今日から俺は!?
眩しい朝日の降りしきる中、エルと志信は宿を出て町中を歩いていた。
「ところで今からは何処に向かうんだ?」
「はい、冒険のギルドに向かおうと思います。すみません・・・」
「冒険のギルド?教会で魔法を使えるようにするんじゃないのか?」
「はい、教会はギルドで登録してからでいいと思いましてごめんなさい・・・」
「ギルドのほうが優先順位が高いのは何でなんだ?」
「はい、ギルドはそれぞれのレベルにあった仕事を斡旋してくれる所でもあり、身分証も発行してくれるので町や村に入る時にいちいち質問されたり検分されたりが無くなるらしいです。すみません・・・」
「なるほどな・・・たしか、じい様から聞いた話だとギルドって種類が沢山あるんじゃなかったか?」
「はい、ギルドには"冒険"魔法"商業"海洋"炭鉱"の5つありまして今向かおうとしている冒険のギルドは傭兵・魔物討伐・お使い・護衛・採取などの様々な依頼を受けれます。但し冒険のギルドは町や村での商いをしたり、海上貿易の護衛とかはありません。商売をするには商業ギルドの登録が必要で、海上なんかの特殊な場所での輸送・貿易・護衛は海洋ギルドの登録がしてないと受けれなかったりするみたいです。ごめんなさい・・・・」
「ん?ギルドって複数掛け持ち登録ができるのか?」
「はい、ギルドは誰でも登録可能で掛け持ちOKなんですが登録時に簡単なテストや試験がそれぞれのギルドであるのでそれをクリアーしないと登録できないみたいです。すみません・・・・」
「ほほぅ・・・・・・・・んっ、もう満足したから口調を戻してもいいぞ!とゆうか周りの奴らからなにやら注目されているみたいだから、どちらかとゆうと戻してくれそれと顔の傷もな」
「はい、ありがとうございます。エル様・・・・」
昨晩のエルによる殺人的コンボの摂関により志信の顔はボコボコに腫れあがり、無数の引っかき傷で元の美しい顔の見る影も無かった。
そしてどうやら志信は朝まで土下座姿勢のまま『ごめんなさい』『すみません』を延々言わされ続けられたようだ。結局2人は注目されるのを避けるように通りから人通りの少ない路地に入り志信の傷を癒すことにした。
「ふぃ~・・・・生き返るぅ、やっぱポーションってスゲーんだな!傷に掛けても飲んでも効き目があるってのはさすがファンタジーの世界だな」
志信はアイテムBOXから取り出したポーションを顔に降りかけ残った分を飲むとあの惨たらしい傷跡は完全に消え、昨日の美しい絶世の美女へと戻っていた。
「なぁ顔は元に戻さないのか?このままずっとそのままなのか?」
傷を癒し鏡で顔や体に跡が残っていないかチェックする志信に対して、エルは何処と無く寂しげに話しかけてきた。
「ん~・・・ずっとのつもりはないけどなぁ・・・・けど先っきからさぁ"盗み聞き"のスキルでずっと町中の声を聞いていたんだがな」
「うん?"盗み聞き"のスキルってたしか町に到着する前くらいに覚えた遠くの声や、小さい声なんか聞けるスキルだっか?」
「あぁそうだそのスキルだ。そんでなぁ・・・・さっきから俺らスッゲー注目されていたろ?」
「そういえばそうだな・・・とゆうかそれは、お前が酷い顔をして変な喋り口調だったからではないのか?」
「いや、どうやら主に注目されていたのはエルの方みたいだ。」
「私をか?何故だ。私の格好は変なのか?それともエルフはここでは珍しいのか?はっ!もしかしてこれがじい様が言っていたハーフの差別ってやつなのか!!?」
「違う違う・・・・理由は簡単、エル・・・昨日お前は何をしたか覚えているか?」
「は?昨日?そんなの簡単だ。町に来て志信が連れ去られたから助けに行ったそれだけだ。」
「はぁー・・・・その助けた行為がとゆうか、その過程がダメだったんだ。」
「過程がってどうゆうことだ?私は入場の審査を終えて直ぐにお前が連れ去られた方へ向かったが、あまりにも人が多すぎてなぁ・・・残念ながらお前を見失ってしまったから手当たりしだにそこら辺の奴らに志信が何処に連れて行かれたのか聞いただけだぞ?」
「そう!その手当たりしだいに聞いた行為がダメだったんだよ!!エル・・・人にな質問する時に胸倉掴んで話したり、知らないって言った人を投げ飛ばしたりしたらダメに決まっているだろうが!この阿呆が!!」
志信が"盗み聞き"のスキルで聞こえた話を整理すると、どうやらエルはあの兵士の詰め所に来る2時間の間に『志信は何処に連れて行かれたのだ!』やら『今、兵士が連れて行った者は何処にいる』など数十人に無差別に胸倉を掴んで聞き出し、『知らない』や『何の話?』など答えてくれない者を問答無用で投げ飛ばしたり組み伏せたりしたらしい、そのせいでエルの容姿はこの町の住人に知れ渡る事となったみたいだ。
