リューク・5歳です
処女作です。更新はまったりやろうと思ってます。
内容でおかしなところなど出ると思いますが、よろしくお願いします。
「………さい」
明るい……
意識が急速に覚醒するのと反比例するかのように身体は重さを増し……
「…きなさい!」
鉛のように重い身体では睡眠の甘美な誘惑には勝てず……あぁ、神様はなんで朝を作ってしまったのだろうか…
もうずっと夜のままがい「起きなさい!!」
バシィィィィッ
頭に響く鈍い痛みとともに再び眠りに落ちようとしていた意識が完全に覚醒する
「…あぁ、おはようゼナ姉さん」
とりあえず挨拶だ、挨拶をすればごまかせる、きっと誤魔化せるはずだ、だって挨拶だし!!
「もういつもの時間よ」
平然とスルーされました。悲しい。
「姉さん、なんか怒ってない?」
「別に。それよりもアルが待ってたわ、早く行ってね。私たち、とばっちりは受けたくないの。」
「すぐ行くよ」
『私たち』とゼナ姉さんが言ったのは僕の家族が多いからだ
まずランド父さんとマリー母さん。
ランド父さんは赤毛で天然パーマが少し入っている。目の色は赤。
とても快活な人で、ちょっぴりおちゃめ?
マリー母さんは綺麗な銀髪と、紺に近い色の目をしている
やんわりとした雰囲気が特徴だ。
そして双子のヨハン兄さんとアルフレッド兄さん。
2人は8つ年上だ。
ヨハン兄さんはガッチリとしたいい身体をしている。
茶髪で赤い目をしている。父さんとよく気が合う。豪快。
対してアルフレッド兄さんは細い。だがマッチョである。
こちらは銀髪で赤い目をしている。
そしてこれまた双子のゼナ姉さんとヨナ姉さん。
2人は僕より5つ年上だ。
ゼナ姉さんは茶髪に赤い目をしている。豊満で明るい。
対するヨナ姉さんは銀髪に翠の目をしている。
クールっぽいけど可愛い。スレンダー。
続いて僕、リュークと1つ下の弟のデルタがいる。
僕は銀髪に右眼が赤、左眼が紺に近い黒、とよくわからないことになっている。
デルタは茶髪に赤い目をしていて、父さんを可愛くした感じだ。
こうしてみると、うちの家族は双子率が高い。
さらに、全員が母譲りの美形である。
悲しいことに父さんの立場はない。
父さん…
ちなみにアル兄さんには毎朝剣術の稽古をつけてもらってる。
兄さんは見た目こそすごく細いけれど、本気を出すと目にも止まらぬ速さで重い斬撃を重ねるので、剣の軌道が見えても避けられない。稽古をつけられる側としてはとても怖い。
しかも僕が本気を出したところで兄さんの本気の10パーセントほどしか出てないというのだから驚きだ。
兄さんが言うには僕の実力は大抵の奴には負けないくらいには強いらしいけど、本当なのだろうか、どうしても自信をなくしてしまう。
「待ったぞ、リューク。どうせまたゼナとイチャイチャでもしてたのだろう?」
そんなこんなで庭に来たわけですが。
目の前でニヤニヤしながら言うこの細身な茶髪で彫りの浅いイケメンがアルフレッド兄さんだ。
兄さんは毎日のように僕をからかってくる。なんでも反応が面白いのだとか。とりあえず話題をそらさねば。
「遅れてごめん、今日もよろしくね」
「とりあえずいつも通り20km走るよ」
ということで走るわけですが。
これがなかなか辛いのです。何たってまだ5歳ですよ……5歳児に20kmってどんなトレーニングだよって思います。
でも兄さんがいうには20kmは少ないそうです。我ながら鬼みたいな兄だと思います。
「あしたは…ハァハァ…朝日を…見れないかもしれない…」
「ハハッ、言いすぎだ」
「冗談じゃないよ…」
「まあいい、もう少し休んだら模擬戦だ」
「…」
稽古をつけてもらいはじめてそんなにたってませんが、これだけは確信を持って言えます。
「兄さん、絶対に怒ってるでしょぉぉぉぉぉぉ!」
今日の模擬戦はいつもより激しかったです。
