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人生を決める滑り台   作者: お父さんはエセ作家
1章~生後~
7/12

頭隠して尻隠さず

『お妃さま?もっと力んでください!』


『ん、ん……ん…………ああ!!!!!』


『そうです!その調子です!ちゃんと息も吸ってくださいね?お子さまが窒息してしまいます!』


『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……』


『お妃さま?』


『ふぅ……わ、分かってます……』


『では、もう一度』


『フンっ……ん……ん……ああ!!!』


『ほ~ら、頭が出てきま…し……た……』


『……メル?どうした?』


『あ、姉さま……頭が……』


『っ!割れてる!?』


『ムル!メル!何をしてるのですか!』


『姉上、頭が割れている』


『なにをバカなことを?それはお尻の割れ目です!お妃様、どうやら逆子のようです。一度、戻しますので我慢してください』


『ん~!!!』


『ムル!メル!お妃様をお抱えなさい!動いて頂いてお子様を正常な位置にお戻しします』


『わかった』


『……うん』

  ・

  ・

  ・

『それぐらいでいいでしょう。お妃様宜しいですか?さあ、力んでください!』


『ん、ん……ん…………』


『もっとです!』


『ん……ん……んぐ…………』


『頭がお見えになられました!もっとです!』


『ん……んぐ…………あああああ!!!!!』

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

 め、目が痛い……


 肉体の目で初めて見る世界は、ボヤけていて眩しかった。


『お妃様!おめでとう御座います!男の子で御座います!お抱きになられますか?』


『ふぅ……私に大変な思いをさせた我が子の顔を拝ませて頂戴……』


 手で首を固定され、腕に抱き抱えられ、ボクの体が宙を移動し始める。


 ……なにかがおかしい……


『姉さま……?』


『なんだメル?顔がみたいのか?』


『い、いえ……』


 耳に水がまだ入っているのかな?言葉が全然聞き取れない……


『メル?どうしたのですか?』


『その子……泣いてない……』


『!?』


『あっ!?』


『ミル!?どういうことですか!?』


 やっぱり!?何を喋っているのか全然分からない……


『お妃様!お子様がまだ産声をあげられてません!お背中を叩かせて頂いても宜しいですか?』


『早くなさい!』


 バンっ!


 あ~ぁ……悪い予感って結構あたるもんだね……そっか、言語、違うんだ……はぁ……


 バンっ!バンっ!


 ……なんか、泣けて来ちゃった……


 バンっ!


「う、うう、あああああああああああ!!!!!」


『ふう、やっと呼吸をして頂けました!お子様も、お生まれになられたことに、感激なされているのでしょう』


「ああああ!!!あぅ!あぅ!あああああ!!!!!」


 ……背中が痛いよ……なんでこんなに痛いのさ!!!


『お妃様?お子様のお顔はいかがですか?』


 産みの母であろうシルエットの側に寝かせられると、彼女は静かに泣き始めた。


『うっ……ううっ…可哀想な我が子よ……そなたに何も与えれない母を許せ……』


『お妃様』


『…………』


『お妃さま……』


 しんみりとした空気が流れ、周りからもすすり泣きが聞こえてくる。



 ……ほんと最悪だよ……


『……お妃様、そろそろ授乳を……』


 ……もう何もしたくない……


『……そうね……この子は私が立派に育てないと……』


口の中に、柔らくて甘い匂いがする突起物が入ってきた。


 ……だからさ、何もしたくない……って!旨っ!!!!!




 気がつけば、ボクはお腹一杯になるまで、夢中で母乳を飲み続けていた。


 あんなの飲まされたら、嫌な気持ちなんて一瞬で飛んで行っちゃいますよ……母乳恐るべし……まぁ……明日から頑張ります




読んで頂き有り難う御座います。

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