俺は英雄?
程なくして3人は儀式場へと到着した。
「それでは儀式を始めます。魔方陣の中央へお1人ずつ、順番にお入りください」
「それじゃあ私から行こう」
「ん?エル先にしたいの?」
「その・・・なんだ・・・子供の頃からな・・・魔法には憧れていたのだ・・・だから・・・」
「クスッ・・・いいわよ、お先にどうぞ私は後からでいいから」
エルはそれを聞くと嬉しそうに魔方陣へと歩みを進めた。
「ではエルさんからでよろしいですね?」
「あぁ」「はい」
「では儀式を始めます。・・・・と言ってもそんな構えなくともよいですよ、深く深呼吸をしてリラックスしてください・・・・」
言われるがままエルは瞳を閉じてその場でゆっくりと深呼吸を始める・・・そしてリヒティーがなにやら詠唱し始めると下に彫られた魔方陣が淡く光り始めた。
すると徐々にエルの周りに白く光る渦のような物が包み込むと、次第に光は小さくなりやがて元の状態へと戻っていた。
「・・・・・・・・はい、儀式は終了です。どうやらエルさんは陽属性の光魔法か風魔法が得意な様なので、そちらを意識して伸ばしてゆくと良いでしょう・・・」
「?今のでその人の属性や得意なのが分かるんですか?」
「えぇ、基本白く光ると陽属性、黒か濃い色になると陰属性と分類されます。そしてその場で起こる現象が得意魔法となるのです。エルさんの場合は渦がエルさんを包み込んで風が起こりましたし、色が緑ではなく完全な白だったので、光と風が得意だと分かるのですよ」
「へ~ それじゃあ複数の現象が起きる場合もあるんですか?」
「えぇ、気ままでの記録では最大で4種類の現象が同時に起こったようですね、まぁ一般的には1~2種類が普通で3種類で天才と呼ばれますし、でも例外もありまして例え得意なモノでも鍛錬しなければ意味が無いですし、火が得意と出たのに結局一番伸びたのは光魔法だったとゆう事ありますので一概に私に言われるがままで光と風だけ伸ばせばいいや、と思われるのは時期尚早だと思いますけれど・・・まぁ色々と試していけばいいですよ。気長にね?」
「なるほどぉ・・・・」
ちなみにこの世界は魔法の種類は光・闇・火・水・風・木・土・雷・金・時の10種類あり、属性とゆうのは陽属性ならば補助・回復・支援などの効果の魔法が愛称がよく、逆に陰属性は攻撃特化といったところだ。しかし属性が陽だからといって攻撃の魔法が使えないとか弱すぎるとゆうわけではない・・・
前も言ったがこの世界では今はオリジナルの魔法より過去の英雄や偉人が使っていた魔法や技なんかをそれぞれの流派に所属して覚えるのが当たり前なので、その流派のなかで同じ魔法を使った時に陰と陽では威力に際が生じるとゆうことなので、実際には単純に愛称がいいだけと記憶すれば良いのだ。
「それでは次にシノブさんどうぞ」
「はい・・・」
(はてさて俺はいったいどんな魔法が得意やら、やっぱりここは時魔法が使えて『ザッワー〇ド!むだむだむだむだぁ~』なんて感じな事してみたいなぁ~、それともここはオーソドックスに火魔法が得意で『それはメラ〇ーマではない・・・・メラだ!』ってゆうのもいいなぁ)
そんな事を考えつつも魔方陣の真ん中で深呼吸を初めリヒティーが詠唱しはじめ魔方陣がどんどん輝いてゆく・・・・しかしいくら経っても志信の周りには何も起こる気配がしなかった。
(・・・・・・・・・あっれれぇ~おっかしぃぞぉ~? 何~で俺の場合何も起こらないのかなぁ~ ・・・・・・・・本当にどうしたんだ!?何で何も起きない!何か俺がミスったか?それとも俺には魔法の才能が無い?そんなのいやだぁ~!!!ワンタジー異世界に来て魔法が使えないってそれどんな縛りプレイ!?魔法っていったらファンタジーの中での重要なファクターじゃん!剣も弓も下手な俺が唯一輝けるかもしれないモノだってゆうのにぃ~!!どぼじで・・・どぼじで・・・こーなるのぉ!)
