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超短編

熊の子ベア

作者: よる

外は嵐でした。

雨と風がごぅごぅ怒り狂って暴れています。

木々は彼らに晒されて、体がもげるような恐怖のダンスを踊っています。

そのすぐそばの、岩と地面の隙間に潜り込んだ熊の親子がいました。

恐ろしい台風の到来に、お母さんにべったりとくっついて縮こまっていた、熊の子ベアがふと目を開けました。

頭を動かせて、口をお母さんの耳元に寄せました。

雨と風がうるさいからです。

「ねえ、おかあさん。はやく晴れるといいね」

「そうね、ぼうや。恐いの?」

「ううん。おかあさんといっしょだから平気だよ。でもね」

はぅっとベアはため息を吐きました。

「お腹が、空いたの。だから、晴れたらいいなって。そうしたらお山のふもとの渋柿のところにゆけるから」

おかあさんは目を見開きました。

「渋柿でも、もうすぐ食べられるよね。甘くなくても僕、もう平気だよ。きっと、もう食べられるほど大きくなってるよね」

ベアは思い出していました。

細い木には小さな実が実っていました。

もうすぐ、あれが食べられる。

晴れたら、採りにゆこう!!

お腹が空いて、お腹が空いて、渋柿だっていまならきっと美味しく食べられると思いました。

「そうね、ぼうや。・・・晴れたら探しにゆきましょう。だからいまは、おやすみ・・・」

ベアは大きな実を空想していましたが、おかあさんは違っていました。

おかあさんには嵐に枝ごと持ってゆかれた無惨な木の姿がみえていたのです。

「・・・おかあさん、お腹空いて、眠れないよ?」

「晴れたらたくさん歩くから眠るのよ、ぼうや。甘い柿の実の夢でもみるといいわ・・・」

晴れたら、たくさん歩かなくてはいけません。

食べ物が見つかるまで、どこまでだって、いつまでだってーーー。

ベアをお腹の下に抱きしめて、お母さん熊は隙間から外を見ました。

冷たい嵐が続いています。

「どうして・・・」

憎らしげに、おかあさんは嵐を睨みました。


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