第四十三話 Wデートかも?
夜のとばりがおりて、花火会場の前で待ち合わせを二人の男性が浴衣姿で待っていた。
ひとりは緊張ぎみ、もうひとりはどこかにやにやしているように見える。
いったい、この差はなんなだろうか。
「またせたわね」
「おま、た、せ」
桃や赤の浴衣姿をしている大人の女性と少女。
二人とも髪をゆっているのか後ろにまとめているようだ。
「そんなに待ってません、まみ先生」
「こら、ここでは先生はいらないわ」
笑顔で言う大輝の額をこづいて呆れたようにしているまみ。
彼女は彼の学園の教師なのだが、誘われてしぶしぶきたのである。
まあ、調子もそんなによいわけじゃないからだろう。
「しん、くん・・・・?」
「な、なんぜよ?」
不思議そうに声をかけられて声がきょどる心。
それもそれうだろう、彼女の美しさに見惚れていたからである。
「そ、それじゃあ行くぜよ」
「そうだな」
来てくれた彼女たちをエスコートするように歩き出す心たち。
ちらほろと視線が集まるのは彼女たちの容姿によるものであろう。
まあ、男どもは嫉妬の視線がきていたりするが。
「・・・・・(やばいわ、ほんとに血がたりない。 もういっそのことこの子から吸おうかしら)」
笑顔で歩いている大輝を見て内心そう思いながら歩く。
彼女は人ではないので、いろいろ苦労もあるのだ。
「しん、くん。 あっち、いこう」
「え、ちょ、待つぜよ!
由香里に手を引かれて慌てて足を動かす心。
ちなみにこうしたのはまみのことを考えてのためであるとか。
「・・・・(やれやれ、生徒に心配というか手間をかけさせるなんてね)」
苦笑が浮かぶが、大輝の匂いがとてもいい匂いだということに気づいた。
ラミアはそれぞれ、自分にあう血をもとめて吸う特性がある。
血色もよく、たくましい体つきはまみの血の好みにドンピシャかもしれない。
「・・・・っ」
「まみ先生、大丈夫ですか!?」
ふらっとふらつくふりをすると案の定慌てている彼に、口元がほころぶ彼女。
支えてもらいながらしなだれるようにしてもたれると。
「ねえ、ちょっと人気のない場所にいかない?」
「そ、それって・・・ふたりきりに」
甘い声で耳元で囁くとどきどきしながらこちらを見つめる大輝。
内心は歓喜の声があがっていることだろう。
「えぇ、邪魔しちゃわるいでしょ? だから、ね?」
「そ、そうですね。 行きましょう! すぐいきましょう!」
耳元でささやかれて大輝の心臓はどきどきしていた。
そして彼女に言われるがまま、人気のない林の中へとはいっていく。
それが彼女の策であるとも知らずに。
いや、知っていても彼は気にしないだろう。
それくらお人よしぽいところもあるからだ。
しばらくして奥までいくと、まみは大輝を樹に押し付けて浴衣の肩をはだけさせる。
それに大輝は困惑しつつも、いまから起こることにドキドキしていた。
まあ、変態でもあるから気にしたりはしないだろう。
「悪いわね。 私ね? 今、とってもおなかがすいてるの・・・・だから、あなたの血・・・もらうわよ?」
そう妖艶に笑いながら言うと首筋を舐めて、そこに口を当てる。
鋭い牙が突き刺さるような感覚が大輝におきた。
が、彼女は気にせず大輝からの血をもらっている。
「(あら、これは予想以上の味ね? ふふ、決めた。 前々から告白されてたし、彼をそばにおいておくのもいいかもしれないわね)」
「あ、あぁ・・・っ」
大輝の血をむさぼりながらまみはそう考えていた。
血を吸われている本人はどこか気持ちよくなっているようだ。
しばらくして、へろへろな大輝の首筋から口を離して、牙も抜くとぺろりと舌で血を舐めとる。
「ありがとう、とてもおいしかったわ。 それでお礼なんだけど・・・・キスでいかしら?」
笑顔でそう言いながら答えを聞くこともなく大輝の肩をつかんで唇と唇を合わせて口づけをする。
舌をいれてからめながらのキスはくちゅくちゅと音が鳴り響く。
そんなキスを何時間ともしていたかもしれない。
そしてすっと口を離すと銀の糸がつぅ~と伝っていた。
「キスもうまいのね、なんか釈然としないわ。 まあ、いいわ・・・・祭りでも楽しみましょう
栄養補給もできたことだからね」
そう言いながら呆然と、いや力が抜けた大輝がへたりこんでしまうのを見てくすりと笑うまみであった。




