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人生を決める滑り台   作者: お父さんはエセ作家
1章~生後~
12/12

ボクの兄はゴブリンですけど何か?

「止まれ!」


 目の前の衛兵2人が、それぞれ所持している槍を突きだし、交差させて行く手を阻む。


「身分証を確認する!手を上げて、大人しくしていろ!」


 兵士の言葉通り忠実に待っていると、別の兵士が近づき、首から下げている身分証を確認し始めた。


「どこの者だ?名前は?」


「アドミニ商会の者で、ウィス(・・・)ダム・グリードと申します」


「ア、アドミニ商会の方とは露知らず、大変失礼致しました……どうぞお通り下さい」


 アドミニ商会と聞いて、慌てて身分証を手から離すと、急ぎ横へと移動する。それにならい、道を阻んでいた兵士たちも、交差させていた槍を縦に持ち変え、左右へと別れ移動した。


 道も開けたので、前へ進もうとしたのだが、


「ん?グリード?先ほどグリードと仰いませんでしたか?」


 と、話し掛けてきたので、


「はい。ウィスダム・グリードと申しました」


 と、素直に答えた。


「少々、お待ちを……」


 不思議に思ったのか、兵士が再び前に立ち塞がると、首もとを確認し、身分証を凝視し出す。


「ん~、確かにアドミニ商会の身分証ですね……名前はウィスダム・グリード……奴隷……奴隷って書かれていますが首輪はありませんね……」


「どうかなさいましたか?」


「い、いえ!どうやら身分証が間違っているみたいで……」


「間違っていませんよ?」


「え?でも、身分証には奴隷と……」


「はい。ボクはアドミニ商会所有の奴隷です」


「し、しかし、あなた様は首輪をなされてませんが……」


「ご主人様が仰るには、まだ着けなくて良いと」


「…………はい?」


 目の前の兵士は、身分証に表記してある内容と、それ相応の姿をしていないボクに、何が何だか全く分からなくなってしまっている様子だ。


「ボクはカイル・グリードの息子です」


「なっ!?」


「「!?」」


 目の前の兵士が驚愕した顔を見せるや否や、素早く剣を抜くとボクの首筋に当てる。また、その兵士の動きに合わせ後ろの兵たちも槍を構え、いつでも攻撃出来る態勢に入った。


「貴様、奴隷かっ!クソっ!奴隷に敬語とは……騙しやがったな!!」


「え~?騙してませんよ~先ほどから申してるはずです。【アドミニ商会】の奴隷だと。身分証もそう表記されていると思いますが……【アドミニ商会】の……」


「も、もういい!分かった!」


「では、通っても宜しいでしょうか?」


「ま、待て!後ろにいるゴブリンは何だ!?連れか!?」


「はい。彼も【アドミニ商会】の奴隷でして……あの~そろそろ……」


「ぐっ!ど、どうぞ!!」


 奴隷に「どうぞ!」はないでしょ。「どうぞ!」って…… ぷっ!ヤバい、吹き出しちゃう


 これ以上、刺激しない様にと必死に笑いを堪え、ガルと共に丁重に頭を下げ関所を通過した。



◆◇



「あはははは!!!ガル兄、さっきの兵士たち面白かったね♪【どうぞ!】だってさ!ボクたち奴隷なのにね♪」


 後ろを歩いていたガルは、同意を求めているボクを呆れた顔で見つめていた。そして、「フン」っと鼻でため息をつくと、呆れたまま視線を遠くへ逸らす。


「な、なんだよ」


『ギャウギャウ』


「え?何?」


『ギャキャギャギャウ!』


「分かんないって!人語で喋ってよ」


『チッ!』


 ガルは、不機嫌そうに舌打ちすると、早足でボクまで歩み寄り、拳を握り締めたかと思うと、それをボクの頭へと落としてきた。


「何するのさ~」


 6才のボクと、成年に達しているゴブリンのガルの身長はそう変わらない。ゴブリンは魔族の中で最も弱い亜人であり、大人になっても身体能力は人種の子ども並か、それ以下だと言われている。なのでゴブリンのパンチなんて、痛くともなんともないんだが……


 あり得る?子どもとは言え、 ゴブリンに叩かれる魔族の元王子様の姿なんて……想像できないよね?


