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勇魔王

作者: 六手

小さな村で生まれた僕は勇者になった。


あるひ森の中で見つけた聖剣を手に取った僕は力を得た。


そして、聖剣を持つ勇者として王宮に招待され王様にこう言われた。


「世界の平和の為に戦ってくれ」と


僕は王様の言葉に笑顔でこう返事を返すのだった。


「勿論です」と


それから僕は戦い続けた。


沢山の仲間を作り、愛する人を作り、戦った分だけ大切な人が死んでいった。


僕は何度もこの世界を救い、何度も仲間が死んでいく姿をこの目で見た。


もう僕は、誰かが死ぬ姿を見たくないと思い始めた。


そんなある日の事だ。


僕は今まで世界の危機を救う度に王様から何かしらの褒美を貰って居た。


その時、僕は王様にこんなお願いをした。


「では、今後の事について二人で内密に話をしたいのですが……」


王様は僕のお願いに快く応じ、僕は王様と二人だけしかいない部屋に招かれた。


そこで僕は王様を殺した。


王様さえ居なければ、僕はこれ以上戦わずに済む。


僕の目の前で誰かが傷つく事も、誰かが死ぬことも無くなる。


だが、王様という存在が必要だった。国を治める者はやはり必要だと僕は思った。


だから僕は魔法を使って王様になった。


手に持った聖剣は元の場所に戻し、王様として戦いから身を引いた。


だが、世界は相も変わらず危機に瀕している。


だから新しく聖剣を持つ者を、僕はじっと待った。


そして、聖剣を持つ者が現れ、僕はその者にこう命じる。


「世界の平和に戦ってくれ」と


その言葉を聞いた青年は嬉しそうにこう答えるのだ。


「勿論です」と


聖剣を持った彼は僕と同じ様に戦った。世界の平和の為に。


そして僕と同じ様に仲間を作り、愛する者を作り、戦った分だけ、死んでいく。


彼はこの世界を何度も救い、何度も仲間が死んでいく姿を見てきた事だろう。


そしてある日の事だった。


僕は彼の労をねぎらう為に褒美を与えると言った時、彼は僕にこう言うのだ。


「王様と二人で内密にお話があります……」


その言葉を聞いた瞬間。僕は彼の真の望みを悟った。


彼の願いに応じれば自分がどうなるか、結末もわかっていた。


それでも僕は、彼の願いを快く受け入れた。


そして僕は殺された。こうなることはわかっていたことだ。


そして死ぬ直前になって僕は気が付いた。


僕が殺した王様も、僕と同じ様に思っていたのかも知れないと。


聖剣に選ばれて勇者となり、戦いから身を引く為に王様を殺し、勇者を操り世界を救おうとした。


それは世界の平和の為ではなく、自分の為にしてきたことだ。


自分の仲間が死ぬことを、自分の愛する人が死ぬことを、戦う事に疲れ、傷つくことに嫌気が刺した。


だから僕は勇者に命じたのだ。世界を救ってくれと。


自分で出来る事なのに、自分の身可愛さに他人に投げ出した。


自分の強さに溺れ勇者となり、自分の幸せの為に王様に成り代わり……


自分の為に勇者を操る魔王となっていた。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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