閑話:閑古鳥が鳴いてるよ
お久しぶりです。4章突入前の閑話です。
「うーん、今日は人が少ないなあ」
鳴かない閑古鳥亭の看板娘であるエコナは暇であった。
なんと珍しいことに真昼だというのにその日は客が全く来なかったのである。
「客が途絶えないから店の名前がこんな風になってるのになぁ」
「エコナ、どうする?今日はもう休んでいてもいいんだぞ?」
エコナの父親のドーズが彼女に休むかどうか尋ねた。
「看板娘がいなくてどうするのよ……」
「ハハハ、それもそうだな。」
(ああ、でも今日はお客さん来ないみたいだし、休んだ方が良かったかも。失敗したなあ。)
看板娘が云々と言っていたにも関わらず、客が来ない現状を思い出したエコナが小さくため息をつく。
からんからん。
錆びて少しだけ音が鳴りにくくなったベルの、乾いた音が店内に響く。その音を聞いたエコナは条件反射で飛び出していく。
「は~い、何名様でしょうか……って、ロバートにバーキンさんじゃない!」
「丁度お昼休みでね、見ての通り2人だよ。今日のおすすめは何だい?」
(丁度退屈していたし、たまには意地悪してみようかしら。)
昔からの付き合いである、この幼馴染み二人に対してのいたずらごころが芽生えるエコナ。
「お子様ランチなんてどうかしら」
「僕は大人なんだけどね……まあおすすめみたいだし、僕はお子様ランチの大人盛りをお願いするよ。バーキンはどうする?」
「汗かいたからな……美味い肉と美味いスープと新鮮なサラダ、あと何か冷たい飲み物を頼む。」
「お子様ランチね。」
「……ああ、そうだな。」
「お父さ~ん、大人のお子様が二つ!」
「わかった!」
「なんかさっきからお子様、お子様言われてる気がするよ?」
「気のせいよ。さ、席に座って待ってて。カウンターでいいわよね?」
腹を空かせた二人が座って待っていると、美味しそうな食事が並べられた。
左に座ったロバートの前にはお子様ランチ(大)が、右に座ったバーキンの前には豪勢なお子様ランチが。
「いつも通りに美味しいね。さすがドーズさんだよ。」
「おお、久しぶりに食ったなあ!美味い、美味い。」
「二人共そんなに焦るなよ?お代わりもあるぞ、有料だけどな!」
騒々しく箸を進める二人と、それを見ている父親。
何も変わらない昔からの光景にエコナは安心感を覚える。四人とも変わったのは年齢だけで、その他は何も変わっていない。
「お父さん、お昼休みにしない?お客さん来ないし。」
「おお、そうだな。」
ドーズが"OPEN"と書かれた店先の看板をひっくり返し"CLOSED"にすると、閑古鳥亭の珍しい昼休みが始まる。
「それにしても、こんな時間にお昼休みだなんて、違和感があるわ~。」
エコナがロバートの隣に座って呟くと、ロバートが反応する。
「確かに珍しいよね、ここがこんなに空いてるなんて。でもま、たまにはこういうのも悪くは無いんじゃないかな?新鮮でさ。」
「そうだけどさぁ~。」
そう言って頭を抱えるエコナの前に、お子様ランチが出された。
「ちょっとお父さん!?」
「まあたまにはこういうのも悪くは無いんじゃないか?懐かしくて。」
そう言ったドーズの手にはお子様ランチが乗っていた。
「でも~。」
エコナは納得行かないような顔だ。
「ふんっ、それに、俺から見たらお前らなんてまだまだガキよ。」
嬉しそうにそう吐き捨ててドーズがバーキンの横にドカッと腰掛ける。
「ふぅ~たまにはこういうのも悪くねえな~、……最近疲れが取れなくてな、歳かねえ。」
「ちょっと、父さんはまだ五十なってないでしょ!?」
「馬鹿、ここら辺からカラダにガタが来るんだよ。あ~、はやく孫の顔が見てえなあ。……うちの娘ときたらこんなんだしな~」
「ちょっと、こんなんって何よ、こんなんって!」
「ほら、ゴチャゴチャ言ってねえで食え。冷めるぞ?」
「ほんっと、二人は昔から変わらないね。」
「ドーズさんなんか、絶対に死なねえだろ。想像がつかねえ。」
「おいこら、誰が不死身だ、誰が。」
「あんたらねぇ……。」
閑古鳥亭の昼下がりは騒々しくも賑やかに過ぎ去っていった───。
今回は鳴かない閑古鳥亭の関係者の話でした。
お子様ランチの理由はかなり昔に食べてから食べてなかったからです。……無性にプレート料理を食べたくなる時ってありませんか?私はあります。




