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1話


燦々と太陽が照りつけ、ただでさえダルい数学の授業をさらにダルくさせている初夏のある日。オレ、『伊藤 達徳』は教師からは見えないように首からまわしたイヤホンで音楽を聴きながら授業を受けている。

「……(あ〜、あちぃ…。公立高校にもエアコンぐらいつけろよ。金がないならせめて扇風機を置け。しかも嫌いな数学かよ。マジやる気しねぇし……。)」

心の中でそうグチる。今年は近年まれに見る猛暑らしい。6月の中旬のクセにすでに猛暑日を記録してる地方がある、とニュースでやっていた。まぁ、もう6限だからこの授業終われば帰れるんだが。しかし、この暑さで過去のことを思い出さされた。この暑さ、あいつらと最初にあった町……、

確か『サライ』とか言ったっけ?あの町もこんぐらい暑かったな。でも、あそこは砂漠地帯だからもっと乾いていたかな?

懐かしいな……あいつら今頃どうしてっかな?特にアイツ…リュウはちゃんとやっているだろうか……。

……。

……。

………………。しばらくボンヤリしていると突然目の前にアイツが現れた。

「たつ、たつ!もし聞こえてたらすぐにこっちに来てくれ!!今、大変なことになっている。

 たつ、ドラグニ……。」

……「た…。」

……「たつ…。」

「たつ!!」

突然のデカイ音に意識を取り戻した。目の前がかすんで目の前の人物がわからない。

オレは眼を制服の袖で拭き、あたりを見回す。目の前の人物は、オレの友人の『西園寺 賢一郎』であった。

「たつ!起きるのじゃ!!もう下校の時刻じゃぞ!さっさと支度をせい!!」

いつもながらの古語が寝ぼけた頭に響く。そうか、いつの間にか寝てたのか……。

でもあの夢は一体。その前に夢なのか、もしかしたら……。……痛い!!

「早くせいと言っておるじゃろ!!」

ケンちゃんに頭をどつかれた。時間は午後3時半を回ってる。良く見ると周りのクラスメートはほとんどいない。

帰りのホームルームも終わっているようだ。かろうじて残っているのは、服の話だの原宿の話だのしている女子グループと、クソ真面目で、黒板をこれでもか!と綺麗にしている学級委員と、部活の着替えをしている奴らと、オレたちだけだ。

「あはは!6限はたつの嫌いな数学だからな〜!寝るのも無理ねぇよな。まあ、起きたんならさっさと帰ろうぜ!」

こいつは『吉田 隆史』。こいつもオレのダチだ。怖い顔しているケンちゃんと違って吉田はニコニコしている。

ケンちゃんはしっかり者、いわば母親的存在だ。いつもオレのダラけを絞めてくれる。

授業を寝てたときにちゃんと授業に参加せぬか!とか、つまらなくて適当に走っていたセンゴの授業の時はしっかり走らんか!とか、小言を言う。一番困ったのはノートを貸した時に、見ずらいのじゃ主のノートは!もっと綺麗に書け!といわれた時だ。でも、そんなケンちゃんをオレはうっとうしく思ったことは無い。

小言を言うのがケンちゃんだし、オレのために言ってくれていることばかりなので逆にうれしい。

吉田は、ガキの時から野球をやっている。もちろん高校でも野球をやっていた。うちの学校はそれなりに野球は強いので多分それが入学理由だと思う。軽く天然が入っているが、それが吉田のいいところだと思う。

いつもオレ達3人でつるんでることが多いのだが、吉田はいつもオレ達のことを笑わせてくれる。普段は堅いケンちゃんと、天然の吉田のやり取りは見ていて面白い。吉田は外見は、髪を短めに切ってワックスで立たせており一見怖いが、

触れ合ってみるとギャップがあって面白い。ケンちゃんは髪は全体的には短いのだが、襟足だけは伸ばしている。

とか何とか説明している間に今日使った教科書、ノート、資料集などをカバンにつめた。(前は起き勉していたのだが、ケンちゃんに怒られたので持ち帰り勉にした)

