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楽園を略奪されたので奪還します  作者: 留意茶
2章:ダンジョン暴走編
43/62

ダンジョン攻略9日目前編

【B99F】


「ギャオオオオオ!」


「うるさい!」

「ヴォン!」


 現在時刻は午前の4時です。今私が何をしているかというと、溜まりに溜まったストレスをドラゴンにぶつけています。


 方法は簡単で、空を飛んでいるドラゴンをロックオンして魔力塊とエレキボールを当てるだけです。

 痺れて落ちてきたドラゴンにパラライズとエレキボールで麻痺のオンパレードです。


「レスト!」

「わんっ!」


 ドラゴンの首が落ちる。死体を手早く解体してアイテムボックスへ。

 その時に肉を800グラムほど切り取って、魔法で血抜きしておく。


 アイテムボックスから木材を取り出して、火を起こす。

 血抜きしたばかりのドラゴン肉を焼きはじめる。

 朝からドラゴン肉のステーキです。贅沢です。

 ドラゴンの肉って美味しいのだろうか。


 肉がいい感じに焼けてきたところで火から出して切り取ってレストに渡す。

 俺は塩をかけて食べることにする。


「……っ!これは、うまい!」

「わんっ!」


 レストの尻尾が凄まじいスピードで振られている。残像が……

 あ、どうせヨシュアが味見とか言い出すんだし、少しだけ残しておくか。


 =====


 午前の5時です。朝食の準備をしているとヨシュアが起きてきました。さればよ。


「ん~っ、リューク、いい匂いだね」

「ドラゴン肉だ。さっき軽く500グラムほど食べたが美味かったぞ。」

「500グラムは軽くないよ。」

「ほれ、1切れ味見してみな。」

「寝起きでお肉だなんて……!」

「嫌ならやめるか?」

「いや、食べるよ。」


 もぐもぐと肉を食べるヨシュアの顔が驚きに満ちている。


「これは美味しいね……!」

「朝食はドラゴン肉のステーキとパン、コンソメスープにする。」

「手伝うよ」

「どういう風の吹き回しだ」

「早く食べたい」


 ヨシュアの反応を見ていると、胃袋を掴むことが如何に大切なことかわかる。


「手伝ってもらってもどうしようもないからもう少し待っててくれ」



「「「「いただきます」」」」

 朝食ができました。ドラゴン肉美味しいしドラゴン狩りもしたいな……だってダンジョン攻略飽きてきたし……。


「おおおお!美味しい!肉とパンがちょうどいい具合に合うね!」

「このお肉、少しだけ下味がついているわね。塩かしら。」

「少ししか使わなかったのにそこに気づくとはさすがだな。」


 ちなみにパンは少しだけ甘めに作っておいた。

 ダンジョン内では甘味が足りなくなるからね。


「さて、今日の予定だが」

「ついに100階層突破だね!」

「そうだな…クククッ……!」

「なんで笑うんだよー。やっと100階層なんだしもっと嬉しそうにしてもいいじゃんかー。」

 ヨシュアがとても嬉しそうに言ったので笑ってしまった。


「悪い悪い、だがそこまで嬉しそうにされるとな。おっと話がずれたな。今日は昼までドラゴン狩りをしてから100階層でボス戦だ。ちょうど100で区切りもいいから今日は100階層をやったら終わりにするぞ。」


「ドラゴン狩りってことはまさか───」

「美味い食いもんは多くて困ることねえだろ?」


「ぃやったぁぁぁぁぁ!」


「軽く昼食取って休憩したらボス戦な。」


「「「「了解」」」」




【B100F】

 現在時刻は午後の1時です。緊張してます。


「ボス戦か。流石に緊張するよな。」


「ええ。あまり強くないといいわね。」


「痛い思いはしたくないよな。」


 ほかの面々も緊張しているのがわかる。そりゃあ100階層突破なんてのは一大事だから緊張もするか。


「あー、ボス戦の前にだが、お前ら、約束忘れてないよな?」


「泣かない閑古鳥亭ね!」


 あ、これは忘れてた顔だ!許さん!


