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第一話 <死を受け入れて>

ちょっと海のかかわる異世界ものを書いてみたいな~と、楽しんで書いてます。

ただ、あまり投稿したことがありませんので、いろいろいきすぎもあるかもしれませんが、どうぞ生温かい目でセイジたちを見守ってやってくださいませ。

 ああ、死んじゃった。


 頭のいくつかの部分が壊れ、血管の切れる音がした。


 まあ、仕方ないか。


 理熊誠司リグマセイジ、50歳誕生日直前の、メタボではないがそこそこおっさん。

 これまで平穏気ままに生きてきた彼だが、実はある秘密があった。

 それは同時に自分の命と引き換えになる危険なもの。


 彼は超能力者なのである。


 というと格好が良さそうに思えるが、これには重大きわまる欠陥があった。


 『リミッターが無い』のである。


 使い出したら、あっという間に限界をオーバーする。


 分かりやすくたとえて言えば、『ブレーキが無い車』。

 そんな物に誰が乗りたいと思うだろうか?。


 彼の右目は視力が無い。

 小さい時のミスで、力を使いすぎたら目が見えなくなった。

 左目は何とか見えるようになったが、右目の視力は失われたままだ。


 左手も感覚がない。

 中学校で体育大会で全力を出し、ついでに超能力が出てしまい、ぶっ倒れた後がそのありさまだ。


 それを補うために、長い間かかって細心の注意を払い、ミニマムに抑え込んだ超能力で視覚や触覚と同等の感覚を調整し、獲得していた。

 しかし、それでも暴走すればどこかが壊れる。慎重に生きるしか方法が無かった。

 自称『ポンコツ超能力者』。


 やろうと思えば、美女たちを全部ヌードで眺めることが可能だが、その反動が恐ろしいので絶対にやらなかった。


 根が善人な彼は、時々つい他人のために力を使って、耳が悪くなったり、体が動かなくなったりと、ずいぶん失敗を繰り返している。

 自分のためではなく、他人のためにやってしまうのが、この男の性癖。


 人間は欲望の動物なんだよなと、自分の数々の失敗を振り返りながら、思い出す。

 繰り返すが、その失敗は全部他人のために使っての失敗である。


 今は、可愛がっていた姉の娘つまり姪がアメリカへ留学するというので、成田に見送りに来ていて、送迎デッキで最新型のBL7-13-7飛行機が飛び立つのを見ていた。

 それが突然、エンジンが止まり、即座に失速して墜落した。

 全身の血が沸騰するとともに、何も考える暇もなく自分の全能力を燃やし尽くしていた。


 それに後悔はない。

 まあ、姪っ子が無事なら仕方がない。それが理熊誠司という男であった。


 突然起こった大竜巻が、落ちる寸前の飛行機をたてなおし、ドスンと炎上もせずに地面に降りたのまでを見て、彼は満足げにほほ笑んだ。


 そしてブラックアウト。





W:『いや、いくらなんでもこれはあんまりだろう。』


B:『あー、まあ、それについては反論できませんねえ。』


W:『自然条件に作為を加えるのは、御法度とお前たちが申し出たんだろうが!。』


B:『いやー、うちの反動分子どもが、無茶やりまして。全員、辺土リンボに叩き込んでおきました。』


W:『双方あそこに死んでいるアレに、負債が出来てしまったんだぞ!。』


B:『え?、そちらも??』


W:『当たり前だ、自然条件の管理は我の管轄なのだ。我も責任問題は免れん!。下位次元監視委員会から何を言われるやら・・・(涙)。』


B:『あちゃー』


W:『あそこの嫌味は、軽くても三千周期、下手すると一万周期を超えてしまう。この間アリヴェンデータのあれは、耐え切れず途中で自殺したんだぞ!。その時はお前も道連れだからな!!』


