初めてのダンジョン
学園編2章です。
「もう朝か……」
目が覚めました。ヨシュアが珍しく俺より早起きしてます。
「珍しいな。」
「やっぱり今日が楽しみでさ。目が覚めたんだよ。」
「ほう、それはいいことだな。」
「張り切ってるよ~」
一目見てわかるくらい、ヨシュアは張り切っているようだ。
「訓練に行うくぞ。張り切りすぎて変なミスすんなよ。」
「ああ、もちろんさ。」
【訓練場】
「おお、君たち、昨日よりも魔力の質が上がっているね。そうなるとは思っていたけど、予想以上に伸びるから面白いよ。」
「ありがとうございます。」
「さあ、僕も負けないようにしないとね。訓練するよ!」
その日の訓練では学園長の結界を貫通することに成功しました。
【教室】
朝のホームルームです。学園長……もといマナリム先生が来ました。
「あー、今日は待ちに待った合同ダンジョン演習だ。君たちはおそらく初めてのダンジョンでの戦闘になる。うまいこと武術学園の生徒達と仲良くやって欲しい。彼らとは競ってはいても争っている訳では無いからね。」
「「「「はーい!」」」」
【ダンジョン前】
ダンジョンの前に魔術学園と武術学園の1年生、合わせて400人が集まっている。
今からカトラス学園長とマナリム学園長から詳細の説明を受けるようだ。
「えー、これから両学園の合同ダンジョン演習を始めます。カトラス学園長、説明をお願いします。」
「あー、とりあえずお前らには30層のボスまでをクリアしてもらうぞ。なあに心配すんな。卒業までに30層だ。30層まで行ったら自由なタイミングで卒業できるぞ。まあ頑張れ。あと、入っていく順番は任せる。さっさと固まって、入ってくほうが有利だな。」
「ということのようですので、さっさと準備をしやがってください。」
マナリム学園長、素がでてますよ素が。
まあそんなことよりジュリアだ。
「さあて、3人とも、ジュリアたちを探すぞ。」
「いや、探す必要は無いよリューク。」
「ん?」
ヨシュアの向いている方向を見ようとした瞬間────
「リュークっ!」
───見慣れた白髪が俺の胸に飛び込んできた。
きっちりと受け止めましたよ。ええ。
「おお、ジュリアー!元気だったかー?」
「リュークこそ元気そうでよかった!」
ぎゅっと抱きしめてくるジュリアが愛おしくて頭を撫でる。
「えへへ~」
やばい超かわいい。
そのまま撫でていたのだが、ふと周りの視線がこちらに集まっていることと、急に静かになったことに気がついた。
「あー、こんなところでそんなにアツアツだと……」
ヨシュアが引き攣った笑みを浮かべる。
あっ、またやらかしたのか。あちゃー。
そんなことを考えていると、周りが一気にざわめき出す。
「なあ、あの鉄の処女に抱きつかれてるの、魔王じゃね?」
「えっ、魔王と鉄の処女って知り合い?」
「おいおい、嘘だろ……なんであいつばっかいい思いしてんだよ!」
「そうだそうだー!」
ざわめきは大きくなりブーイングの嵐になった。
これは止めないとまずいな。なんて思ってたらジュリアが動いた。
「ちょっといいかしら」
訪れる静寂。
「何か勘違いしているみたいだけど、私とリュークは夫婦よ。」
ざわめく周囲の人々。
「あとさっきから処女、処女ってうるさい!私は非処女よ!」
再び訪れる静寂。何言ってくれてんすかジュリアさん。
「「「「うわぁ……」」」」
「(き、きまずい)」
「(これはひどい)」
耐えきれないっす。
「さ、リューク。行きましょ。さっさとこのダンジョン攻略するわよ!」
「お、おう」
そんな俺らの気持ちを知ってか知らずか、手をとって歩き出すジュリア。
いやーもう人が避ける避ける。海を割った気分だったよハハハ。
【B1F】
何はともあれ、ダンジョンに入りました。
さりげなく一番乗りです。なんかごめんなさい。
今知ったことですが、各グループに教員がつくそうです。
俺らのグループにはカトラス学園長とマナリム学園長がついてきました。
なんでもひとり多かったので、一番楽しめそうな俺らのグループに来たらしいです。なんて人たちだ。
1階層のモンスターはゴブリンでした。
どれもMP1の魔力塊で一撃でした。弱すぎる……
「手応えないっすね学園長。」
「まあ、10層おきにいるボスを倒すとグレードアップするから楽しみにしておけ。」
「期待してますよ。」
【B2F】
2階層のモンスターはコボルドでした。うん、弱い。
そのあとは3階層、4階層と進めていき、6階層に着きました。
「ここからは罠が出るぞ、まあ即死はしないが、気をつけろ。」
「はい、《魔力の糸》」
【B10F】
魔力の糸がなかなかのチート性能で、罠を感知できたのでスムーズに進むことが出来ました。
そして現在位置は10階層。ボス部屋の前です。
「よーし、ボス前に休憩入れようぜ!」
カトラス学園長が休憩を勧めてきた。
ボス戦で何が起こっても対処できるように、今のうちに休憩しておくのだとか。
「なあ、リューク。」
「どうした」
「俺らが強いのか?」
「相手が弱い。」
ヨシュアの言うことも間違ってはないと思うが、そうだと思うと慢心しそうなので言わないことにする。
「10階層のボスってどんなモンスターなんでしょうか。」
「それを聞いたらつまらなくなると思いますよ、ルナマリアさん。」
クロードが言うことには賛同する。ネタバレとかチートとか無双とか、面白みにかけるからな。対等に戦える相手がやっぱり一番楽しい。
「あー、敵は瞬殺だったとはいえ、これだけの距離を移動したから疲れたな。昼寝がしたい。」
「それはあるかもね、陽の光もないから余計に眠くなるんだと思うよ。」
「それならダンジョンでも昼寝できるような魔法を作ればいいと思うわ!」
ダリアさんや、それはちょっと厳しいと思うぞ。
「よし、休憩終わり!ちゃっちゃとボス戦終わらすぞー」
10分ほどの休憩をとり、いよいよボス戦!
