2話
オレはあと少しで家のところまでやってきた。吉田に対する暴言、無二の親友の一人を傷つけたことを悔やんでいた。いや、ケンちゃんも怒っていたが傷ついているはずだ。傷つき方は違うが、オレは友人二人を傷つけた。そう考えると涙がこみ上げてくる。でも、あいつらにはどうすることもできない。
いつの間にか家の前にいた。壁は白で屋根は緑のこの家は、住宅地の一角にある。
庭にはオレの自転車が置いてある。高校は近いので吉田とケンちゃんと歩いて行っている。
そういえば、オレたちはいつも一緒だったな。
「ただいま。」
力なく玄関を開けると母親が出てきた。
「おかえりなさい。どうしたの?何か元気が無いようだけど??」
オレは玄関で座ってローファーを揃えると何も言わずに階段を上り自分の部屋に行った。
オレの部屋は6畳で、テレビ、勉強机、洋服棚、ベッドがある。机の上にはノートパソコンが一台置かれている。このノートパソコンは昔よく使っていた。向こうの世界で……。
一年前、オレは父さんにある話を聞いた。自分は竜族の子孫だということと、もうひとつ別の世界があるということ。
そして、その別の世界が今危機に瀕しているということ。父さんの話では、竜王という竜の王がいてオレの一族は竜の王の家臣だったらしい。そして、オレは竜王の家臣、竜臣だという。
始めは半信半疑だった。だって、竜なんて空想上の生き物だし、ありえないと思った。でも、『門』が開いてオレがその『門』に飛び込んでから全ての考えが変わった。この世界には別の世界があり、常識では考えられないようなことがあるということ。あっちの世界を簡単に言い換えればRPGゲームの世界だ。モンスターはいるし、魔法やお姫様だっている。そして一番痛感したのは、本当にオレが竜の子孫であるということだった。
あらかじめ、『門』の行き先を『ラミレフの神殿』というところにセットしてあった。そこは竜の力を覚醒させるところらしい。そこでオレは儀式を受け、竜の力を使えるようになった。上級の竜は普段は人間の姿をしているが、力を開放すると竜に変身することができる。この力を竜覚という。オレは竜覚を使うと白き竜に変身する。
聖なる力を秘め、王を守るというセイントドラゴンだった。さらに魔法も身につけた。オレの母親も別世界の人間で、陽術師だったらしい。陽術師というのは、聖なる力を以って外傷や疾病を回復させたり、外界からの衝撃を防ぐ魔法を操る者達のことである。オレも回復魔法、防御魔法を習得した。
そして、竜の王であるとされるリュウに会ったのだが、髪は青色で服は安物、全くもって王には見えない。
しかし、力は計り知れず、竜覚はすさまじかった。そのほかの仲間に一国の姫がいたり、剣士がいたり、科学者がいたりした。そうして、反逆者・ユーリを倒したあと、リュウは再び正式に竜族の都『ドラグニール』の王に就任し、その他も自分の国に戻っていった。パソコンは昔世話になった盗賊団にいた頃良く使っていた。
だいたいは魔科学を用いた鍵の解除プログラムや、建物内の警備システムに侵入することが
目的だ。
世界に平和になってからは、ドラグニールの世界監視システムのマスターコンピュータとなり、衛星や、通信のメインを築き上げた。そして、あっちの科学者が再び『門』を作ってこっちに帰ることができたのである。
昔のことを考えていると、母親が入ってきた。
「たつ大丈夫?何か思いつめていたけどなにかあったの?良かったら話してみなさい。」
オレは階段を降り、リビングに入るとカウンターテーブルに座って母親の入れてくれたハーブティを一口飲み、今日あったことを話した。夢を見たことと、友達を傷つけてしまったこと。
「そう…そんなことがあったの。確かにあなたには未来を見通す心眼という力があるわね。そして、心眼を持っている人は、別の心眼をもっている人に夢を見せることが出来る。もしかしたら本当にリュウ皇帝になにかあったのかも
知れないわね。しかも、別の世界にいるたつに頼むことだからよっぽどのこと……。」
「でも、反逆者のユーリ皇帝は倒したし、世界は平和になったはずでしょ?なんでいまさら……。」
「たつ、世界に永遠の平和はないの。遅かれ早かれ危機が迫るのはしょうがないわ。それが、今回は早くて危機が大きいだけの話……。残念だけどね。」
「オレはどうしたらいいのかな?」
「あなたはもう大きいわ。それに本当はどうしたらいいかがもうわかってるんでしょ?あなたの通りにしなさい。ママもお父さんもあなたの結果に文句は言わないわ。それに……。」
「それに?」
「お友達も興味があるようだしね。」
「えっ!?」
母親の祐美(本当の名はマーサだが、こっちに来たため名前を変えた)が窓を見るのをふしぎに思い、オレも窓を見ると、そこには仲良しの友人であり、先ほどオレが酷いことをしてしまったケンちゃんと吉田がいた。
どうやら、オレの様子が気になってうちに来た時に偶然話を聞いてしまったらしい。オレは困った。しかし、声をかけるしかなかった。
「二人ともどうしたの?」
「主が気になったから来てみたのじゃが……。」
「悪ぃ、聞いちまった。」
バレた。誰にも話していないことが、よりにもよって友達にばれてしまった。すごく哀しく、そして虚無感になった。
「聞いちゃったんだ……、ごめん言わなくて。聞いたとおりオレは人間じゃないんだ。」
もうこれで終わりだと思った。親友を失ってしまったと思った。
「……ったく、水くせぇな。なんで困ってることを言わなかったんだ?話してくれりゃアドバイスしてやったのに。」
先ほどオレが暴言を吐いてしまった吉田が口を割った。一瞬意味がわからなかった、いや吉田がオレと母親の会話を理解していないのかと思った。
「いや、オレは異世界の人間で、しかもその異世界から助けを求められてるんだけど、軽蔑しないの??」
「何で軽蔑するんだ?異世界の人間だろうがお前はたつだろ?どんな経緯があるかわからないけど、少なくともお前は、俺の大事な親友だ。」
涙が溢れてきた。こんなに信用してもらっていたのになぜオレは話さなかったんだろう?怖かったのかもしれない。
話をしたところで気持ち悪いと思われたり、頭の悪いやつだと思われたりするのが。でも、吉田は信用してくれた。
ケンちゃんも信用してくれた。こんな自分が恥ずかしくなったと同時にうれしくなった。オレは恵まれてる。
「困ってるなら助けに行けばよいじゃろ。それが主君に対する忠誠じゃ。」
「俺も同意見。」
「実は……オレもそう考えてた。オレやっぱ心配!あいつが心配だ!!あいつにはオレがついてなくちゃいけないんだ!!」
オレは前々から答は出ていたんだ。夢を見たときから。気づいてた。あれは自分の脳が創造した夢じゃないってことを。助けないと!オレのあっちの友人達を!!