「ってことがあったんだよ…」
兄さんの鬼のような(?)稽古が終わると朝食です。
我が家の朝食担当はマリー母さんとヨナ姉さんですが、とっても美味しいです。
「「寝坊するからそうなるんだよなぁ」」
ランド父さんとヨハン兄さんは仲がいいです。
これには兄さんが跡継ぎだという事情があるのですがそれにしても息ぴったりです。
「寝なければ~寝坊しないんじゃかしら~」
笑顔で怖いことをさらっと言わないでください、マリー母さん。
「ハッ!私が寝坊しなくなるマジックアイテムを作ればいいのね!!」
このちょっと抜けてる感じの残念な銀髪美人さんがヨナ姉さん。
「でもおにいちゃんのねぼすけさんはいつものことじゃないかな~」
「デルタまでっ…!!」
弟までにも呆れられました。お兄ちゃんナイチャイマス…
「あ、リューはこのあと魔力制御の練習があるから。これに遅れたらお昼ご飯がないから。」
「やめてよゼナ姉さん…」
「なら遅れないことね」
フフンとかいいながらゼナ姉さんがドヤ顔を決める。
「憎めねぇ…」
「「ところで、このままだとご飯が冷めるよ(ね)」」
我が家の食卓はいつも賑やかです。
そうして家の庭でゼナ姉さんとの魔法訓練が始まるのですが、こっちはアルフレッド式・脱人間計画に比べれば楽しいですし、肉体疲労が少ないのでそこまで苦労はしません。
「リュー、とりあえず魔力を出して」
「はい」
「ん。それじゃあその魔力を塊にしてみて。形は綺麗なほうがいい」
「とりあえず球体でいいかな?」
「……やってみて」
ということで魔力を制御して球体にしようとする。
これがなかなか難しい。魔法は魔力をイメージどおりに動かすので、当然魔力もイメージどおりに動かすができるものの、一旦完成してしまえば勝手に発動する魔法とは違い、純粋な魔力。
必要とされるイメージすら魔力を見ただけでは想像しづらい。
「リュー、こっち側の魔力が凹んでる。気をつけて」
正面ばかりを気にしすぎたようです。
恐る恐る裏側を見てみるとそこには凹凸が多くお世辞にも球体とは言えないものが!!
これは一気に全部を整えた方がいいみたいです。
「ゼナ姉さん、魔力って回したことある?回せるかな」
「魔力演舞をヨナとした時にはできたはず。ただ、難しい」
魔力演舞、あぁ、ヨナ姉さんとゼナ姉さんが考えた遊びにそんなのがあった気がします。
勝手にそう呼んでいるだけなのでどう呼んでもいいみたいです。
「そういえば魔力演舞の時のゼナ姉さんは手を動かした軌跡に火やら氷やらの線を生み出してたね」
「そうだね」
「いけるかな」
「やればわかるわ」
それじゃあ回転させてみましょうか。
最初はゆっくり、だんだん速度をあげていって…あとは形を手をかざして整えるイメージで。おお、整ってきたではないですか!
「やった!できたよ!姉さんのおかげだよ!!」
そう言って振り返るとゼナ姉さんは驚いたような顔をしてから
「リューは成長が著しいから教えてて楽しい」
と言いました。
「まだまだだよ、姉さんくらいにうまくならなきゃ。」
姉さんたちは偉大なのです。簡単に超えられそうにありません。
「あのね。リューは気づいてないけど、魔力演舞でやってたのは魔力制御じゃなくて、魔力操作。今でこそ使いこなしてるけど、魔力操作は私たちでも苦労してやっと出来たの。それを見ただけでやったリューはやっぱりすごい。」
「褒められて嬉しいんだけど、次は何をすればいいの。」
「もう少しかかると思ったけれど、今のリューならいけるかも。今日はあといいから、魔力を使い切ってみて」
「魔力を?使い切っちゃうの?」
「剣術と違って魔法は使うほど威力も上がるし、使い勝手も良くなるの、その大本の魔力も使い切れば総量が増える」
「ということは、もっと大規模な魔法を使えるようになるの?」
