頭隠して尻隠さず
『お妃さま?もっと力んでください!』
『ん、ん……ん…………ああ!!!!!』
『そうです!その調子です!ちゃんと息も吸ってくださいね?お子さまが窒息してしまいます!』
『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……』
『お妃さま?』
『ふぅ……わ、分かってます……』
『では、もう一度』
『フンっ……ん……ん……ああ!!!』
『ほ~ら、頭が出てきま…し……た……』
『……メル?どうした?』
『あ、姉さま……頭が……』
『っ!割れてる!?』
『ムル!メル!何をしてるのですか!』
『姉上、頭が割れている』
『なにをバカなことを?それはお尻の割れ目です!お妃様、どうやら逆子のようです。一度、戻しますので我慢してください』
『ん~!!!』
『ムル!メル!お妃様をお抱えなさい!動いて頂いてお子様を正常な位置にお戻しします』
『わかった』
『……うん』
・
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『それぐらいでいいでしょう。お妃様宜しいですか?さあ、力んでください!』
『ん、ん……ん…………』
『もっとです!』
『ん……ん……んぐ…………』
『頭がお見えになられました!もっとです!』
『ん……んぐ…………あああああ!!!!!』
・
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・
・
・
め、目が痛い……
肉体の目で初めて見る世界は、ボヤけていて眩しかった。
『お妃様!おめでとう御座います!男の子で御座います!お抱きになられますか?』
『ふぅ……私に大変な思いをさせた我が子の顔を拝ませて頂戴……』
手で首を固定され、腕に抱き抱えられ、ボクの体が宙を移動し始める。
……なにかがおかしい……
『姉さま……?』
『なんだメル?顔がみたいのか?』
『い、いえ……』
耳に水がまだ入っているのかな?言葉が全然聞き取れない……
『メル?どうしたのですか?』
『その子……泣いてない……』
『!?』
『あっ!?』
『ミル!?どういうことですか!?』
やっぱり!?何を喋っているのか全然分からない……
『お妃様!お子様がまだ産声をあげられてません!お背中を叩かせて頂いても宜しいですか?』
『早くなさい!』
バンっ!
あ~ぁ……悪い予感って結構あたるもんだね……そっか、言語、違うんだ……はぁ……
バンっ!バンっ!
……なんか、泣けて来ちゃった……
バンっ!
「う、うう、あああああああああああ!!!!!」
『ふう、やっと呼吸をして頂けました!お子様も、お生まれになられたことに、感激なされているのでしょう』
「ああああ!!!あぅ!あぅ!あああああ!!!!!」
……背中が痛いよ……なんでこんなに痛いのさ!!!
『お妃様?お子様のお顔はいかがですか?』
産みの母であろうシルエットの側に寝かせられると、彼女は静かに泣き始めた。
『うっ……ううっ…可哀想な我が子よ……そなたに何も与えれない母を許せ……』
『お妃様』
『…………』
『お妃さま……』
しんみりとした空気が流れ、周りからもすすり泣きが聞こえてくる。
……ほんと最悪だよ……
『……お妃様、そろそろ授乳を……』
……もう何もしたくない……
『……そうね……この子は私が立派に育てないと……』
口の中に、柔らくて甘い匂いがする突起物が入ってきた。
……だからさ、何もしたくない……って!旨っ!!!!!
気がつけば、ボクはお腹一杯になるまで、夢中で母乳を飲み続けていた。
あんなの飲まされたら、嫌な気持ちなんて一瞬で飛んで行っちゃいますよ……母乳恐るべし……まぁ……明日から頑張ります
読んで頂き有り難う御座います。