第四十七話
「おはようございます、裕樹さん」
「おはよう、ユウ兄ちゃん!」
朝起きると、幼馴染の少女の涼宮みなもがいた。
彼女の前世は治癒の力をもった人間でその血をひいているらしい。
お祖母さんがそうだったとか彼女は聞いている。
「今日は二人とも早いな」
「だって、なんか早く起きちゃって」
「それでつい」
裕樹に言われて苦笑する裕香とみなも。
それを見ながら刀の手入れをする裕樹は慣れている。
まあ、仕事でそうしているのだから当然ではあるのだが……。
「転入とかよくやらせるよな」
「しかもそこは年とか関係なく決められた教室ですもんね」
呆れたような裕樹にみなもが苦笑する。
そんな彼女の腰にしがみついてる裕香は嬉しそうだ。
「でも、小学生は無理みたいだけどな」
「それが残念だよ~」
「家に帰ればいっぱい甘えたらいいよ」
裕樹がそう言うとつまんなさそうに言う裕香になだめるみなも。
すでに朝食はできているのでみんなで仲良く食べ始める。
そして、弁当の準備をして家を出る、当然ゴミ袋も持ってでるのを忘れずに。
ゴミを捨ててからバス停へと裕香を送ると双子の兄妹の陰陽師が出迎えて、裕香と手を繋いでバスへと乗り込む。 仲がかなりいいのだろう。
「それにしても髪が長いと大変だな、みなも」
「はい、本当は切りたいんですけど。 おじいちゃんが泣き出すんで」
彼女のさらさらな黒髪を撫でる裕樹に困ったように笑うみなも。
そんな彼女にバイクのヘルメットを渡すとそれを受け取り被る。
そしてバイクにまたがる裕樹の後ろに乗るみなも。
そのままバイクを発進させて学園へと目指す。
学園にたどり着くと、女性の教師が立っていた。
「あなたたちが転入してくることになった人たちね。 大丈夫よ、人もちゃんといるから」
「あんたすごい妖力だな」
「こ、ここでおっぱじめないでくだひゃいよ!?」
女性の教師にそう言う裕樹に袖を引っ張り、焦ったのかかみかみである。
「まみさーん! 愛してまーすっ!!」
「ああ、はいはい」
一人の男に抱きしめられても動じない女性教師――笹原まみである。
それに呆然としつつもあきれる裕樹と困惑するみなも。
「コレは気にしないで、いつもの愛情表現みたいだから」
「ああ、その愛がいたい」
踏まれていても平気そうな男子生徒。
「まみ先生、これがいつも申し訳ないぜよ」
「………」
と、突然現れてまみと呼ばれた教師に謝る傷のある少年。
それと、ふわふわな黒髪のロングの少女がじっと裕樹たちを見ていた。
「(ゆゆゆゆ、裕樹しゃん!この子)」
「(ああ、妖怪みたいだが………害はないさ)」
袖をひっぱられても気にしない裕樹。
それでも冷静に反応をかえしてみなもに説明する。
「いいのよ、いつものことだから」
「いつものことなんでしゅか!?」
まみ先生の言葉にツッコミをいれるみなも。
裕樹はああ、だから慣れているのかと納得していた。
「お、新しい人ぜよ? 俺は中岡心ぜよ」
「…………猫宮…………由香里」
心が挨拶すると隣にいた子も自己紹介する。
無表情で感情が読み取れないが、歓迎はしているのだろう。
「それじゃあ、教室に案内するわね」
「あれはいいのか?」
「いつものことじゃ」
裕樹が問いかけると心は男子生徒を呆れた目で見て言った。
そんな会話をしながら教室へと案内されて中へと入るといろんな妖怪がいることに気づいた。
「はい、今日からこのクラスに在籍する二人よ。 仲良くしてあげてね」
「俺はまみ先生とエロイことを!げふっ!」
教壇に立って紹介している最中もちょっかいをかけて蹴られる男子生徒。
みなもと裕樹は確実に引いたのは仕方がないだろう。
「よろしくね。 ここの委員長は僕だから」
と気の優しそうな少年が握手を求める。
「ああ、よろしく」
裕樹も握手をしてそう告げた。
「最近はよく来るのう」
「今回は俺よりのひとみたいだけどね」
玉藻を抱きしめている晴明の先祖返りの少年。
「お姉ちゃん♪」
「よしよし♪」
べったりとくっつくちみっこ二人。
こちらも妖気を感じるので人はないと裕樹たちにはわかる。
「今日の夜の作戦、参加してもらうか?」
「まあ、協力してくれるといいけどな」
富士也がそう話しかけると秀久は目を細めて裕樹を見てそう言った。