どうしていいのか分からず。志信はこの事態に終には膝から崩れ落ち泣きはじめ、エルもどうしていいのか分からずオロオロするばかりだったが、リヒティーだけは魔方陣の光が治まると何やら考えこんだ様子だった。
「ほっほら、志信・・・元気を出すのだ。魔法ができなくてもいいではないか、その・・・人には向き不向きがあるのだから・・・・な?な?」
「えっっぐ・・・ヒッグ・・・・そんな事言われでもぉ・・・・私には・・・グスン・・・才能なんか1つも無いもん・・・・うわぁぁぁ~ん」
泣き崩れる志信を必死に励ますエル・・・そんな2人の間にリヒティーが割って入って来た。
「あの~絶望の最中に申し訳ありませんが・・・シノブさんの儀式は成功してますよ?」
「え?」「は?」
「でっでも・・・今、エッグ・・・・何も起こらなくて・・・」
「もし魔法の才能が皆無な人がいたら、魔方陣すら発動しません・・・恐らくですがシノブさんは無属性なんだと思います」
「「無属性?」」
「はい・・・無属性とは陽・陰とは別のどちら要素も持つと言われている属性です。」
「それが私の属性だと?グスン・・・でも・・・どうして適正のある魔法が起こらなかったんですか?」
「それについては私にも分かりません・・・無属性っと言ったのも伝承の中にそういった記述があったのを覚えていたのでそう判断したまでです。けれど、シノブさんの儀式は成功したのは間違いないですし魔法は確実に使えると思いますよ?」
「えっと・・・その伝承って?」
「これは歴史とゆうよりおとぎ話の類なんですが・・・」
そう言いながらリヒティーは神話の話を始めた・・・。
遥か昔この世界で初めて英雄と言われる人物がいました。彼は類稀なる力と知恵を持ち底知れぬ魔法の数々でこの世界に巣くう闇と戦ったのです・・・・。
闇はこの世界を創りし神々を封じ込め、破壊と殺戮をもって世界を暗黒へと引きずり落とし世界を都合のいいように改変し命をもて遊んでいました。
そんな時に1人の若者がこの世界に突如現れ世界の闇を祓い、神々を助け、終に世界に平和を齎したのです。
「っと、ザックリとですがこれがこの世界でもっとも古い神話になるのですが、このお話の冒頭部分でこの英雄も魔法の解放儀式を受けるのですがその時の謂れと今シノブさんに起こった現象と略同じなんですよ」
「・・・・えっと・・・略ってことは違う点があるんですよね?」
「えぇ・・・でもこれはおとぎ話の類ですからね・・・お話では曇った空が教会の上だけ晴天になり、荒れた海が静まり、英雄が歩いた場所に草木が生え、震える大地が静まったっとありますからそっくりそのまま同じでは無いのでしょうが・・・まぁ可能性ってことですよ」
「可能性ねぇ・・・・」
「大丈夫です!安心してください。確実に儀式は成功しましたから絶対に魔法は使える用になっていますから司祭である私が保障いたします。」
「ホントのホントに成功してますぅ~?実は失敗してるだけじゃあ・・・」
「大・丈・夫・です!!安心してください、たとえ万が一魔法が使えなかったとしても、お布施は返しませんよ?既にいただきましたし、教会を使用したのは間違いないんですから」
「うわっアクドイ・・・・リヒティーさんは金の亡者ですか!」
「亡者じゃありません!神に仕える司祭です。こんな可愛い亡者がどこにいるって言うんですか」
「今、私の目の前にドヤ顔でいますが・・・」
「はて?私には見えませんねぇ~」
「では鏡を貸しますよ!」
「鏡を見ても美しい私が映るだけですが?」
「ック・・・このナルシストの守銭奴め!」
「クックックック・・・イニシアチブはこちらにあるんですよ、お分かりですか?今夜の宿の部屋割りも食事も私の匙加減でどうとでもなるんですよ、その辺をお忘れなく・・・」
「うっ・・・ううっう・・・こんな阿漕な司祭に私たちの貴重な財産が・・・ヨヨヨヨ・・・」
「・・・・・・・・・・・・っで、この三文芝居はいつまで続くのだ?」
