リュークの懸念、動き出す人々。【1章最終話】
学園編1章、最終話です。次に1話だけやってから学園編2章になります。
【アルカナ】
時刻は夜中の2時を回っていた。
昼間の喧騒が嘘だったかのように静寂が支配する街を全身黒装束の人物が歩いていた。
ブーツを履いているというのに足音が全く出ない。
巡回の警備たちも気づかなかったかのように通り過ぎていく。
「この街の警備もこんなものか」
呟くその人物の眼光が鋭さを増した。
「さて、ひと仕事やりますかね。残りの3人はうまいことやれるだろうか。いや、残りがダメでも私だけでも成功させるのだよ、我らが帝国と、邪神様のためにね。」
そう呟いて嗤う男は、誰にも知られることなくダンジョンへと潜っていった。
街は不気味な程に静けさを取り戻していた。
【リューク】
放課後の訓練が終わって部屋に戻ってきた。現在時刻は午後の9時。
風呂にも入ったし夕飯も食べた。後は寝るだけだが、一応父さんに聞いておきたいことがあった。
鍵を使って全員に聞こえるようにして父さんに話をする。
リューク:「父さん、俺、明日からアルカナのダンジョンに入るんだ」
ランド:「あー、アルカナのダンジョンってことは、学園の授業か。」
リューク:「そうだね。それでさ、ダンジョンで思い出したんだけど。父さんの知識に浄化装置の話があったんだけど……」
ランド:「なるほど、浄化装置が全部で四つあることはわかってるから、その反応なのか。」
リューク:「そうだよ、父さん。単刀直入に聞くけど、浄化装置って楽園に1つ、昔破壊されかけたやつと、下の世界に3つあるじゃんか。フィーネ、メエリティラ、そしてアルカナの大迷宮の最深層に。もしそれが全部壊されたらどうなるの。」
ランド:「瘴気が溢れて地上を満たす。モンスターが大量発生して瘴気が無くなるまで増え続ける。」
リューク:「一つだけでも残ったら?」
ランド:「残った浄化装置ができる限り集めるから、浄化装置の周辺にだけやたらと強いモンスターが湧くようになる。回収できない分は放置されるな。」
リューク:「ありがとう父さん。兄さん達もそんなことはないと思うけど、浄化装置関連で気をつけておいて。嫌な予感がするんだよね。それに俺が帝国側だったら浄化装置を潰してモンスターを湧かせて国を潰す。」
ヨハン:「リュークの考えることエゲツねえな」
マリー:「でも十分にその可能性はあるわね」
リューク:「フォルトゥナ、クルトゥーラの2国にも浄化装置があるからね。それに帝国…と邪神たちが楽園に攻めてきた理由がそうでもないとわからないし、ヴァニラの言ってたことも気になるんだよね。」
ランド:「ああ、なるほどな、じゃあお前達、くれぐれも無理はしないように、あと、気をつけてくれ。」
全員:「了解」
【ランド】
リュークから突拍子もないことを言われて少し焦った。
まさかそんなことをする可能性があるとは全く思っていなかったからな。
しかし本当に浄化装置を破壊されるとなれば、地上がパニックになるわけで。これはフォルトゥナだけでも手を打っておくべきだな。
「マリー、フォルトゥナに浄化装置を作るぞ。」
「コアはどうするの。」
「無くても作れる。安定性は下がるし難易度は上がるがな。」
「……リュークの言ったことが気になるのね」
「ああ。」
「まあそんなすぐになるとは思いたくもないんだけどねぇ。」
「ドミニク、何でも最善手を打つに越したことはないぞ。それに破壊されなくても浄化の効率は上がるからな。保険程度に思っておこう。」
「……そうだね。」
【ヨハン】
ふむ、リュークの言ってたことは面白いな。
「ヨナ、ゼナ、アルフ。もしかしたら明日か明後日あたりにメエリティラでモンスターが大量発生するかもしれんぞ」
「兄さん、やる気ですか」
「ああ、経験値稼ぎのいい機会だ。」
「勝てそうになかったら?」
「逃げる。」
「OK。ならそれで行きましょう?」
「んじゃあ明日からは大迷宮に潜るからな、いいな?」
「「「りょーかーい」」」
【リューク】
「思い違いだといいんだけどなぁ……」
流石に考えすぎかな、なんて思っていると、ヨシュアに声をかけられた。
「なんだ、リューク。たかだかダンジョンでびびってるのか?俺としては学園長ズの方が数倍怖いぜ!」
「ははっ、それは言えてるな。」
「このままだとテンション上がって寝れなくなるからよ、さっさと寝ようぜ。」
「ああ、そうだな。」
やっぱりヨシュアはいいやつだな。
少しだけその性格を羨ましく思いながらも、その日はぐっすりと寝た。
次章からは、ダンジョンをメインにした話にする予定です。
戦闘描写が苦手なので、場合によってはリューク無双で済ませるかもしれません。