「いやぁ、ごめんごめん!太郎(数学教諭・植木太郎)の授業つまんなくていつの間にか寝てたわ!!」

スクールバッグを肩にかけて言う。でも、まさか異世界から夢で助けを求められたなんて言えないよな。

「全く主は……!つまんないと言う前に数学の面白さを見つけたらどうじゃ!つまんないのは主が数学の面白さに

 気づいていないからじゃ!!。」

「う〜ん、オレ無理!やっぱ数学面白くねぇもん!オレが面白いと思うのは生物と音楽だけかな。」

「あははは!たつは音楽だけはすげぇからな!やっぱピアノやってたからかな??」

「吉田、音楽だけはの『だけは』は余計!!オレ、なんだかんだで赤点取ったことないし」

吉田の発言を切り返す。確かに数学はできないが、それでも赤点取るほどバカではない。一応テスト前は勉強するし、数学以外の授業は面白いと思う。ピアノをやっていたせいか、記憶力は良く、歴史や政経はクラストップを取ったことがある。クラストップを取った時、クラスで一番頭がいいヤツから睨まれたことを未だ覚えている。こんなヤツに負けたと内に秘めた睨みは怖いという何者でもなかった。

「吉田こそ、今年の体力テストでは学校トップだったではないか。主の50メートル走はもう少しで6.5秒台だったのに

残念だったのう。」

「あ〜、俺昔から野球やってたからな。今でも体鍛えるのは好きだしな。」

「運動バカ……。」

「あはは!たつ、それを言うなって!!親父にも運動バカって言われてるんだからよ!!」

「親父さんもまさかこんな運動ばかりする息子に育つとは思わなかったのではないか?」

吉田の家は昔から続いている寿司屋さんだ。結構地区でも人気があって、いいネタで安い!と評判だ。

オレが吉田の家に遊びに行くと、夕飯で寿司をご馳走してくれたり、帰りに家族にと寿司折を持たせてくれるいいおじさんだ。ケンちゃんの家はお寺で、西園寺と言う名前も、西園寺という寺の西園寺家で暮らしているからだ。

なんでも、生まれたときに西園寺に置き去りにされて、以来そこの住職に育ててもらったらしい。ケンちゃんは、拳法に精通していて腕は師範を超えているという、元々西園寺で精神を鍛えたため、武道でも精神の強さから、ここまでの身体の強さを得たとか。

こんな友達と一緒にいて楽しい、しかし……。さっきの夢が気になる。妙にリアルな夢。リュウがもしオレに呼びかけているとしたら……。でもまさか、だけどありえない話ではない。

「たつ、どうしたのじゃ?さっきからだまっておって。」

突如ケンちゃんの声が聞こえてハッと我に戻った。怪訝なケンちゃんとキョトンとした様子の吉田がいる。

確かに悩んでいるが、この二人に話したところでどうしようもない。こっちの人間では解決できない問題なのだから。

「ううん、別に!ちょっと疲れちゃっただけ。」

「大丈夫かよ?なにか悩んでるなら俺達に相談しろよな!俺達友達だろ??」

友達……その言葉が胸に突き刺さる。できるなら相談したい。だけど、この問題はどうしようもないんだ。相談したところで解決にはならない。と考えると妙にイライラしてきた。

「簡単に言うなよ!相談して解決するんなら考え込まねぇ!!相談したところでお前達に何が出来るんだよ! 出来ないことを言うな!オレの気持ちも知らねぇで勝手な事を言うな!」

気がついたときには罵詈雑言を吐いていた。そして目の前にはびっくりしたような様子

の二人。

しかし、この沈黙が経つにつれて、二人の顔色が変わっていった。ケンちゃんは怒った様子、吉田は悲しい様子。

後悔したときには遅かった、ケンちゃんが今までにもないような顔でオレに攻め寄ってくる。

「たつ!山本は主を心配しているだけじゃ、なぜそれがわからん!心配する吉田に向かって不謹慎ではないか!? 俺とて、主が心配じゃったのに何たる言い草じゃ!!吉田に謝れ!!」

ここまでのケンちゃんの気迫は見たことが無い、すなわちそれぐらい怒っているのだ。

無理もない、心配した友達を

一方的に退けたのだからな。

「お、オレは…。別にそんなつもりじゃ……。」

気がついたときには走り出していた。家路をただ夢中で走っていた。走り出す直前、うつむき哀しそうな吉田の姿が

眼に映った。


〜2話へ続く〜


いやぁ、始まったねGet Back the World!初回のゲストはたつ君です!パチパチパチ!!

「クチでパチパチって言われると複雑だな。でもいよいよ連載開始!シリアスな終わり方だったね。オレってずっと嫌われ役??」

吉田に対する罵詈雑言の嵐!ほんと後味の悪い終わり方だったけど、たつはずっと嫌われ役なわけ無いよ。2話ではたつの過去の話が出るし、それに伴って友達二人の行動、

それが見所かな。

「あんまりネタバレやめてね。」

お〜、ソ〜リ〜、気が利きませんで。

「まあ、何はともあれこれからもよろしく!一応オレが主人公なんで!!」

よろしくです!!

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