大脱出!?
(こんにちは、今週のお家探訪のお時間です。
いや~すばらしい佇まいですねぇ、床と壁は冷たく無機質な石で覆われていて・・・さらに寝床は床に直接ござを敷いただけのシンプルな造り、部屋はワンルームの窓無しで・・・おや?トイレはこれまた懐かしい中世ヨーロッパスタイルの壺式トイレですね
排泄し終わったら自分で隅の水が流れている穴に入れる親切設計で、そしてなんと言ってもこの部屋の特徴はこの玄関!!
鉄の棒で格子状にできていて風通しが抜群!向かいの部屋も一望できてなんとも言えない造りをしていますねぇ、いゃ~こんなお家見たことがありません・・・・・・・・・・・
フッフ・・・アハッ!・・・アハハハハハハハハハハ・・・・って!どんなにオブラートに包んでも分かるわ!!独房だよ!牢屋だよ!捕まったナウだよ!!
何でこの世界はこんなにも不細工に冷たいの?俺の顔ってそんなに醜い?オークって罵られるほど酷いの!?ブタッ鼻でもないし、森での特訓でかなり痩せたはずなのにステータスの容姿が変化しないといつまでも不細工といわれ続けるの!?
もういやだぁぁぁぁぁぁ、こんな世界酷すぎるよぉぉぉぉ!俺にどうしろって言うんだぁぁうわ~ん!!!)
志信は床に突っ伏し泣きながら床を叩き絶望していた。素っ裸の姿で・・・・
この独房に連れてこられる間は女性兵士3人に拘束され通り過ぎる町の人からは指を差されたり、ヒソヒソと何か囁かれたりする姿を尻目に連れてこられ、独房に入るや否や武器やアイテムBOXを取られたうえに服を無理やり剥ぎ取られたのだ。
しかも兵士たちは去り際に『なんと醜い・・・』や『はぁ、門に戻る前に体拭かなきゃ臭くて叶ないまねんわ』など口々に罵倒を浴びせられたのだ。
志信がドMの豚だったならば、『ブヒーごほうびありがとうございます!』になるのだろうが残念ながら彼にはごほうびではなく、ただのダメージになりこうして打ちのめされているのだった。
(せっかく初めての異世界の町を見れる!って楽しみにしていたのに・・・・どうしてこうなったんだ。)
さて、どうして志信がこのようになっているのかは数時間前に時間を戻って話さねばなるまい・・・それは森を抜けて街道を2日かけて歩き続け、ようやく町の城壁が見えてきた時の事だった。
通り雨だろう・・・空は急にどんよりと曇ると大粒の雨が降り出し、志信とエルはアイテムBOXから合羽というかポンチョというのか・・・フード付きの雨具を取り出し着込んだのだ。
そうして町に向かって歩いていると街道には凄く長い行列が出来ていることに気づき、2人はその列の最後尾に並んだ。
「あの~すみません・・・この列って町に入るためのモノで合ってますか?」
「あぁそうだよ、あんたらも建国際を見に来たんだろ?」
「「・・・建国際?」」
「おや?違ったのかい、明後日には女王様も来られるしあんたらもそれ目当てだと思ったんだけど・・」
「えっ・・・と・・・俺らは、遠くの田舎から出てきただけで・・・その・・・この辺で大きな町ってどこか聞いたらここを教えてもらったので来てみたんですが・・・」
とりあえず志信はあまり不自然ではない程度の言い訳でその場を繋ぎ、できるだけ情報を手に入れようと考え付いたのだ。
「なんだい、そうだったのかい・・・ならちょうどイイ時期に来たもんだねぇ」
「アハハハ、そうですねぇ・・・ところで話は変わるんですがいつも町に入る時ってこんなに並ぶんですか?」
「まさか、そんなわけないどろう?建国際が近いから出入りのチェックが厳しいんだよホントまいっちまうよねぇ」
そう言いながら前を向くおばさんに連られて志信も目線を門の方へ向けるとあることに気づいた。遠めで分かりづらいが、門にいる兵士たちが皆女性なのだ。しかもこれだけ離れていても分かる程美人でグラマラスな者が多い、それを見て志信はなにやら思いついた顔をした。
「やっぱりあれですねぇ、美人な女性兵士が多いですねここは・・・」
「そりゃねぇ、なにせこの国は女性上位主義の国だし何より明後日には女王様や王国の騎士団様もこられるだろう?だから余計に美人処を集めているんじゃないかい」
「あぁ、やっぱりそうなんですか・・・」
(ほほぅ・・・この国は女性上位主義なのか、すると男性のヒエラルキーは下なのか珍しいな・・・)
「そういえば今年は建国して何年目でしたっけ?」
「えっ・・・ん~たしか700年目の区切りの年だからって事で、今年の建国際は革命の始まりのこの町ムリェールに女王様が来られる事になったはずだよ」
「へぇ~・・・それじゃ俺も女王様を見れるかもしれないんだ。大層お美しいんでしょうね・・・」
「そりゃ~ねぇ、何せこの国では美しく、美人であればあるほど税は安くなるし上手くすればお城で働けるかもしれないしねぇ、だから余計に周りの村から女・男関係無しに顔に自身がある者が集まって来ているから余計に人が多いのさ」