「なっ!?だって!緊急事態だったではないか!!私だって凄く心配したんだぞ・・・お前が殺されてしまうんじゃないかって、だから急いで・・・・頑張って・・・それで・・・それで・・・グスッ、凄く寂しくてっ・・・不安でっ・・・・だからっ!・・・ヒッグ・・・だからっ!!・・・」
大声で志信に怒られたエルはボロボロと大粒の涙を流しながらも、泣くのを精一杯に堪え顔を真っ赤にしながら志信を真っ直ぐ見ながら答えた。
(!!!!!!!・・・・・・エル・・・・・)
「・・・・・・ごめん・・・俺が悪かった・・・俺が自分の容姿のことをもっと注意しておけばあんな事にならなかったもんな・・・ごめんな・・・」
「グスンッ・・・うっ・・・うっ・・・そうだよ!全部志信が悪いんだ。ヒッグッッ・・・ううぅぅぅ・・・・うわぁぁぁぁぁん!!!!・・・・・・・・」
そして志信は、ばつが悪そうな表情をしながらエルに謝りながら近づきそっと抱きしめるとエルは志信を罵倒しながら泣きじゃくった。
(そうだよな、エルはずっと不安だったんだろうな・・・生まれた場所を離れ、唯一の家族を失い未知な場所で見るもの聞く物全部が新鮮で驚きで不安で・・・すっと虚勢を張って、俺だけが頼りな筈なのに俺はそれを忘れていたんだな・・・エルにとっては不安で仕方ない場所だけど俺は不安より好奇心や異世界に来た実感を得れるのが楽しくて嬉しくて・・・・ホント最低だな俺・・・・)
志信はその後エルが泣き終わるまでエルを抱きしめながらゆっくりと頭をなでつつ路地裏の階段に腰掛けていた。それから昼ごろになりようやくエルは落ち着きを取り戻した。
「その・・・すまなかった。全部志信だけのせいではないのに・・・・その・・・ごめん・・・なさい・・・」
「いや、俺のせいさ・・・エルが不安なの分かっていたのに自分だけはしゃいでしまって、ごめんな」
「・・・そっ・・・それじゃあお互い様ってゆうことだな!うん、もうこの話は終わり!はい!!終了」
照れ隠しなのか、エルは急に立ち上がると気恥ずかしそうにもじもじしながらも自分の頬を叩いたりしながら大きな声を出し志信から目線をそらし後ろを向いていたが、その顔は耳まで真っ赤にしていた。
「ふふふっ・・・・そうだな、それじゃ遅くなったが冒険のギルドへ向かうとするか!」
「そっそうだな、よしでは向かうとするか!・・・・しかし・・・その・・・志信よ話は最初に戻るが、結局いつまでその姿なのだ?」
「あぁ、そうだったなその話の途中だったな・・・・結論から言えば暫くこのままで、細かく言うならこの町を出るまではって所だな」
「何故だ?別に元の姿に戻る必要は・・・騒ぎになるから無理だろうが、男に戻った方がイイのではないのか?」
「んーとな、その説明が先っきの話になるんだが・・・エルが目立っていたって事は理解出来たろ?」
「・・・あぁ・・・それは分かった。で、それとその姿理由がどう繋がるんだ?」
「それがね・・・どうやらエルが目立っていたからあの時に俺が登場したのも目立ちゃったみたいで、それでな・・・兵士と揉めたエルフと美女の2人組みの噂が広まっているらしくて、それで俺ら注目浴びちゃった訳なんだわ、だからこの姿を変えちゃうと逆にあの美女はなんだったのかってさらに噂が広まりそうだし、さっきの通りでの注目を考えればエルの顔は知れ渡っているだろうから俺がいないと不審に思われるかもだし・・・それに昨日さ、宿を探すのにけっこう時間掛けて町をさ迷ったろ?それでこの顔も結構な人に目撃されてるらしくて変えるのに変えられないってことなんだ。まぁこの国は女性上位主義らしいし、役にたつだろうしな!」
「では、その姿でギルドに登録するのか?男だとばれないか?」
「その辺は大丈夫だと思う・・・爺さんの本によればギルドの登録カードには所属のギルド名と自分の名前とギルドランクと何処の町での登録したかしか記入されないって書いてあったから大丈夫だと信じたい・・・万が一性別が表示されるように変わっていたら、建国際のために女装してきてこれは偽乳ですって言えば大丈夫じゃないかな?一応下はいじってないし・・・」
「そっ・・・そうか・・・まぁお前がそれでいいのならそれで良いけど・・・な・・・」
「うわっそんな蔑んだようなような目で俺を見るな!俺だって結構恥ずかしいいんだぞ?」
「それにしては昨日は結構ノリノリの様子だったけど?」
「あっあれは演技だって!本心じゃないからね!?わざとだから、ねぇ信じてよ!ねぇ!!」
「あーはいはい、信じてる信じてる・・・私は志信のこと、とても信じてるよ~(棒読み」
「うわ~ん絶対信じてない!その口調、絶対信じて無いでしょ!?ねっねっちょっと待って話を聞いてくれぇぇぇ~!!!!」
2人はそんなやり取りをしつつ冒険のギルドへと向かった。
なんか、かなり刻んで話を進めていますが暫くはこんな感じの展開が続くと思ってください。 でわ!ノシ