表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/41

第二話 <目が覚めたら天国>

「ん・・・あれ?」


目を覚ますと、何かひどく暖かい、気持ちのいいものが体にかぶさっている。


頬に傷のある赤毛の美女が、目の前に寝ている。少し厚めの唇が赤く綺麗。


爆乳!と絶叫したくなるようなGカップクラスの巨乳、それが生乳、胸に密着して息づいている。


で、裸の自分の上に、その全てが密着しているという状態で、その胸、その腹、その腰、全部の温かく柔らかい感触がダイレクトに脳髄へ刷り込まれる。


『ちょーーーーっ?!』


心臓が肋骨ぶち破って飛び出しそうになる。


何しろその美女は腿をからみつけているので、身動きが取れない。

体中にまといついているその感触は、あまりにダイレクトすぎて、気持良すぎて気が狂う。


『いきなり、ベッドシーンって、何ぃぃぃぃ!!?!』


なんか、最後は死んだような記憶が残っているのに、何故か生きていて、この状況。


『いや、ちょっと、これ、やばい、やばいって、だ、だめ、沈まれ、静まれ、しずまれえええぇっ!』


いや、この状況で沈まれるなど、どんな聖人でも無理だろう。

それ以前に、女性に失礼すぎるかもしれない。


「んん・・・・ふああ、おはよう。」


息を荒げてもぞもぞする動きに、気がついたのか、のんきできれいなハスキーボイス。


イーラの栗色の目が、大きく開いた紫の輝く瞳に魅入られる。

その瞳、無数の星と輝きを帯びて、吸いこまれる。

ああ、なんてきれいな目・・・、イーラの理性がはかなく溶けるように失せた。


「あ、あの、これは、」

「んふう、かわいい。」


赤い唇が、甘い吐息を押しかぶせてきた。

頭が衝撃で、くらくらして、誠司も次第に理性が溶けていった。






ようやく落ち着いた彼と、ようやくはっきり目が覚めた彼女が、抱き合ったまま喘いでいる。

色々衝撃的過ぎて、何が何やら。


「あ、あのお、これはいったい・・・?」

「んふ、素敵だったわよ。覚えていないの?」


彼女の言葉に、ぎょっとする彼。

もしかして、自分が覚えていないだけで、この女性をナンパしたりしたのだろうか。

そうでも考えないと、いやそう考えたとしても、これほどの美女が自分とその、こんなこと、するだろうか?。

特異な能力のせいで、他人を避けてきた彼に、若い女性と付き合いなど無理であり、モテたことのない彼は、自分にまるで自信が無かった。



彼の驚愕とは裏腹に、イーラはこの際だから、彼に誘われたという事にしておくことにした。


昨晩から肌を合わせてみて、これほど『合う』男の子は初めてだ。

何よりあの瞳に吸いこまれ、理性も何も飛んでしまった。今も時折現れる怯えを帯びた表情は、庇護欲がものすごく刺激される。

そして体の相性が言語道断、説明不能。経験豊富な彼女からしても、二度とあり得ないぐらい良かった。


どうせ奴隷上がりの自分、相手がどんな出身か知らないが、自分より下の人間など犯罪者ぐらいだ。

そしてこの少年からは、犯罪者のにおいがしない。

『この子の子供が欲しい』とまで、ごく自然に思ってしまった。

ストレートすぎて笑ってしまうが、こうなったら自分に逆らうだけ無駄である。


自分は名前すら知らないはずのこの子が『好き』になってしまったのだ。


『逃がさないもの』と、心の中では妖しく笑っていた。


「なんだかフラフラしていて、私にしがみついて泣き始めるもんだから、つい可愛らしくなってね。」

「うわあっ、お、俺がそんな事を?。」

「んふ、いいのよ。」


頭を抱える彼だが、彼女はご満悦でようやく身を起こした。

これがまたすごい美麗な巨乳。


傷が少し多いのはワイルドだが、強気そうな美貌は彼にはストライクど真ん中であることに気付いた。

『というか、良いのか俺?』

正直、おいしすぎる気がしないでもない。あの様子だと、彼女の方は本気でオッケーらしい。



「あたしはイーラ、姓は無いわ。戦士で傭兵をやってるの。」


「あ、あの、俺は理熊誠司」

「リグマ・セイジ?」

「ああ、そうか。外人さんだと逆だな。セイジ・リグマです。」


まだ起き抜けなのと、ショックが続いて頭が少しおかしいらしい。


「外人さんってなに?。あなたはセイジ・リグマでいいのね?。じゃあセイジって呼ぶわよ。」

