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食パンの耳

作者: 微睡み朧猫


ほんの些細な事で人間関係なんてものは壊れてしまう

驚くほど簡単に。


よく耳にする言葉

[私達は見えない絆で結ばれている]

[運命の赤い糸]

本当に?


もし、ある日突然 雷に撃たれ他者の思考が手に取るように分かる超能力を与えられたとしたら……

それこそ生地獄だろう。

真実と虚言


この世に存在する[物]を基準とし、普通、或いは通常と例えるなら難題な数学はともかくとしてさほど難しくはないと思う。

でもこれが[者]となると、例えるなら極めて一般的と置き換えても一体どこで線引きをすればよいのかと常日頃感じてしまう。

況してや風土や風習、価値観等と例えればきりがない。


そのような状況下でも人々は大昔から社会を築き上げてきたのだと思うと遥か彼方に点在する数多の星々を数えるより気が遠くなるのは自分だけなのだろうか……


昔から群れる事が苦手だった事もあり、独りでいるのが好きだった。なので今でも人混みは嫌いだ。

もし近所に日本一旨いラーメン屋が開店しても、わざわざ並んでまで食いに行く位なら閑古鳥の鳴くラーメン屋で独り静かに食った方が安らぐってもんだ。いや、家で湯を沸かし、お気に入りのDVDを鑑賞しながらカップ麺を啜ってるだろう。


更には年越しカウントダウンと称し大勢で群れる行為をテレビで観ると鳥肌が立ち虫酸が走る‼

正に愚の骨頂だと感じてしまう自分は変人なのだろうか。



こんな自分ではあるがネット上であれば文字だけの世界。人と直接向かい合い、顔色を伺いながら話す必要はない。


ある日、他愛もないやりとりを交わしていると好物であるパンの話題をしていた。自分は食パンにあんぱんやチョコパンをはさんで食べると言う事実を語ると面白い人だと言われたが、まぁ当然かと笑い話のネタにしていた。食パンの耳も好きでわざわざ耳だけを切り取るなんて無駄な事はしないと語った。

もしサンドイッチを作ったとして切り落とした耳も捨てずに食べる。育ちが悪いせいか捨てるだなんてとんでもない事だ。それは今でも変わらない。


だが、相手の方は耳を捨てる人だったのだ。

自分はもったいない等と相手を誹謗中傷するつもりなど全くなかった。好みは個々により様々だからと。

でもその方は今まで自分が食パンの耳を捨ててきた事実に対し酷く自己嫌悪に陥ってしまったのだ。


私は必死に弁解した。

家が貧乏だったからと。

しかし、これが更に相手の自己嫌悪に対し拍車を掛けてしまった。やぶ蛇、火に油を注ぐとは正にこの事だ。


相手の方は今まで自分は贅沢していたと更に落ち込み、私には既に弁解の余地すらなく文字を打つ手は完全に止まっていた。


その後、その方と会話を交わす事は二度となかった。


後味の悪い虚無感に苛まれるも価値観の違いだと自分を偽り煩わしい人間関係なんてもんは皆無だと改めてそう思う事にした。



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