ノリノリで悪役演じるリヒティーと、しおらしい乙女を演じる志信を他所にエルは冷めた表情で見ていた。
「酷いなぁ~エルゥ~・・・もうちょっとで『そのお金は無くなったおっかさんの残してくれた大切なお金なのに・・・』ってなる展開だったのに」
「そうですよ、それで今度は私が『こんなちっぽけな金じゃ足りないですねぇ、しょうがない足りない分はお前さんの体で払ってもらおうか!げへへへへへ』ってなって」
「そして私が『あ~れ~誰か助けておくんなましぃ~』ってなるお約束な場面なのに、エルちゃんノリが良くないよ?」
「はぁ~・・・そんなこともうどうでもイイだろう?結局、志信の儀式は成功したのだろ?こんな茶番してるとゆうことは」
「えぇもちろん、シノブさんも今なら分かるでしょ?」
「うん、最初は分からなかったけれど今ならなんとなく分かるわ・・・体の奥底に何か力がゆっくりと渦巻いている感覚があるもの・・・」
志信はそう言いながら自分のお腹の辺りをゆっくりとひと撫でした。
「それではいい加減私は休みたいのだが・・・腹も減ったし、何より今日は始めての事ばかりで眠い・・・」
「ふっふ・・・それでは宿泊所の方へ参りましょうか、お部屋の方は向こうに着いたら用意させますので先にお食事にいたしましょうか」
「はい、分かりました。ところでリヒティーさんこちらで湯浴みができる所か、無いなら井戸ってありますか?体を洗いたくて・・・」
「湯殿でしたら、教会の向かいの道を300㍍程東に行った所に籾殻の所がありますが・・・遠くていいのであれば魔法ギルドの近くに蒸し風呂があります。井戸は宿泊所の裏手にございますよ」
「・・・・うぅ・・・籾殻か・・・・遠いのはイヤだし・・・あのぉ~ お湯が張ったのは無いんですよね?」
「この町ですと貴族の方のお屋敷か、最高級のお宿に数箇所あるくらいで一般人がおいそれと入れる場所は・・・・シノブさんとエルさんはそういった湯殿のご利用の経験があるんですか?」
「いえ・・・村で住んでたころは井戸水を汲み上げて、小さな木の湯船に溜めて入っていたもので都会の宿屋ならあると思っていたんですが・・・昨日の宿はお湯をタライで一杯4クートでしたから驚いていたんですよ」
「あぁ・・・なるほど、シノブさんたちも渡り人の技術の噂を聞いたのですね・・・曰く異世界には自動でお湯がたまり毎日入れる風呂があるとか、蛇口なる物を捻ると無限に水が湧き出すとか、鉄の船が空をゴォォォーとゆう音を立てて飛ぶとかそんな話ですよね?私も子供の頃、田舎に住んでいた時には都会に憧れました。都会には渡り人の技術で作られた色々な物で溢れていると・・・でも現実はこんなものですよ、そんな技術を使えるのは特権階級の人間か軍人だけですもの」
「?・・・渡り人が来て数千年経つのに未だに一般まで技術が降りてこないってのは不思議ですねぇ・・・」
「まぁ当たり前の事ですよ、渡り人の知っている物を作るのって物凄く難しいらしいですから・・・それに殆どの国は便利な道具より軍事兵器を優先して開発していますから、一部でも軍事に繋がる類の物の情報は決して外に漏れませんからね、どの国でも渡り人の知識はその国の最重要機密でしょうから・・・」
「なるほど・・・・」
(しかし風呂のレベルが籾殻や蒸し風呂って室町時代か江戸時代レベルじゃねぇか!いやそころだってお湯の風呂はあったのにぃ、クソッただ湯を沸かす事にそんな目くじら立てるか普通?魔道具があるならそれでチャチャ~と湧かせられるだろうに・・・はぁ、こりゃ当分風呂は無理そうだなトホホォ~・・・・・)
そんな会話をしつつ『そんな事よりお腹が空いたぁ~』とせがむエルに押され3人は宿舎へと向かった。
ちょい長めになりました。こう・・・書いていて思うんですが、この作品このままのペースだとすっごく長くなりそう・・・・最初は30話くらいで終わるつもりだったんだけどなぁ・・・ まぁのらりくらり連載続けますので、今後とも御ひいきお願いいたします。 m(_ _)m