ちょっと不思議そうに言う彼女に、混乱した記憶がやっと戻ってきた。

だが、飛行機が落ちたあれが本当だったなら、ここはどこになるんだ?。



体を拭って、起き上がってみると、少し視覚がおかしい。

どうやら視点が前より低いらしいのだ。


「セイジはどこの国の出身なの?」

「えっと日本の東京都江戸区なんだけど」

「ニホン?、トウキョウ?やっぱりよその国から来たのね。あまりこちらでは見かけない黒髪だもの。」


ますます混乱するセイジ、それでいて言葉がここまで通じるのはおかしくないか?。

ふと思い出すのは『胡蝶之夢』、夢の中で蝶になった男が、目が覚めた時の自分が蝶の夢ではないのかと疑う話。

もしかして、自分が覚えているのは夢の中の事なのだろうか。

だんだん自信が無くなってくる。


「俺記憶が無いのかなあ、ちなみにここはどこ?」

「ダレルブレアン公国の北西部よ。すぐそこに海があるから、セイジはそちらから来たのかな?。でもあの海は魔物が多いから・・・、」


『やったっ!、セイジったら姓持ちで、この国の事情を知らない他国人なんだわ!。』


説明しながらも、イーラは内心歓喜していた。


イーラのいるこの辺りでは、姓は自分で作ることができない。

姓を持つには、どこかの『係累』でなければなれない。

昔からの血族血統、国の認めた教会の保証する出自、あるいは教会そのものの『神の家族』、ギルドの職人組合等が独占している。


それから外れ、係累を持たない個人は奴隷とされ、誰かの持ち物になるのだ。

その時点で、消すことの難しい魔力印を肩に焼き付けられてしまう。

ただ、奴隷は国の定める税額を収めれば、解放奴隷として、自分を自分で所有できる。

奴隷階級から解放された解放奴隷では、まだ姓が無い。

姓が得られれば、その段階で解放奴隷ではなく一般人と成る。


だが姓は誰かから貰い、『私はだれそれの姓をもらった』と聞かれたら伝えなければならない。

そして、奴隷の印と解放の印は『太古の契約神の力』で肩に焼き付けられているため、誤魔化せない。

(セイジに印が無い事は、昨夜のうちに気づいている。)


ただし、奴隷階級出身者に姓を与える酔狂な人間はめったにいない。

どこの馬の骨とも分からない人間が、自分の一族と関わりがあると言う事になるからだ。


また、姓を金で買おうとすれば、よほどの大金を積まねばならないが、

それですら姓を与えた人間の機嫌を損ねると無かったことにされたり、下手をするとそれをネタにしょっちゅう金を強請られる事すらある。

下手な人間から買うと、逆に悲惨な人生を送らねばならなくなる。


そしてウソだと認定されたら、自分を解放した解放奴隷であっても、元の奴隷に引き落とされてしまう事が多い。


本当に血族に入れてもらえれば(嫁入りとか婿入り、養子など)良いのだが、奴隷を血族に入れる変わり者は、ほとんどいない。



だが、この少年からなら、貰うことが可能かもしれない。

どうみてもものすごく『お人好し』そうだし。



『だ、ダレルブレアン公国?、そんな国世界地図に無かったぞ!。』


クイズ系の番組は大好きで、特に地理には自信があるセイジ。ヨーロッパの小国すら全部そらで言える。

だが、覚えは無い。

羽田の送迎デッキからこんな場所に来ているだけでも異常なのに、聞いたことすら無い地名、もしかしてここは・・・?。


そして自分の奇妙な感覚の違いに、ようやく気付き始めていた。


まず自分の手が違う。

年齢は手にはっきり出る。

どんなに顔は整形しても、手だけはごまかしがきかない。

40代後半だった自分の手が、10代前半の若者の手のように艶々している。


視線の角度や視野から、身長も前より少し低いらしい。


そして何より、左手と右目の感覚が全く違うのだ。これが違和感の最大のポイントだ。


彼は自分の能力で自滅して、右目と左手の感覚を失っている。

それを遠視や透視の能力を使いすぎないように調整しながら、超能力を使って感じていたのだ。


ところが今は、まるで自分の目や手のように違和感が無い。

いや、無さすぎる。

本気で、セイジは混乱してきた。やはり自分の前の記憶は夢なのか?。


『この手はいったい・・・?』

『お呼びでございますか?』


その時、手が反応した。まるで人のように。

さて、彼の左手とは?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