「何がボスかは知らねえけどよ。全員が生きて帰るのが目標だからな?帰ったら祝勝会だ。」


「リュークらしいね」

「ボス前なのに呑気すぎるの……」

「リラックスもいいけど力を抜きすぎるなよ」


「まあ、気楽に行きましょうよ。力が入りすぎてもダメですよ」


 ボス戦は明らかに聖域っぽい場所でやるみたいですね。ボス部屋と言っても盆地ですよ……これはきつそうですね。


「よしっ。行くぞ!」


 俺は地上に帰って平和に暮らしたい。平和がいい。ジュリアと呑気に生活して平穏な生活にうつつを抜かしていたいんだ。



【ボス部屋?】


 ボス部屋には1人の男と、淡く黄金色に輝く竜がいました。


 20代後半くらいだろうか。すらっと引き締まった肉体ののハンサムな人だ。

 黒髪、青目で髪を後ろで束ねている。

 袴と刀が似合っている。羨ましい!


「よくここまでたどり着いたね。だけれども、君たちは何の用です来たんだい?返答によっては殺すよ。」


 ハンサムさん(仮)の声を聞いたカトラス学園長が反応した。

「……ん?お前、カナートか?」


「なんで私の名前を知っているんですか。」

 訝しげな顔でカナートさん(仮)が聞いてくる。


「ランドと一緒に居ただろう?俺だよ。カトラスだ。んでこっちはマナリム。」


「ああ、カトラスさんですか!」

 驚くカナートさん。


「いやあ、しばらく見ねえうちにイイ男になりやがって!憎いじゃないかこのやろう。」


「カナートさん。お久し振りです。」


 マナリムが挨拶をしたあたりで、カナートが疑問に思ったらしく聞いてきた。

「おふたりはどうしてここに?」

「ダンジョンが暴走してるのはわかるな?」

「はい。ということはまさか……」

「そのまさかだ。巻き込まれた。」


 これはチャンスではないか?ここを戦わないでダンジョンを正常化できるのでは!?


「はじめまして、カナートさん、ですか。僕はリューク・アニムスと申します。父とは知り合いのようですので単刀直入に言いますが、ここを戦闘なしで進ませてくれませんか。はやくダンジョンの暴走を直して地上に戻りたいのです。」


「そうなのですか……ですが、すぐには無理ですね。実のところ、ここはボス部屋じゃなくて、このダンジョンの唯一の安全地帯なんですよ。」


「あ、じゃあボスはいないのね。」


「ですが、浄化装置の部屋にはとても強いボスがいるっぽいんですよね。あなた達を疑うわけではありませんが、死なれると目覚めが悪くなりそうなので、そこのカレーズと戦ってもらって、力を見せてもらいたいです。いいですか?」

