3話
みんなと別れてからの1時間はとても長い気がした。いや、というより今日一日が今まで生きてきた中で一番長い一日だったのではないだろうか?オレは荷造りをしながらそう思う。
夢の中で助けを求められ、悩み、オレのことをすごく思ってくれている友達を蔑ろにし、
結局バレた。今日一日の中でこんなに事が起こっている。普段だったら6限が終わったあと
吉田とケンちゃんと一緒に下校し、家に帰ったら軽くオヤツを食べつつゲームでもしてい
る頃だ。
しかし、そのノーマルな日常はいつか崩れるのは当然だった。異世界に関わっちまったんだからな……。
嘆いていても仕方が無い。今出来ることはアッチの世界に行って助けることだ。一番の後悔は
友達二人を巻き込んでしまったこと。オレはみんなが来る前に出立しようと思ったが、そんな事をしたら今度こそ本気で親友を裏切ってしまう。もう友達を裏切りたくない、力になってくれるというんだからなってもらおう。そうだ、そう割り切ろう。自分の部屋で愛用のエナメルに荷物を詰め終わると。
一階のリビングに降りた。そこには母の姿がある。何かを作っているようだ。
「あっ、たつ!今お弁当作ってるの。しばらく私の手料理食べられないでしょ?新幹線の中ででも食べなさい。お友達の分も作っておいたから!!」
なんだかウキウキしてるようだが、何でだ?
「あ、ああ、ありがとうママ。」
オレは一応母に礼を言う。確かに向こうに行けば母の手料理は食べられない。これも母なりの餞別なのだろう。
だけど母の手料理が食べられないからといってホームシックになるほどガキじゃない!
でも、まあ……嬉しいっつっちゃあ嬉しいわな。
「あの人が……。」
「?」
突然、料理をしていた母の手が止まる。何か言おうとしている。表情も先ほどのルンルン気分ではなくなんとなくシリアスだ。
「お父さんがいたら、なんて言うでしょうね。こんな立派になったあなたを見て。」
オレの父さんは第16代ドラグニール皇帝補佐官だ。そういう話を聞いたのは1年前。
実質世界No.2らしく、リュウのお父さんを補佐していろいろ職務に携わったとか。
結局、向こうの世界で争いが耐えないことに嫌気がさしてこっちに移り住んだ。
そして、オレに異世界の話をしたあと父さんは突然姿を消した。理由はわからない。
置手紙も無ければ、母にも何も話していない。本当に忽然と失踪したんだ。
「オレは、ドラグニールがとうとかじゃなくて、ただ向こうの友達を助けたいだけ。それだけだよ。まあ、父さんの事は尊敬してるけどね。」
「ホント立派になったわね。」
「それは、どーも!」
やっと母にも笑顔が戻ってきた。お弁当のおかずを弁当箱に詰めている。
中身はオレの好きなから揚げと玉子焼き。他にも栄養バランスを考えた献立になっている。
……あと少しで1時間か。そろそろみんなも来る頃かな?
ピンポーン
突然インターフォンが鳴る。相手はわかっていた。
「う〜っす!準備してきたぜ!!」
「俺の方も準備は万端じゃ。」
吉田とケンちゃんがいっぺんにきた。多分入り口でバッタリ、ってパターンだろう。
「おし!オレも準備できたからそろそろ行こうか!!」
「あはは、楽しみだな!」
「馬鹿もん!遠足ではないぞ!!」
いつもどおりの会話に肩の力が抜ける。やっぱこいつらといると楽しい。
でも、向こうに行ったらオレが守らなくては。この先、何があるかわからないし。でも今は、
リラックスしていたい。戦士の休息ってやつ?