「ママ!オレいくよ!リュウを助けに行く!竜臣としてじゃなくて友人としてドラグニールの皆を救いに行くんだ!!」
「たつ、あなたの判断は間違ってないわ。いってらっしゃい。竜王様の力になってあげて。」
「俺も行くぞ!」
「俺も!!」
「えっ!?何で!?だってこれから行くのは異世界だよ??九州やヨーロッパに行くのとは訳が違うんだ。」
「たつ一人を放ってられぬ!」
「俺も及ばずながら手を貸すぜ!!こう見えても倭国剣術が使えるんだ。モンスターも葬ってやるぜ。な!!」
「みんな。」
本当にうれしかった。みんながオレのために手伝ってくれるなんて。心の底から親友だと思ってくれてるなんて。マジで泣きそうになった。
「みんな、オレに力を貸して!リュウを助ける力になってほしい!!」
「無論じゃ。」
「任せろ!」
「じゃあ、みんなにぜひみせたいものがあるからオレの部屋に来てよ。」
せっかくなのでオレが向こうで使っていた品を見せてあげようと思う。何を見せるかって?武器に決まってんじゃン!!オレの部屋にみんなを通し適当にすわらせる。フローリングの床に直で座らせるのは痛いかもしれないが
我慢してくれ。オレはクローゼットの中からひとつの金庫を取り出し、ダイヤル式の鍵を開けた。中に入っていたのは、黒光りする物。形は紛れも無く銃だ。
「これは何じゃ?銃のようだが……。」
「これは紛れも無く銃だよ。ただし、弾丸はなくて魔力で動く銃。魔洸銃ってんだ!」
「あはは!ふしぎ銃か!!」
「ったく、ちゃかすな吉田!!……この魔洸銃は魔洸石っていう石を力の源にしている。
魔洸石からでる魔洸を変換して高純度の魔力にし、それを打ち出すんだ。オレが前に使ってた武器。」
「へえ、カッコいいな!俺は自分の真剣持って来るからよ!楽しみにしとけ!!」
「俺は自分の拳じゃ。こぶしといえども侮れんぞ、これでも殺傷能力があるからの。」
「みんな頼もしいね。じゃあ、これからのことだけど、とりあえず家に帰って荷物をまとめてきて。それから新幹線で京都に行く。」
「あはは!行く前に観光か??」
「違うわ!京都の竜頭の門っていうとこから向こうに行くんだ。そこはオレが向こうに行った時に使った門で、多分今も使えると思う。じゃあ、そういうわけだから。」
「承知した。1時間以内に戻る。」
「よし、わかった!俺も今から帰ってしたくするぜ!!」
こうして、オレ達の長い旅が始まろうとしていた。
〜3話に続く〜
ゲトバク2話終了です。今回のゲストは吉田 隆史さんです。パチパチパチ!
「どーも!吉田隆史です!好きなのは体育と野球と牛乳と寿司!嫌いなのは好きなもの意外です!!」
はい、自己紹介ありがとうございます。実はですね、吉田が一番にお気に入りなんですよ
ワタシ。
設定の時に天然ながら頼りになるやつって思ったときにすげーカッコいいと思いましてね、
それ以来、この小説のなかで一番のお気に入りキャラになりました^^
「おっ、マジか!それはありがとうな!これからも俺の活躍を頼むぜ!!」
もちろん!君はキーパーソンだからね。今はいえないけど。ガシガシいじっちゃうよ!
「あはは!楽しみだな!てか、さっきっからあそこの物陰からたつがこっち見てるんだが?」
「……(じー)」
あ、あれはきっと「オレの時よりゲストタイム長いのは何故」っていう眼だね。こ、怖い。
「そーかそーか!おーいたつ!お前も出たいなら一緒に出るか!??」
これだから天然は!!火に油を注ぐな!3話に続きます!!
「これからも応援よろしくな!!」