ということで立ち上がった時に一瞬、違和感を感じた。
(なんだこの感じ。ダンジョンが脈動したか?)
他の人を見てみると、クロード、ヨシュア、ルナマリアを除いて全員が今の違和感に気づいた様子だ。
「兄様、フラグ回収乙。なの。」
「あれ、本当におきちゃったわけね。」
「だとしたら兄さん、早くボスを倒して説明をしましょう。」
「倒す前じゃダメか?」
「退路が一つだけだと困りますよ兄さん。」
「それもそうか。」
この場合は進路だと思うんだけどなぁ。
まあ、選択肢は多いに越したことはないからな。
「学園長、説明はできませんがちょっとヤバめのことが起きてるかも知れません。ボスを早く倒してしまいましょう。」
「君たちがそこまで危機感を感じることだということは相当だね。なら迷うことはないかな。ボスを倒そう。」
ボス部屋の扉を開ける。
10階層のボスはキングゴブリンとキングコボルドそしてポイズンバットの群れとゴブリン、コボルドでした。
エレキボールと魔力の糸で即座に殲滅しました。
ボスが全滅すると奥にあった扉が開き、扉の横に帰還用の魔法陣が出てきました。
「よし、終わった。じゃあ予測に過ぎないけど、今起きていることについて話すよ。信じられないとは思うけど、聞いて欲しい。」
「リューク、俺はお前がなんて言おうと変なことじゃなきゃあ信じるぜ。」
「サンキュー、ヨシュア。」
それから俺は懸念している事態について話した。
ランドとマリーを知っている学園長ズは思うところがあったのか険しい顔をし、ヨシュアは驚き、ルナマリアは自体を把握できず、クロードは信じきれていなかった。まあそんなことはいい。
とりあえずここから脱出するかどうかを決めないと。下手したら出られなくなる。
「ということで学園長、ここから脱出することを僕は提案します。」
「リュークくん、もしそうだとしたら、少しでも確実性が欲しいんだ。だから簡単に決めることは出来ない。少しだけ時間をくれないか。」
そう言って学園長ズは話をし始める。
何もしないで待っているのも暇なのでヨシュアと話すことにしたのだけれども。
「(リューク、お前まだ隠してることあるだろ。)」
「(ああ、あるぞ)」
「(悪いことは言わないから後ででもいいから教えろ。)」
「(言われなくてもそうするつもりだったさ)」
「(そうか。決して裏切ったりはしてくれるなよ相棒。)」
「(おいおい、それはないぜ……)」
ヨシュアはやはりカンが鋭いですね。ほとんどバレてるんじゃないでしょうか。
「リュークくん。やっぱり僕達としてはあと10階層でもいいから見ておきたいんだけど、どうだい?」
「後ろの人たちについてはどうしましょうか。」
「それについてはもう既に連絡を取ったから大丈夫だよ。」
「そうですか。」
「ということで君たちには済まないが、探索をしたいと思う。僕達としても信憑性は高いんだけど、確証は得たいからね。」
「「「「「「「わかりました」」」」」」」
「それじゃあ俺達は20階層目指して探索を続けるってことで行くぞ、問題ないなマナリム」
「それでいいよ、カトラス」
「学園長であるおふたりの判断ですからね、従いますよ。」
「そんなことを言って。本当は独断で決めるのが嫌だったからでしょ?」
「バレましたか。でも緊急時ですし、正しい行動だと思ってますよ。」
全員で次の階層へと続く扉の方へと進みはじめる。
「それはそうだね。僕としても今の対応は高評価だね」
「ははっ、ありがとうございま……!?全員下がれ!固まれ!」
「お、おう!」
「これは……」
「なんだ……!?」
もう少しで扉に入ろうという瞬間、扉の奥から凄まじい量の魔物の気配を感じた。
そしてその直後に、どす黒い瘴気の波が襲ってきた。
瘴気の波は渦を巻いて濃さを増し───
─────大量のモンスターを吐き出した。