「ん。だけど大規模魔法よりも、小規模魔法を同時に沢山使えた方がいろいろと都合がいい。そのうち魔法の並列起動を教える」
「わかったよ姉さん」
「風の魔法がいいと思うわ」
「やってみるよ」
風の魔法かぁ、風の魔力を集めて、風の矢とかいいかも。
右手に魔力を集めて、矢の形になるようにイメージ。
ここで体内の魔力が全部集まったことを確認して、上空に矢を放った瞬間、身体中に力が入らなくなり、へなへなと座り込みました。
「ねえさん、…なにが、おきたの?」
「体内の魔力を使い切ると、とても疲れる。勉強になったでしょ?」
「…うん」
「あと少しで、お昼ご飯みたい。とりあえず休んでて。大丈夫。何回も魔力を使い切れば回復も早くなるし、そのうち慣れて辛くなくなるわ。」
そのうち自分が人外にされてしまうのではないかと思って少し心配になりました。
そして相変わらずのお昼ご飯の食卓を終えると、ヨハン兄さんと森へ採取と狩りにでかけることになります。
ただ今私は森の近くに来ています
目的は…薬草の採取と狩りの訓練です
「おい、リューク、着いたぞ。ほら、そこだ」
ヨハン兄さんの指さす先を見てみると、そこには広い平原が広がっていました。一面の緑の中には一部分、紫だったり赤だったりする花やら草やらが生えています。
「すごい…」
思わず呟きました。それほどまでにこの平原のようなところは広がり、言葉にできないほどに壮大だったのです。
「な、すごいだろ?ここは俺のお気に入りでな。ここを知ってるのはお前を除くと俺が教えた父さんと母さんくらいだな…あぁ、ヨナも知ってるか」
「なんでヨナ姉さんだけ教えてもないのに知ってるの?」
「そりゃ、ヨナのやつがくっついてきたからだろ。あいつは昔からなんてーか、その、やんちゃだからな。」
「目が泳いでるよ、兄さん」
「お、そうか、悪い悪い。」
「で、ここのどこに薬草があるの?」
「全部だ」
「え?」
え、どういうことなの・・・、これが全部薬草?
HAHAHAHA…冗談でしょ?
「冗談じゃないぞ」
「どういうことなの…」
「まあ、簡単な話、ここにあるのは全部薬草として使えるやつだな。まあ、ものによっちゃ毒草やら何やらになるものもあるが。」
「ダメじゃん!!」
「ダメじゃない。お前にはここを紹介したわけだから、ここにある全部の植物の名前を覚えてもらう。あ、ついでにそこら辺の森にいる鳥も狩るぞ。」
「どれだけあるの、薬草…ってか父さんと母さんはここの薬草の違いがわかるのね…」
うちの両親はすごいです。いくつになっても勝てる気がしません。
「ああ、父さんも母さんもわかるぞ。」
「やっぱり…」
「あ、ちなみにこれがここらで1番効果の高い薬が作れる薬草だ」
そう言って兄さんがおもむろに取り出したのは綺麗な紫色をした植物でした。
「こんなに綺麗な色なら、すぐに見つけられそうだね!」
だって紫でしょ?目立つしすぐに見つけられるって。
「あ、紫の植物はここらだと1度に沢山は生えないが種類は多いからな。まあ、がんばれよ!ハッハッハ」
なんですとぉぉぉぉぉぉ!これはもう無理ではないでしょうか!
「無理でしょ…」
「見分け方を教えてやるから頑張れ」
その後は兄さんに植物の見分け方を教えてもらいながら2時間ほど一心不乱に植物を観察しました。
その甲斐もあってか終わる頃には上品質、中品質の薬用の植物がわかるようになりました。あと万能薬。
「アルフレッドとゼナから話は聞いてはいたがリュークにはとんでもない才能がありそうだな。筋がいい」
ヨハン兄さんが頭を撫でててくるが、悪い気はしないので放置しておく。
「ん、そろそろ狩りにちょうどいい頃合だな。森に入るぞ」
「わかった~!!」
「ま、こんだけ元気があるなら問題ないな。」
そうして森に入って来たわけですが、もう既に後悔してます
正直、森舐めてましたぁぁぁぁ!!
