第3話
久しぶりの更新となります!
「ね、ねぇ……本当にいくの?」
「バカ、いかないと意味ないだろーが」
少年の問いにもう一人の少年が呆れたふうに言う。
傍らにいる少女の表情は様々だ。
問いかけた方の少年の隣の少女は顔があおざめており、がたがたと震えていた。
呆れたふうに言った少年の隣にいる少女は早く行きたそうだ。
「ねえ、はやくいこーよ」
「そうだな。お前らは怖いなら来なくていいぞ~♪」
少女に促されて歩き出す少年。
この二人は知らない……中で……、このさびれた廃病院内でなにが起こるかなんてあんな惨劇が起きてたなんて知る由もなかったのだ。
「あ、危ないよ!?」
「やめようってば!」
率先して先に行く二人を慌てて遅れて二人が入る。
はたしてこれが彼らを襲うなにかに彼らは気づくのだろうか。
「にゃあ~」
「……そう」
「どうだった? 由香里ちゃん!」
さきほどの黒猫をなでる少女――由香里。
その彼女にボリュームのある髪をポニーテールしたちみっこい少女――つぐみが声をかけた。
「……数人の男女が壊れた廃病院にはいったって」
「えぇ!? ダメだよ!あそこには……っ はやく、助けにいかないと!」
「そうね、助けにいかないとダメかもね~」
由香里が無表情で返答するとつぐみは驚いたように目を丸くしてから立ち上がる。
つぐみの意図を理解した同じくちみっこい少女――美桜がにこにこと笑いながら頷く。
「……おい、本当に行くのか?」
「当然だよ! ヒデくんは行きづらいんなら……来なくてもいいけど」
うろんげな様子で言う少年ーー影狼秀久。
頷いてから躊躇まうようにそちらを見て言うつぐみ。
人差し指をつんつんしながら見つめる。
「大丈夫よ、つぐみ♪ 秀くんなら来てくれるわ」
「え、そうかな……無理じいだけはしたくないんだけど」
そんな彼女に美桜が近寄り、頭を撫でてから髪にリボンをつけた。
美桜をつぐみが見上げて不安そうに尋ねる。
「えぇ♪ つぐみの頼みを断ることなんてできないからね」
「うぐっ!」
にこにこ笑顔で暴露する美桜に秀久は口ごもる。
さすが、つぐみの姉である女性だ。
「まずは妾が偵察に向かおうかえ」
「いや、それだと妖力でバレるからやめた方がいい」
ニヤリと笑う玉藻だが、明晴に制された。
それが不満なのかどっかりとのっかる彼女の髪を優しく撫でる。
どこからみても仲の良い恋人同士にしかみえないのは彼らの雰囲気によるものだろう。
「じゃあ、誰が行くのじゃ?」
「めんどいけど、俺がいくしかないだろ」
じと目で見つめる玉藻の頭を撫でつつ重い腰をあげる明晴。
基本めんどいことを嫌う彼にしては珍しいことだ。
「あ、あの……私が行くのでお二人は待っていてもらっても」
「何を言うのじゃ!こんなおも…ごふん……危険なことお主だけにやらせるわけにはいかぬのじゃ!」
「今、なにげに不穏な言語が聞こえたのは気のせいかしら~」
そんな様子を見ていたつぐみが率先して言うと玉藻が彼女の頭を撫でつつ言ってのけると美桜があきらかに呆れた様子で玉藻を見ていた。
「でも、こんな人数で行くのはやばくないかな?」
「澪次のいうとおり、ここは少数で行くべきなんだろうな。
だが、問題は誰が行くか……だよな」
澪次が言うと秀久は同意しながら腕を組みながら悩む。
「こんなときにあの三人と煉介くんと緋華ちゃんが居てくれたらよかったんだけど…」
「仕方ないわ、あの三人と煉介くん達も忙しいのだから」
つぐみが残念そうに言うと美桜は苦笑を浮かべて彼女の耳と尾を優しく撫でる。
それが心地よいのか目を細める姿は秀久にかなりのダメージを与えたのはいうまでもない。
「……行ってくる」
「え!?由香里ちゃんが!!?」
そんな中立ちあがったのは由香里だった。
猫耳と尾をゆらゆらぴくぴくと動かしながら言う当たり、多分寂しいのと退屈なので動きたくなったのだろう。
「心配じゃから、やはり妾も!」
「……問題ない」
玉藻はまだあきらめておらず動こうとするとが、さっさと由香里は外に出て屋根を飛び越えて走っていく。
「あ、行っちゃった!」
「追いかけましょ!」
「うむ!」
「ちっ……めんどいことになった」
「なにも起きないといいがな」
「念のために記憶置換を持っていこう」
つぐみがしゅんと落ち込むと美桜が笑顔で言い、玉藻はいつでも出れる準備をしており、明晴はだるそうにし、秀久はため息をはきながら立ち上がり、澪次は手元にある物をとり、外に出たみんなの後を追いかける。
「……今日は月が綺麗」
月光に照らされながらも走りぬく、由香里はとても綺麗だった。
だが、その姿を目撃した人物がいた。
「なんじゃき、あれは?」
そう由香里の想い人の中岡心だった。
そうとはしらずにつったかっと飛んでゆく由香里。
出てはいけないと言われたはずなのに外にでてるのは理由があるのだ。
それは……学園に忘れ物をしたからだというのが理由の一つで、噂が本当か確かめに向かうためでもある。
「……追いかけてみるぜよ!」
心はなぜか、いかないといけない気になり後を追いかけた。
それがなにを意味するのかもしらずに。




