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人生を決める滑り台   作者: お父さんはエセ作家
1章~生後~
9/12

ボニーに首ったけらしいよ

 ボクは、兵士の声に気づいていないかように、ゴブリンの肩を叩き、右の方向を指差した。ゴブリンもそれに従い、動き始める。


「お、おい!聞こえないのか!止まれと言ってるんだ!」


 近づいてきた兵士が剣を抜いて走りだした為、慌ててもう1人の兵士も、ボクたちの方へ走りだした。


「動くな!聞こえなかったのか?止まれと言ってるだろうが!」


 ゴブリンに追い付き、後ろから剣を首筋に当てようとしたが、右肩の上から出ているボクの目と合うと、慌てて剣を納めた。そして、ゴブリンの肩を掴んで留まらせる。


「お、おい!お前!何を担いで……こ、子ども!?」


「どうしたモリス?いきなり剣を抜いたから焦ったぞ」


「フェル……いや、何か担いでるように見えたから気になってな……ん」


 兵士があごでボクの方を指し、後から来た兵士に見るよう促す。促された兵士は、「はあ?」と言いながら恐る恐るボクを覗き込むと、


「あぁ~♪」


 と、笑顔に変わった。


 た、助かった~


 かなり緊張していたので、強く握りしめていたゴブリンの服がしわくちゃになっていた。 


◆◇


「この子知ってるのか?」


「ああ♪よく見かけるぜ。散歩でもしてんだろ」


「なら、このゴブリンは子守りか?ったく!普通させるか?魔物に子守りなんて……親の顔が見てみたいぜ」


「ん?見たことあるだろ」


「はあ?どこのお偉いさんだよ?」


「ボニー」


 母の名前です


 ボニーと言う言葉に聞き覚えがないのか、「ん?ボニ~……」と、腕をくみ、しかめっ面をしたまま考え始める。


「ボニー・グリード」


「おお!あの、魅惑の未亡魔人か!って!この子魔族かよ!?」


「ああ」


「魔族でも魔人となると分かんねーもんだな?人種と全く変わりないじゃないか」


「俺も最初は分からなかったな……おい!そこのゴブリン!なに人の子をさらってんだ!ってね」


「ふ~ん。どうやって見抜いたんだ?」


「これ」


 ボクの身に付けているボロボロの布の服を指差す。


「あ……この子はこの年で奴隷なんだな……こんなに可愛いのに」


 哀れに思ったのか、ボクの頭を優しく撫でる。


「ちなみに性別はどっちだ?」


「たしか男の子だろ」


「そっか……跡取りか……」


 優しく撫でていた手が、ポンポンと軽く叩く。


「俺がこんなこと言うのはおかしいが……大きくなったら、目立つことは絶対するんじゃないぞ?賢く生きろ!いいな?……まだ小さいから俺が言ってることなんか全然分かんないだろうな」


 兵士がボクに苦笑いする。


 ううん、ちゃんと伝わっているよ。ありがとうモリスさん。ボクね既に言語を理解してるし、本当はペラペラに喋れるんだ。だけど、モリスさんが言った通り、ボクの立場はかなり危ないからね。だかり、ダメな子を演じなければならないよね。今も、この先もずっと……人種って本当に優しいんだな……


「とりあえず今は、ベイリー王が全奴隷の主人になっているからな……王家の血筋だろ?簡単には手放さないだろうな」


「多分な。下手に家臣や貴族に与えて、王家転覆なんてシャレにならないだろ」


「お、おい!フェル!」


「わ、悪ぃ」


「滅多なことを言うな!一族ともども消されるぞ!」


「悪かったって……」


「しかし、いつから奴隷商が国にはいってくるんだ?」


「とりあえず今は、荒野の開拓だろ?その次は港町って話だ。多分、それが終わってからだろな」


「4年か5年後か……それまで生きられれば、何とかなるかもしれないな」


 ……5才か6才か……見えなくなっているんだろうな……



 急に寂しさを覚え、上を見上げる。そこにあるのは、本来なら見ることが出来ない、懐かしき巨大な雲と建物だった。




読んで頂き、有難う御座います。

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