(女・男関係なし?あれ?女性上位主義なのになんでだろう・・・)
「男もですか?」
「あぁ、男って言っても外見は女性に見える男だね・・・一般的なハンサム顔やイケメンではないけどね」
「はぁ・・・つまり女顔で美人だったら男女関係無しなんですか?」
「まあね、いつから始まったのか知らないけどより美しい外見の子を作るためにって事で女顔の男を婿にした女王様がいてね、それからは男でも化粧したり女物の服を着たりする人も増えたらしいよ」
「へぇ~・・・」
(国家で男の娘育成とかすげぇな・・・個人的にはそのてのネタは好きだったけどね・・・まぁいいか)
「ところでお前さんたちはあの噂聞いたことあるかい?」
「「あの噂?」」
「ほら、何十年~数百年かに一度異世界から渡り人が来るっての聞いたことがあるだろう?それがつい2年程前にいくつかの隣国で大量に渡り人が来たって噂さ、何でもその渡り人の知識で複数の国では軍備強化していて近々戦争が起きるんじゃないのかってやつだよ」
「!!?」
(それって絶対クラスの奴らだよな・・・時期から考えればまず間違いないと思うが・・・)
「せっ戦争ですか・・・怖いですねぇ」
「ホントにねぇ、何百年か前に来た渡り人達の知識で戦争になったっていうのにまたなると思うと嫌になるねぇ・・・なんでも隣国では渡り人を投獄して無理やり知識を引き出してるって噂さね、いくら異世界の人間でもちょっと可哀想と思うんだけどねぇ」
「確かにちょっと可愛そうですよね・・・・・・」
(なるほどな・・・と、するとクラスの連中ほぼ全員が捕まってると考えた方がいいのかな?まっ同情はするが助けてやろうとは到底思えんけどな
ある意味自業自得だし・・・もしもあの時俺も一緒に転移したら俺も捕まっていたと考えると仲間はずれにしてくれてある意味感謝だな!)
そんな世間話をしながら列に並んでいるとようやく志信達の番になった。そして現在に至るというわけだ・・・。
(クゥ~~~・・・・・・・・・よしっ!絶望終了!!悩んでいてもしかたがないし、ここから脱獄するのは前提としてどうするかだが・・・・う~ん・・・・)
志信は部屋を隅々まで調べ考え始めた。
とりあえず今の手持ちは・・・・足枷・ボロイござ・排泄用の壺だけだ。まず先に確認すべきは・・・
志信は足枷に手を翳し"なんでもできる!"のスキルで土に代えてみることにした。そして・・・いともたやすく足枷は土くれへと変化した。
「おいおい・・・ここは重犯罪者用の牢屋じゃねえのかよ・・・」
あもりにも簡単に足枷が外れてしまい戸惑いつつも今度は鉄格子も変えようとすると、こちらもスキルが発動しあっけなく牢屋からの脱出を成功してしまった。
(別に脱出する穴にジョーンやハリーといった名前を付けるほどの映画みたく何年も掛けるつもりは無かったけどもうちょっと歯ごたえが欲しかったような、寂しいような・・・まぁ成功したんだし良しとしよう・・・
さてと、ここからが問題だが一番は脱獄したことさえ気づかれないのがベストだけどどうするか・・・それとアイテムBOXの在りかと見つからずにこの建物からの脱出、この3つが難問か・・・
宿で待つようにエルに言っておいたけど恐らくエルは必死に俺を助けようとしてくるだろうし、早く合流しなくちゃ・・・・どうするか・・・・ん?、兵士の声か?)
志信はスキルを使い気配を消し足音を立てないように牢屋の外の通路を出入り口の扉まで行くと、兵士達の会話が聞こえてきた。
「あ~あ、明後日の警備もここなんて最悪・・・せっかく女王様やウェルキエル様やアスモデル様たち黄道十二騎士団がお見えになるのに・・・・はぁ~あ・・・」
「ぼやかないぼやかない、これも仕事よ・・・それに単なる式典なんだから行ったところで『彼方美しいわね、どう?騎士団に入らない?』なんて事言われると思ってんの?」
「あっひっどーい、分からないじゃない!もしかしたらって」
「ないない、そんな夢見たいな事起きるわけ・・・・」
彼女達が和気あいあいと話していると、上から誰かが走って下りけ来る音が聞こえてきた。
「ッ・・・ハッ・・・ハッハッハッ・・・っ貴方達!至急上まで来て、変なエルフの女が騒いでいて大変なの!他の兵士は門の審査で人が足りなくておねがい手伝って!!」
「「!?っ分かったわ!直ぐに向かいます!!」」
兵士達は慌ててガチャガチャと音を立て上へと上って行き、やがて人の気配はしなくなっていた。
(今たしかエルフの女って言っていたな・・・間違いなくエルだろうな・・・早くしないとエルまで捕まる、そしたら余計に脱出するのが大事になってしまうしどうすれば・・・・)
志信は悩みながらもとりあえず牢屋からの扉を開け、兵士達の待機所に入った。
前回TS回と言ったな!あれは嘘だ!
・・・・・・ごめんなさい、書いていたら意外と話が長くなったので次回こそTSかいです・・・たぶん・・・・