いや、もうこれはどうしようもないって。
誰の手も入ってないから真っ暗に近いし、湿っぽいし。
しかも生き物もいる。特に虫。
「おいおい、そんなんでどうするんだよ…」
「でも…」
「ま、何も言わねえから慣れろ。困ったら相談しろ、手伝うから。」
「それならいいかな…?」
そうして歩き続けると、いきなり兄さんが止まった。
「…!!(見つけた。あそこにいる鳥を狙え。できれば頭をな)」
「(えっ、どこ。見えないよ?)」
「(そっちじゃない、こっちだ。ほら、あそこだ。)」
兄さんの指さす方向に居たのは、全長2メートルほどの凶悪な顔つきをした鳥でした。
なんてものを狩らせようとしてるんだ兄さん!!
「(あっ…あの鳥でいいの…かな?)」
「(最初は弓を使えよ?外してもカバーしてやる。)」
「(わ、わかったよ。)」
カバーすると言われても。
こんな、視線だけで人を殺せそうな鳥に攻撃されたら…
(まあ、やらないと帰してくれないだろうしね…)
とりあえずやってみることにしました。
ビュッ!!
手を離した瞬間、風を切る音と共に矢は勢い良く飛び
…体に命中しました。
そして何よりも驚いたのがこの鳥。
なんと矢が当たっても死ななかったのです!!
そして鳥がこちらに気づいて、兄さんが全力でダッシュ。
そのままの勢いで首を斬り落としました。
「兄さん…弓、いらないね。」
「弓は使い勝手が悪くても弓のイメージで魔法が使えるようになるから結構意味はあるんだぞ。」
そんなふうに言われたらおとなしく弓を練習するしかないじゃないですか。
「リュー、これは家まで運ぶから手伝え」
「うん。」
そして狩った鳥を家まで持って帰ると、庭に父さんがいました。
流石に重かったので、途中からは兄さんが頑張りました。
「どうしたんだヨハン。お前ならわざわざそんなことしなくても…リューがいたのか、なるほど。お前も大変だな。」
「そんなことはないよ父さん。」
「そうだよ、僕だって頑張ったんだよ!!」
そう言って腰の袋から薬草セットを取り出すと、さすがの父さんでも驚きを隠せないようでした。
「お、おぉー…思ったより採れてるなぁ。」
「父さん、解体するから手伝ってください」
「おうよ。」
その後は兄さんと僕、そこに父さんが加わってとりあえずを解体しました。兄さんは上手だと褒めてくれましたが、嘘だと思います。だって皮に必要の無い切り傷がついたりしましたし。
そうして夕飯を食べたら、お風呂に入って父さんの書斎にある図鑑やら物語やらを少し読んで寝ます。
今日も頑張ったので、つかれました。寝ます。おやすみなさい。
-リューク就寝後、食卓-
【音声だけでお送りします】
ランド:「で、1週間経ったわけだがリュークはどんな感じだ。まずはゼナからな」
ゼナ:「魔法に関しては1週間とは思えない伸び方をしているわ…今後がどうなるかはリューク次第だけど、十分に期待できると思う」
ランド:「じゃあアルフレッド、お前はどうだ。」
アルフ:「どうもこうもないよ。視線の動きからして僕の動きのほとんどが見えてるみたいでね、まだ反応するまでに至ってはないけれど、自身なくすよ」
ランド:「そこまでなのか…」
マリー:「あら~、父さん黙っちゃったけど、次お願いね。ね~?ヨハン?」
ヨハン:「今日の夕飯に鳥が出たのは覚えてるよな?あの鳥は俺とリュークで狩って来たんだが、リュークは最初に攻撃するまであの鳥に気づかれてなかった。あと、記憶力や探知能力、あとは物わかりがいいから薬の知識も覚えそうだ。有望だな」
マリー:「ねえ父さん。リューはどの方針で鍛えればいいと思う?」
ランド:「…」
マリー:「リューは何をさせてもできるのでしょう?だとしたら全部やらせてみるといいと思うの。あの子ならきっと自分で新しいことをするから成長が止まることもないはずよ」
ランド:「マリー、ヨナ。大丈夫か?」
マリー&ヨナ:「多分だけど大丈夫」
ランド:「…全部やるぞ。気が変わった。マリーとヨナも教えてやれ。俺も教える。これで正真正銘全部だ。他に意見はあるか?…ないな?なら解散だ。」
他の人が戻っても、ランドは残っていました
ランド:「リューク、お前はもしかしなくても俺より強くなるぞ…」
その呟きは誰にも聞かれることなく夜の闇に溶けていきました