B:『分かりました分かりました;、私もすぐに債務を返します。それに人間風情に負債を作ったと知られたら笑いものですからな。』


W:『とりあえず、我の左手を貸与する。まあ、そろそろ交換時期ですぐ効果も切れるし。』


B:『それじゃあ、この世界ではまずいですな。おお、ちょうどいい。管理がいないアリヴェンデータの方へ移すとしましょうか。』





 すーっ、すーっ、すーっ、


 気持ち良い寝息が聞こえる。


 草のにおい、花のにおい、土のにおい、


 暖かな日光が、暑くもなく、心地よいぐらいに照らしている。


「おい、あんたどうしたの?」


 誰か、ハスキーな声がした。


「ちょっと、しっかりしなよ?!」


 慌てて、首筋に手を当てる。

 固いタコのある手、長年何かを懸命に続けた手。


 掌に、体温と脈は伝わってくる。


「脈はある・・・ケガは無いようね。しょうがない、ちょっと早いけどここで結界を張るか。」


 赤毛のくせのあるショートカットの髪に、濃い栗色の目が大きい。

 ほほに傷はあるし、肌はよく日に焼けて小麦色。細い眉が濃く、鼻筋が通っていてかなり美人だ。

 まだかなり若いが、傷だらけの腕や肩、ほほのそれは、歴戦の戦士を感じさせる。


 洗いざらした厚手のシャツとごわついた茶色のズボンという、色気もへったくれもない格好だが、

 胸の部分を大きく押し上げて揺れているそれは、爆乳クラスの巨乳。それももっとも重量感のあるベル型だ。

 腰つきもしっかりしていて、そのくせウェストはくびれきっている。


 背中には両手持ちの大剣を背負い、その上から武骨なリュックをつけ、腰にもショートソードなどを下げている。

 その重量を平気で歩いているのだから、体力は見かけ以上にあるようだ。


 身長は175センチと、女性としては大柄で、傷だらけとはいえ手足もすらりと長い。

 引き締まった体に適度な女性らしさがメリハリの凄いボディラインを彩り、非常に色香があった。



 ここはめったに凶暴な野獣や魔物の来ない高台の草原で、野営地としてもよく使われる場所である。


 魔物よけの結界石を4方に置く。

 これを置くと、よほど強い魔物でない限り、本能的にこの周辺、半径百メートルほどを避けて近寄らない。

 熊や狼よけぐらいなら、これで十分である。


 簡単なテントを立てると、そこへ彼を抱き上げて連れ込んだ。


「可愛い寝顔しやがって、襲っちゃうぞ、このお。」


 ぷに、と柔らかい頬を指でつつき、温かさにドキッとする。

 極細の金糸のような髪が豊かに流れ、知的な広い額に愛らしい鼻筋と柔らかそうな頬を持ち、ズキリとうずくような庇護欲を感じさせる、細身の少年。

 13,4だろうか。細いがしなやかさと芯のある体つきで、若い竹のような清らかさと強さをあわせ持つ体は、粗末なズボンとシャツに皮の靴で、決して豊かそうには見えない。


 ぶちぶち言いながらも、『小柄でかわいらしい顔をした少年』をなぜか見捨てておけない。いや、身捨てたくない。

 彼女はイーラと言い、見た目でもわかるが、戦士を主な生業とする傭兵である。


 まだ18と若いが、〝魔剣のイーラ”の名前は、近隣の傭兵や冒険者のギルドでは知名度が高い。


「やれやれ、どうしたもんかね?」


 一人ごとを言いながら、『明日目を覚まさなかったら、縁が無かったと諦めよう』と、踏ん切りをつける。

 しかし、縁という言葉を使のは、何か彼に感じてしまっているらしい。



 彼女は、貧しい農村の4女で、飢饉の時に売られた人買いの組織で、護衛の老人がなぜか彼女の手と体つきを気に入り、そのまま兵士としての訓練を施した。


 この縁が無かったら、おそらくこの手の少女たちのお決まりのルートで、どこかの娼館か、単なる奴隷階級の子供を産む道具にされるだけだ。

 労働力としては、圧倒的に男の方が有利であり、女をわざわざ買うのは、大半がその身の回りの世話と、性欲のはけ口並びに財産(赤子)を増やす道具にされるのだ。


 13で傭兵としてデビューし、常に彼女の所属した側が勝利したことから、16歳の頃には〝魔剣(負けん)のイーラ”というあだ名までつけられた。

 老練な傭兵の生きるための知恵をさずかったとはいえ、17で自分を解放できたのだから、大したものだ。

 ただし、代償として3人の指揮官に体を差し出さねばならなかったが、それでも、この世界で戦闘奴隷から脱するには極めて安い代価だった。


 通常、傭兵になる戦闘奴隷は、ほぼ100%自分を解放する前に死んでしまう。

 『使い捨て』とまで言われるほど、戦闘奴隷は死亡率が高い。

 戦闘の一番の激戦地に投入される上に、戦い方ぐらいは手ほどきされていても、頭を使った動きや防御はほとんど習わないからだ。


 その地獄の激戦地で、敵方の指揮官を三度まで倒し、軍部のトップから表彰までされた彼女はやはり異色の存在だった。

 彼女が女でなければ、そのまま軍に引き抜かれたであろう。

 だが女では軍には居場所が無い。

 イーラは自分で自分を解放するしか道が無かったとも言える。


 だから、彼女は師匠に道を授けてもらって以来、『縁』を大事にしてきたのだ。


 横に添い寝するような形で、少年(とイーラは思っている)の横にいて、彼の体臭を嗅ぐうちに、しばらく男と寝ていなかったことを思い出した。

 鍛え上げた体は、人一倍本能の欲求が激しい。

 食欲、睡眠欲はもとよりだが、性欲も彼女は激しい方だと自覚している。


 処女も高く売らねばならなかったし、何人もの上官から体を要求された。

 戦場で寝込みを襲われるなどしょっちゅうだった。

 気に入った男と寝ることにも抵抗は無かった。


 それに慣れてきた体が、健康な若い男のにおいに反応している。


『けっこう良いにおいだよね。』


 良い男はにおいも良い。これはイーラの体験である。

 撫でてみると、柔らかい中にも芯があり、したたかそうな感じがする。

 見た目以上の体つきと、熱さ、そして指先に快感すら感じる肌合いだった。

 小柄な男の体は、腕の中にすっぽり収まりが良く、抱き枕としても優秀そうだ。

 しかも、意外に腕白な部分が強く自己主張をしていて、かなり元気そうである。


『体つきの割に、立派ね・・・・』


 日も暮れてきて、テントの中に淡いライトの魔法具を灯す。

 わずかな光だが、その分長く持つので半年は使える便利な道具だ。


 テントの中にこもる、若い男の体臭が、彼女をドキドキさせる。

 テントにかすかに映る影が、シャツを脱ぎ、ズボンを下ろす。

 女の見事なシルエットが、ゆるゆると伏せた。


 かすかな息が、次第に荒くなっていく。

次話に続きます。

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