 物心ついた頃から、何故かボクはガルを兄貴と呼んでいた。ボクが赤ん坊の頃から身の回りの世話をしてくれていたことで、尊敬の意を込めてそう呼んでいるだと思っていたのだが、どうも違うらしい。どうやら、ガルに弱みを握られているみたいだ。


 何度か問い詰めてみたことがあるのだが、教えないの一点張りで、すでに諦めてはいるのだが……やはり、気になってしょうがない。


 ボクがモヤモヤしているというのに、ガルは人指しを立てて、自分の耳の2度軽く小突き合図する。


「はいはい、分かりましたよ」


 ボクはふて腐れながらも、周りに誰も居ないこと確認すると、自分の耳たぶを触り魔力を流す。


 【翻訳(トランスレイト)


 この魔法は読んで字の通り、理解できない言語を翻訳する魔法だ。この魔法を知ることが出来たのは、ボクの主人が家畜の馬に魔法を掛けているのを、偶然見かけたからだ。それ以来、ガルと話したいが為に、こっそり練習して身につけた魔法の1つである。


 魔力の流れというのは、普通には見えないらしい。だが、能力の長けた者なら、感知する所か流れさえも読めると言う。ちなみに、ボクとガルは首輪をしていない。なので、今のボクは魔法を使うことが出来るのだが、魔力の流れを感知されない為には、使用時には常に注意を払わなければならない。戦闘系の魔法じゃないとはいえ、魔法を使う奴隷をこのまま野放しに飼うはずが無い。


 魔法を練習し、覚え、使うまでが、今のボクにとって一番の楽しみだ。この楽しみを奪われたくはない。だから、首輪なんてまっぴら御免だ。


◆◇


「はいはい、何?」


『やり過ぎだ』


 よし!魔法は順調!問題有りません!


「え?」


『さっきの兵士の件だ!どう見てもやり過ぎだろ!』


「あ~♪あれね♪可笑しかったね♪」


『…………』


 コイツは駄目だとばかりに、目を閉じ顔を左右に降る。


『お前死にたいのか?あれは【アドミニ商会】の名のおかげで命拾いしただけだ!』


「そ、そんなこと分かってるよ!死にたいわけないじゃん!」


『なら、もっと自重しろ!!』


「うっ……そんなに怒らなくてもいいのに」


『お前のことはボニー様から頼まれているからな』


「なるほど、母さんね……」


 はっきり言って、ボクは母のことが嫌いだ。口を開けば、 「あなたは偉大なる王の息子です」だの、「力をつけて、ベイリーを倒し、ダイナストを取り戻しなさい」など、現実を見ていない。いったい奴隷のボクに何が出来ると言うのか。父が亡くなり国も消え、正気を保つのは辛いとは思うが……正直、頭がおかしくなったとしか考えられない。息子に死ねと言っている様なものだ。


『それに……』


「え?」


『お前からも頼まれてる』


「はい?頼んだ覚えないよ?それはいつさ?」


 ガルが黙る。


「もしかして秘密?」


『いや……4年前だ』


「…………あり得るわけないじゃん!4年前ってボク2才だよ?ボク自身、2才の記憶すらないのに……嘘つき!ボクは信じないね!」


『……本当に忘れてしまったんだな』


「はぁ、もういいよ……ガル兄はいつも秘密ばっかり」


『…………』


「話変わるけど、ガル兄ってゴブリンなのに知力高いよね?人語を話せないのは分かるけど、何で理解は出来るの?」


『それはお前が……』


「ボクが……?」


『秘密だ』


「……やっぱりね」


『いつか必ず話してやる。ほら、行くぞ!主人が待っているはずだ』


 ガルが走りだす。ガルは必ずと言ったが、それは一体いつになることやら。


 なら、待つとしますか……


 そして、ボクもガルを追うように走りだした。そして、直ぐに追い越す……


「ガル兄!足、遅!!」




 ついに、6才になっちゃいましたね♪魔法も出てきました♪まあ、生活魔法みたいなものですが……


 ゆっくりですが、これからも続きます♪


 読んで頂きありがとうございます♪


 誤字・脱字がごさいましたら報告のほど、宜しくお願い致します。


 処女作になりますので、お手柔らかに感想もお願い致します。

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