬度MAXのダイアモンドボデーを超える旬の過ぎすぎたアスパラボデーとなっていたとは。

 当初の考えではキックが通じなくても接近して鎖骨と胸骨の間に貫手でも入れれば何とかなると考えていたのだ。

 だが、全身の筋肉を締めて育ちすぎたアズパラのようになってしまった孔明のボデーにはそんな柔な攻撃は通用しないだろう。貫手が突き刺さるタイミングを外されて逆にペドロが利き手を失う可能性さえある。 

 突然の話だが、ペドロの右腕は死んだゴメスの腕が移植されたものである。この右腕ライトアームの中で強敵ゴメスは生きている。

 つまり今のペドロには右手を使っての聖アナン的行為は絶対に出来ないのだ。大きなれよ、とゴメスにとても優しくしてもらっている。ペドロは吐きそうになったので妄想を中断した。


 その時、不意にペドロは孔明の後ろに広がる景色を見た。

 あれはいつか見たであろう山ほどでかいアナコンダ。

 思い出せ、ペドロ。今どうしてここにいるのか。

 本当に考えなければならないのはそういうことではないのか。孔明はペドロの視線を辿り、さっと後ろに広がるというか差し迫るキングコブラ山脈を見る。


 ああ。こんな状況になってまで筋肉談義に花を咲かせているなんて、俺たち終わってるな。


 ペドロと孔明の視線が交錯する。それは人類未踏の地に咲くという黄昏という名の花。迫りくる大蛇の姿を背景に二人の男はほぼ同時に口を開いた。


 「カップ焼きそばとか食べたくね?」


 二人の男の口から発せられた言葉は同じものだった。

 大蛇は度重なるペドロ致死軍の自爆攻撃で全身がボロボロになっている。というか無茶苦茶、怒っている。

 大蛇に人間並みの知性があるかどうかは誰も知らない。しかし、自爆特攻を思いついたのがペドロか孔明のどちらかであることは理解しているらしい。

 大蛇に心というものがあるならば生き残った二人の人間をどうやって殺してやろうかみたいなことを考えていたに違いあるまい。

 だが、そんな圧倒的に絶望的な状況であろうともペドロとゴメスはカップ焼きそばについて熱く語っている。


「マヨネーズは邪道だよね?」


 スマホをいじりながら友人に知り合いを全員殺す連続殺人予告メールを送信する女子高生のようにイキイキとした表情でペドロが言った。

 同じく孔明も男子ソープで稼いで来いと行きずりで性奴隷にした男子水泳部の後輩に快活な表情で命令するイケメンクズ先輩のような顔をしている。

 余談だが、男子ソープなるものが実在するかどうかは作者も知らない。


 「やっぱカップ焼きそばの醍醐味ってさ、ソースぶっかけて乾麺のままバリバリいくのってマジかわいくね?」



 全然かわいくない。



 ひたすら現実逃避するペドロと孔明。

 そして、怒りに我を忘れて迫りくる大蛇。人類滅亡をかけた戦いの行方はどうなってしまうのか。

 それを語るには少しばかり時間を遡らなければならない。


 「見逃すなよ、ユー?」


 その時、ペドロは世間から追放された天才科学者の住むという絶海の孤島であった出来事を思い出そうとしていた。


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