「じゃあ、ママ行って来るよ。」
玄関先で、すこし大きめの声で別れの言葉を言うとキッチンから母が出てきた。手にはチェックのガラの四角い物を持っている。そっか、弁当作ってくれてたんだっけ。
「ほらお弁当!(「おじゃましてま〜す!」←吉田)あ、いらっしゃい。吉田君、この子意外におっちょこちょいだからフォローしてあげてね。気をつけて行って来るのよ、ちゃんと持ち物持った?忘れ物ない?無理だと思ったら帰ってくるのよ?」
「あ〜も〜わかったから!行ってきます!!」
オレは母の半ば遮りながら玄関の戸を閉める。こんな別れ方はいかがな物かと思うが、あの質問を終わりまで聞くと一生出発できない。とりあえず、最寄駅まで歩く間友達と会話する。
「俺は、友達のとこ行くからしばらく帰れないって言っといたぜ。親父ったら『おう!行ってこい!』だとさいつ帰れるかわからないのにな!」
「吉田のお父さん軽い!!(やっぱ子は親に似るのかな……?)、け、ケンちゃんは??」
「俺は住職にしばらく旅に出ると言っておいた。今生の別れとまでは行かないが、住職は何かを察したみたいじゃった。」
「ケンちゃんらしいね。まあ学校の事はママがウマくやってくれるから安心してよ。全く、あの人は結構人徳が広いんだから。」
オレの母や父の他にも向こうの世界から移住してきた人間は結構いたりする。しかも、その人が実はこっちに来てから教育委員会の委員長や国会議員など高い役職に就いてたりするんだ。そういう人と母はつながりを持っており、学校を休学するなんてたやすいらしい。我が母ながら行政を裏で牛耳るなんて恐ろしい人である。
「んで?これからどうすんだ??何か京都に行くとか言ってたけど。」
「さっきも話したけど、向こうとこっちを繋いでる『竜頭の門』っていうところに行くよ。オレが前に向こうに行った時にも使ったんだ。今度はオレが行き先を設定しなきゃ。一応使い方教えてもらったから。」
「ふむ。その門を超えるといよいよ異世界ということじゃな?」
「そゆこと。さ、ちゃっちゃと行こうか!!」
オレ達は品川駅から18時04分発新横浜行き『こだま585号』に乗り、新横浜から18時20分発京都行きの『こだま141号』に乗り換えた。車中、母の作ってくれた弁当をみんなで食べていたんだが吉田は外の景色に夢中で、「富士山だぜ富士山!」とかはしゃいでいた。旅行じゃないんだからしっかりしてくださいよホント!!
そして、京都に着いたのは結局夜の8時を回っていた。竜頭の門は遺跡で一般公開はされていなく、この時間でもオレ達は入れるのだが、今日はいろいろあって疲れたということで近くのビジネスホテルに宿泊した。
母に電話を掛け、今日は竜頭の門には行かないとこっちの案内人に伝えてくれと頼んだ後、オレもすぐにベットにもぐり就寝した。こうして、長い長い一日が終わったのであった。
〜4話に続く〜
はい!ゲトバク3話終了です!!今回のゲストは仲良し三人組の一人、寡黙な武闘家、西園寺賢一郎さんです!パチパチパチ!!
「うむ、西園寺賢一郎じゃ。堅い呼び名は苦手じゃから適当にあだ名で呼んでくれるか?」
では、ケンさんと呼ばせてもらいますね。ケンさんの自己紹介をお願いします!!
「名前は先に言ったからよいじゃろ?特に自己紹介というものは思いつかんのじゃが……俺は昔から武道を習っており、兵法書を愛読している…ぐらいでカンベンしてくれんか?」
兵法学にも精通してるんですね?
「左様。精通しているかはともかく、兵法を勉強しているのは確かじゃな。俺は日本の武士道を重んじているため、古人の用兵を勉強しているのじゃ。」
なるほど!そんなパーティでも戦闘指揮を執るだろうケンさんですが、好きな食べ物・苦手な食べ物はあるんですか?
「好物は、きくらげとナス。苦手なのはカボチャとホタテじゃ。どうもあの味と感触が苦手での。ってか、このコーナーだんだん長くなっておらんか?」
そうですね、最初に比べれば。たつ君には申し訳ないですけどね^^じゃあ、最後に一言お願いします!
「これから先は異世界じゃ。どんな困難が待っているかわからんが必ず乗り切ると約束する。
あと、作者に一言。展開のペースをあげてみてはどうじゃ?ここまで来るのに3話使っておるぞ?」
はい!厳しいご指摘ありがとうございました!!ではまた4話でお会いしましょう!
さようなら〜。