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勇者ハーレムに入るのは女の子の夢!

作者: nanao

- 1 -


 ミミが生まれた村は貧しかった。

 都会に出れば貧しかったと思うが、平和で穏やかな村だった。

 ミミは生まれた村が大好きだった。


 ミミの村の子ども達の仕事は朝が早い。

 陽が出る前に起きだして、明るくなると近くの川に水汲みに行く。

 どの家の子も同じ時間に起きだすので、水汲み場はちょっとした子ども達のたまり場だった。

 水を汲む順番を待つ間、仲良しの女の子と話をした。


「王都の勇者様が、大王座座身王を討伐したんだって」


「すごーい! 砂漠の主様でしょう」


「さすが勇者様よね。王都にすっごい豪邸があるらしいよ。勇者様のハーレムに入ると、お姫様みたいな暮らしが出来るんだって」


「すごーい! 勇者様に会えたら、ハーレムに入れて下さいってお願い出来るかな」


「大丈夫だよ。勇者様は優しいから、きっとハーレムに入れてくれるよ」


「勇者様に会いたいねー!」


「「ねー!」」


 女の子達がきゃいきゃい話すのを聞いて、男の子たちはムスッとした。


「お前ら、夢見てんじゃねーぞ」


「おめーらみたいなブスが勇者様のハーレムに入れて貰えるもんか!」


「「そうだそうだ」」


「あんた達なんかに聞いてないわよ! あんた達と違って勇者様は、すごーく優しくて、すごーくお強くて、すごーくカッコいいんだから。きっと女の子の願い事をなんでも聞いてくれるわ」


「ばーかばーか。おめーらなんか逆立ちしたって無理に決まってる! もし勇者様がこの村に来たら、おめーらじゃなく、俺が入れてもらうさ!」


「「「「え!?」」」」


「あんた、ハーレムに入りたいの?!」


「ばっかじゃねぇ! んなわけないだろ!! 勇者様のパーティに入れてもらうんだよ!!!」


 あんたじゃ無理無理~、と子ども達が楽しそうに囃し立てる声を、川べりの対岸の森の中で聞いていた、通りすがりの勇者はがっくり項垂れてしゃがみ込んでいた。


「勇者って、そんないいモノじゃないよ」


「「「どんまい」」」


 村に寄るのを嫌がる勇者を宥めながら引きずっていくパーティメンバーの姿がそこにはあった。




- 2 -


 大人になったミミは、念願の勇者ハーレムに入るため、王都へとやってきた。


 小さい頃、勇者に貰った紹介状を頼りに、勇者の豪邸を訪ね、面接を受ける。


 面接官は、勇者のお兄さん。

 お城のように大きな豪邸に気後れしていたミミは、相変わらず頼りない感じの勇者の顔を見て、ほっとした。


 勇者もミミを覚えていたみたいで、ミミが勇者ハーレムに入りたい、と言うと、すぐに契約する事になった。


 文字が書けないミミの代わりに、契約書は魔法書記が書いた。


 羽根ペンの姿をした魔法書記がふわふわと浮きながら契約書を書く姿は可愛いくてほっこりする。


「これでいい?」


 書きあがった契約書を勇者に渡す。

 それに目を通し、勇者は軽く頷いた。


「うん。大丈夫。

 あとはそうだな。

 うちは総勢三百人ぐらいになる。

 人数が多いから、分け前は少ないんだ。

 他の勇者ハーレムと掛け持ちする子もいるよ」


 辺境を回る勇者は、行く先々で貧しい村の女の子に、ハーレム入りを頼まれると断れない。

 あの当時も人数は多かったが、数年でさらに膨れ上がったようだ。


「お兄ちゃんはお人よしね」


 貧しい村の女の子にとって、勇者ハーレムというのは数少ない稼ぎ口だ。

 辺境の貧しい村には、行商人と勇者ハーレムと旅芸人ぐらいしか来ない。


「村に仕送り出来ればいいわ」


「ミミは大人になったなぁ」


「当たり前よ。それに、」


 ミミはにこりと笑った。


「王都まで来たんだもの。次は王子様の玉の輿を目指すわ!」


「ミミはミミだなぁ」


 程ほどにね、と言って、勇者はミミの頭を撫でた。




- 3 -


 ミミは勇者ハーレムで雑用をする事になった。

 少しその生活を覗いてみる。




 勇者ハーレムに入ったミミは、勇者について色々な事を教えて貰いました。


 勇者というのは特別な職業です。

 最低でもドラゴン級の幻獣討伐の実績がないとなれません。

 勇者のお兄ちゃんは、単独でドラゴンを倒し、最年少で勇者になったすごい人で、地味な仕事ばかりをする変わり者だそうです。


 ヘタレで変わり者なんて、かわいそう。

 でもそのおかげで村に仕送り出来るんだから、ミミはお兄ちゃんに感謝してるよ!

 お兄ちゃん、頑張って!!


 ミミは心の中で勇者にエールを送りました。





「お兄ちゃん。古書庫の虫干し終ったよ」


『ありがとう。お腹空いただろ。昼メシ出来てるから食べておいで』


「はーい!」


 仕事が決まってから支給された『魔法勇者』は、片手で掴める位小さなぬいぐるみで、勇者のお兄ちゃんをデフォルメした可愛い人形。

 それに話しかけると、いつでもお兄ちゃんから返事が来るの。


 お兄ちゃんの勇者ハーレムは総勢三百人を越えるんだって。

 全員が用事があるからと会いに行くと、それだけでお兄ちゃんの一日が終ってしまうから、会いに行かなくてもお兄ちゃんと会話出来るように、勇者の豪邸で働く人全員にこれが支給されたの。


『魔法勇者』は、お兄ちゃんの分身のようなものなんだって。

 よく分からないけど、魔法生物ならなんでもありだよね。


 王都にはお兄ちゃんの他にも勇者ハーレムがあるけど、お兄ちゃんの勇者ハーレムは珍しいみたい。


 個人的な勇者ハーレムとしてはとても人数が多いし、他の勇者ハーレムと掛け持ちが出来るところも少ないんだって。


 有名な勇者ハーレムでは、メンバーは一桁というところが多いんだって。


 その方がお手当ても多いし、気心知れたメンバーになるから安心だよね。


 お仕事の選び方も、ちょっと違うみたい。


 勇者というのは、害獣・魔物退治の専門家の中でも特別で、普通の害獣・魔物退治の専門家は地元専門とか、活動範囲が広くても一国に収まるんだけど、お兄ちゃんはほとんど大陸中全てを回ってる。

 それも、他の人が行きたがらない辺境ばかり。

 もっと派手な仕事を引き受けた方が実入りもいいのに、と、勇者ハーレムに入る事になった後、お兄ちゃんに紹介されたお姉ちゃんが教えてくれた。


 お姉ちゃんは、どうして他の勇者を選ばなかったの、と聞いたら、「付き合いが長いから、いまさら見捨てられないしね」と言っていた。


 そういうものかな。


 まぁ私は王子様の玉の輿に乗るから、他の勇者様のことは関係ないけどね。


 今は人が少なくて仕事もあまりないけど、明日出張に出ているパーティが戻ってくると、少し忙しくなるみたい。


 今日のうちに鋭気を養っておきなさい、と言われたので、もふもふの使役獣達と遊んでおこう。





なにか思いついたら、追記していきます。

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