「「「カレーズ?」」」

 カナートさんが指さしたのは竜だった。


『いかにも。妾がカレーズじゃ。ところでカナート。退屈だぞ。はよ戦わせろ。』


「あー。別にいいですよ?」


『妾が直々に腕試ししてやろう!』


「ということで皆様。すみませんが、頑張ってください。」


 カナートさんが苦笑した。


「まあ、仕方ないですよね。」


「結界を張っておくので存分にやってください。」


 =====


 俺達の前でカレーズが人間の形に縮んでいった。

 残ったのは薄い金髪の美女。


「あー、竜化してたのか。」


「うむ。ちなみにカナートは妾の夫じゃ。さて、一対一でやりあおうじゃないか。弱いやつからかかって来ると良い。ぶちのめしてやるわ。がっはっはっは!」


 カレーズは獰猛に笑った。


 こうして戦闘?が始まりました。



 ひとり、またひとりと順調にやられています。


「ぐあーー!」

「ヨシュアーーー!」


 ヨシュアがやられました。これで残るのは俺とジュリアだけです。


「それじゃあ、私が行くわ。リューク、頑張ってね。」

「負ける前提かよ……」


 =====


「きゃあっ!」


 結論から言うとジュリアも負けました。

 にしてもカレーズさん強すぎないですか?ジュリアの攻撃を全部紙一重で躱していたし。


「うむ、なかなかであったな。惜しかったぞ。」

「むー。……ありがとうございます。」

「まあ拗ねるでない。その若さでそこまで強いのだ。誇ってもいいぞ。」

「そうですか……。」

 ジュリアが落ち込んでいる。後でフォローしておこう。

「ああ。十分に楽しかったぞ。さて、最後はお主か。」

「ええ。勝たせていただきますよ。」

「お主はなかなか楽しめそうじゃな!」


 10分後────────


「ぐっ!」

「なんじゃ、そんなものか?」

 素手の攻撃は一撃が重いし、確実に弱いところを突いてくる。

 これは格闘術のスキルだけじゃない強さがあるな。ぜひとも弟子にしてもらいたい。


 更に10分後──────


「っ!」

 やっとだ。やっとカレーズさんの攻撃を避けることができた。

「ほう。はっ!」

 2撃目は避けきれなかったが。

「ぐっ!」

 それでもカレーズさんが驚くくらいの成長であるらしい。

「お主、凄まじいスピードで成長しておるな。」


 更に20分後──────


 俺は格闘術のスキルに更に磨きがかかっていた。


「まだまだぁ!」

「ぐぬぬぬぬ!」


 ────カレーズさんと互角にやりあえるくらいには。


「お主、やるな!本気を出すぞ!【竜纏】ッ!」

「俺もここからが本番ですよ。《アクセル》《ブースト》《マジックメイル》【覚醒】!」



 ズババババ!! ズドドドドド!!


 そこからは壮絶な戦いになった。


「なるほど!さっきまでは技術を盗んでいたのか!やるな!」

「そちらこそ、なんでそんなに強いんですか!」

「妾は強いからな!ふふ~ん!」

「まあっ!うちのっ!嫁はっ!可愛いのでっ!そんなことっ!どうでもいいですけどねっ!」

「かっ、可愛さは関係ないじゃろう!」

 カレーズさんが動揺する。あら、そういうのには敏感なのね。


 折角だし時間がもったいないのでフィニッシュしましょうか。


「そんなことで動揺しちゃダメですよ……(《パラライズ》《スタンプ》)」


 右の拳同士がぶつかり合う。

 《パラライズ》の効果で痺れてカレーズさんの腕の動きが(にぶ)る。


「ぐっ!…腕が痺れてっ!?」

「《スタンプ》!」

 動かせないために中途半端に伸びたままのカレーズさんの右腕を右足で蹴りあげる。


 カレーズさんが慌てて左拳で攻撃してくる。が、遅い。


 ゴキッ!


「ぐうッ!?」

 右腕はしっかりと砕いた。


 勢いの落ちた左の拳を掴んでカレーズさんを地面に叩きつける。

 マウントポジションをとると同時に腰から素早く短剣を抜く。


「負けたく、ないっ!」

 カレーズさんが右腕で抵抗してくる。これでは止めがさせない。

「《バースト》」


 《バースト》でいきなり右腕をはじかれて完全に無防備になったので首を切り落とした。


 もちろんカレーズさんは結界の効果で死ななかったよ?



「ぐぬぬ……まーーけーーたーー!」

 美女が地団駄を踏んで悔しそうに叫んでいるのは見ていて新鮮だ。


「動揺したのも敗因ですけれど、《パラライズ》に気づかなかった時点で負けはほぼ確定でしたよね、あれ。」

「う~……。……負けは負けじゃ、認めよう。」



 =====


 現在時刻は午後の2時です。

 仲良くなったカレーズさんたちとラスボス戦の打ち合わせをしていました───のですが。


「へー、それじゃあ、お二人は父さんに頼まれて定期的に浄化装置のメンテナンスをしていたんですね。」

「ああ、そうなんだけど……。いきなり浄化装置に異常が起きてね?すぐに転移魔法でカレーズとここまで来たんだけど、瘴気が溢れていてね。結界を貼ったのまではいいんだけど、瘴気が濃くなっちゃったせいか、ダンジョンが暴走したせいか、転移魔法で戻れなくなっちゃって……。」

「それで一週間近くここに?」

「そうだよ。《アイテムボックス》には食料もあったしね。ドラゴン狩りをして瘴気を薄くしつつ暇つぶししていたね。」

「大変だったんですね……」


 いつのまにか雑談タイムになっています。


「ラスボス……」

「おお、話が逸れてしまったね。で、肝心のラスボスなんだけど……」


 さて、地上に戻る目処もたったことだし、ラスボスの強さ次第では気楽にいけそうです。

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